首塚、胴塚
おじいさんのありがた~い おはなし。
翌朝、頼光一行は、津久戸村にある首塚を訪れた。
「おい、金太何かいるのか?」
「貞兄、たぶんこっちだ。」
金時は、すたすたと塚のある所まで歩いて行った。
「赤子もこの辺りだと言っておる。」
「とりあえず切る。」
「綱、切るのは待て。」
案内についてきた名主も、驚いて
「切るのはおやめください。近辺の者たちで祀っておりますので、何も問題はありませんよ。」
「うむ、赤子も安らかに寝ておる。」
「季兄、今更だけど、その赤子って何だ?」
「まあな。」
と、いって季武は赤子を撫でた。すると、塚から光る玉がすーっと浮き上がってきた。
「これか。」
と、頼光が手をのばすとその掌の中に玉は収まった。頼光は晴明に渡されていた玉を封じる袋に玉を収めた。名主は不思議そうな顔で
「その玉が、霊玉なのですか。」
「うむ。晴明の話では、将門公の魂は七つに分かれたとのことだ。そして封じるとこのような玉になるとのことだ。」
「それでは、その玉は、新皇様の御霊の分霊なのですね。」
「ああ、ここの者たちがしっかり祀ってくれたので、このようにすでに玉になっていたのだろう。」
玉には五つの星が入っていた。頼光は名主に礼を言うと、地図を取り出した。
「さて、あと一つか。金太どこが怪しい。」
金時は地図を覗き込むと、首を傾げた。
「一つじゃない気がするんだ。」
「うむ、季武はどうだ。」
「赤子も、一つには決められないそうだ。」
「そうか。まず近くから、探してみるか。」
と、頼光が地図をしまうと、名主が
「芝崎村に怨霊のうわさがありますね。」
「公任殿が言っておった豊嶋の怨霊のことだな。まずはそこだな。」
頼光一行は、名主と別れ、芝崎村に向かった。
芝崎村までは近いので、道々、怨霊の情報を集めながら向かうことにした。すると、
「ありゃ、坂東武者の怨霊だと思うぜ、夜中に集まって鬨の声をあげるっていうな。」
「大将は、首から上がないそうだ、ありゃ将門公だね。」
「あんたたち京武者じゃろ。近づかんほうがええな。祟られるって話だぜ。」
「このへんに温泉はないな。もっと北か、西の方だな。」
いろいろな情報が集まってきた。そして芝崎村に着いた頃には夕刻になっていた。
「温泉がないなら、作ろうかのぉ。水脈はあるはずなんじゃ。」
「貞兄、それはあとからだな。あの林のあたりが怪しいぞ。」
「うむ、あの辺りが怪しいと赤子かいっておる。」
「切れるの?いつでも行くよ。」
一行は村はずれの林に入っていった。当たりはうっすらと夕霧がかかってきた。フクロウのような鳥の鳴き声がする。林の奥の開けた場所に出た時であった。
「これは、怪しいな。皆、注意しろ。」
「おっと。」
「貞兄、どうしただ。」
「いや、今、これがな。」
貞光の手には一本の矢があった。飛んできた矢をつかんだらしい。
「伏せろ!」
次々と飛来する矢に、林の中に戻り5人は馬を降りた。
「相手は見えたか?」
「ああ、20人ぐらいはいただ。」
「この林道で迎え撃とう。わしと綱、金太で前衛、季武と貞光は後方で支援を」
武者の怨霊たちは林道をばらばらと向かってくる。
「考えなしに突っ込んで来てるようにしか思えんな。」
「とりあえず切る! 頭のない奴も切る!」
「ホントに頭のない奴が、何人かいるだ。」
前衛の3人は剣やマサカリで怨霊を切りまくった。
「はい、今ので30体目ですね。ん? 金太。」
「ああ貞兄、どんどん増えてるぞ。囲まれるだ。」
「仕方がありませんね。」
貞光は懐から観音像を取り出し、読経を始めた。すると、武者の怨霊たちの動きが鈍くなり、ついには止まってしまった。更に林の向こうでは水音がし始めた。
「よし!今だ!」
頼光を先頭に、綱、金時が残った武者の怨霊を始末すると、最後方に一人大きな首のない怨霊が残った。
「これが、将門公かぁ。」
「うむ。」
「切る!」
三人が同時に切り込むと、頭のあるはずの位置から、何かが空に向かって飛び出した。
「季武!」
「おぅ。」
待ち構えていた季武は、弓につがえた赤子を爆速で発射した。
「あっただ。」
金時が落下した玉を拾ってきた。
「あったぞ!」
貞光が温泉を発見した。
「いや、お経を唱えると温泉が出るもんですよね。」
と、うれしそうに言うと、周りに穴を掘って、簡易露天風呂を設置した。
一番アクティブな四天王