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ここにいるぞ!

おじいさんのありがた~い おはなし。

 公任邸では船上舞台の設計が進められていた。晴明が用意してきた図面を見せながら、

「異界の門があるあたりが、鬼門になるように舞台を設置し、ここで鬼門の結界を強化します。裏鬼門には蘆屋道満に受け持たせます。」

 道満の名が挙がると、道満は呼ばれてもいないのに突然、現れた。

「晴明殿。待っておりましたぞ。やはり私に期待してくださったのですね。」

「いや、念のためですね。私は結界を確認したら、四条通に向かいます。その間はお願いしますね。」

「なあ~に、ここにはわしと博雅殿がおるのじゃからの3日は持たせますぞ。」

「まあ、まずは武蔵に向かった頼光殿たちが、戻ってからですね。」 

「おお、そういえば今日は小式部ちゃんは来ないのか?」

 小式部の名が出たとたん、部屋の隅で控えていた教通ははっと顔を上げた。

「小式部さんは、保昌殿と貴船神社に向かってますよ。」

「二人で大丈夫なのですか。」

 突然、話に入って来た教通に、おやっとした顔をした晴明は、ああと納得した顔になり

「おや、教通殿はなぜここに? 保昌殿は、剣も音曲も優れた方、問題はありませんよ。」

「最近、歌の心を学びたいとよく来るのじゃ。小式部ちゃんは賢い子じゃから大丈夫じゃよ。」

「わたしも何か、お役に立てませんか。」 

「そうじゃの、まずはわしの舞台の手伝いじゃな。わしが選ぶ歌人、文人の作品をまとめてもらおうかの。」

「裏方ですか。」

「まあ地味だよな。でもな。その中に学ぶことが、多くあるはずじゃ。」

 教通は複雑な表情をした。



 保昌と小式部は、貴船神社の石段を並んでのぼっていた。

「この赤い灯りは、丑三(うしみつ)参りのため?」

「まあ、流行っているらしいな。本当は縁結びの神様なのにな。」

「丑三参りって、ずーっとやるの?」

「ん?」

「将門さんの娘さんって、妖術使いだったの?」

「何が言いたいんだ?」

「将門さんの娘さんが、丑三参りで、妖術覚えたってことじゃないかな。」

「その可能性はあるな。」

「だったら、もうここで丑三参りやる必要はないよね。」

「そうだなぁ。まあ調べてみよう。」

と、話をしている間に本殿のあるところにたどり着いた。


「ねえ、巫女さんが、何かの儀式をやってるよ。」

「ああ、あれは『縁結びの儀式』だろうな。……って、あれは!」

 何と巫女の前に座っているのは、和泉式部であった。

「縁結びって、誰と?また皇子が手を出してきたのか。」

 保昌は、小式部を残して、こっそりと本殿に近づき様子を窺った。

「それでは、夫を振り向かせたいとのことですね。」

「はい、最近私のことを忘れて、娘に夢中みたいで、私の出番がないんです。」

「そうですね。あなたは、歌を奉納しましたが、他にも神を喜ばせることが必要ですね。」

「他にですか……。」

「特別な作法があるのですよ。それは……。」

 巫女は和泉式部の耳元に顔を近づけ、なにやら話すと、和泉式部は耳まで赤くなって

「そんなことできませんわ。」

「そうでか。それなら保昌様は戻ってきませんね。」

「保昌様……。」

 和泉式部は鳴きそうな顔になって、巫女の言うとおり打掛を取り、その下帯に手をかけた……。


「ここにいるぞ!和泉。」

「えっ、保昌様!」

 突然、立ち上がって声をかけた保昌の姿に、和泉式部はうれしそうな顔をしたが、その後ろに小式部がいるのを見ると複雑な顔をした。

「お前のことを忘れるなんて、あるわけがないだろ!」

「ほんとに?」

「最近、事件が続いてな。それでもお前のことを忘れたわけじゃないぞ。」

「仕事の方が大事なの?」

「お前が大事に決まってるじゃないか。」

「ママ!仕事と私どっちを取るのって、ダサいし、それ昭和のメロドラマだよ。」

「だって私、昭和のアイドル設定だし……。」

「私は武官、お前との幸せを守るために戦っているんだ。」

「パパ、かっこいいよ。」

「わたし、ドジで、グズで…。」

「ママ、それ昭和のドラマ!」

「公任殿の歌会にお前も参加するんだろ。」

「え?歌会」

「聞いてないのか?今回の一番のお前の見せ場。」

「そうよ。ママたちが紅組の中心よ。」


貴船神社に関わる説話ですね。

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