蕎麦と豚丼
季節は秋に変わっても、まだまだ太陽は夏の暑さを輝かせている。私は月契約のアパートに荷物を運び込んでいた。旦那に啖呵を切ったものの、条件に合う空き物件がなかなか見つからなかった。大事なのはペットが飼えることだ。昔から猫が飼いたかったが、同居の上に義家族は動物が嫌いなため諦めた。私の希望があの家で叶うことは一つもなかった。でも、家を出た今はそれも叶えられる。
それからもう一つ、叶えたい事がある。先にそちらから手を着けようか。
荷物を全て運び終えて、一息つく。
※※※
旦那が開いたままの口をパクパクさせながら「なんで、え?」と片言のように呟いた。
私がためらうことなく「ここでの私の役目は終わったと思うの。子供たちも、もう自分で自分の世話くらいできるでし。でもあなたの母親は、ずっと誰かに依存してる。」
旦那は少し俯いて黙ってしまった。
「無意識だろうけど、私は家族ではあっても妻ではなかった気がする。あなたの中で、私はお義母さんより小さい存在なんだって、そう思ってしまうだけのことをされてきたんだよ。」
涙もろい私が、表情も変えずに話せていた。感情が一切乗らない。もうずっと前から、旦那を自分の夫だと思えなくなっていた。