三舟の宴 二日目
おじいさんのありがた~い おはなし。
三船イベント2日目は「管弦の宴」、この日は五人囃子の優雅な演奏から幕を開けた。 「酒呑童寺」ライブ以来、プライドをずたずたにされた宮廷楽士たちは、サウンドの徹底的な見直しを行い。トリプルドラム(小鼓、大鼓、太鼓)によるポリリズムに、ツインリード、アップテンポの迫力あるサウンドに変貌していた。
続いて、前回の覇者。笛に舞を取り入れた。画期的なサウンドの源時中、逢坂山からやってきた琵琶の名手蝉丸、続々と名人、達人が続く中、公任の推薦で藤原保昌も特技の笛を、そして藤原教通も篳篥を演奏した。そして、公任自らも三弦を引き連れて見事な筝の演奏を披露した。そして、ついに最後の演奏者となった。
「さあ、本日の大トリはこの人です。京が誇るスーパーミュージシャン。源博雅!!!!」
会場から大歓声があがる。晴明と頼光たちは異界の門がある結界に待機している。
舞台は、幽玄を感じさせる琵琶の響きから始まった。
名器「玄象」による「流泉」「啄木」と名曲が続き、筝、瑟、和琴と異なる弦楽器を弾きこなし、さらに見たこともないハープ型の楽器を取り出した。
「あれは……もしや正倉院にあるといわれている、幻の箜篌なのか?」
学識には自信のある公任も見るのは初めての楽器であった。
箜篌の響きは、天界から天女が舞い降りてくるような美しい響きで、場内にいる全ての人々を魅了した。結界内でうごめいていた怪異、悪霊もその動きを止めてしまった。
博雅は、最後に得意の大篳篥と取り出すと、あらゆるものを浄化する清澄な響きに、その音が響き渡る範囲全ての惡なるものを消し飛ばした。
結界で囲んだ内には、異界の門だけがぽつんと取り残されていた。
晴明は、異界の門に近づくと、実は一番最初から持っていた星が一つ入った玉を門にあるくぼみに押し込んだ。それから、七条河原で拾った二の玉、御首神社の三の玉、最初に拾った四の玉、築土神社の五の玉、芝崎村で手に入れた六の玉、そして最後に滝夜叉姫から奪った七の玉をそれぞれ結界の門にはめ込むと、七つの玉が明滅を始めた。
しかし、いくら待っても七つの玉は明滅を繰り返すばかりで、一つになろうとはしなかった。しばらくすると、また、ぽつりぽつりと異界の門から怪異や悪霊が現れては消え始めた。
「まだ、何か必要なんですね。さて、なんでしょう?」
<それはな。まだ将門の心が、一つになってないからじゃよ。まだ分かれているのさ。>
「あっ、真備師匠。」
<晴明よ。本当にわしを大きく上回る陰陽師となったな。>
「いえ、まだまだ修行中の身です。」
<われわれは、将門の魂がまだ、恨みを残しているのが分かったから取り込もうとしていたのだ。>
「玄昉さまですね。」
<ああ、将門の分霊、全てを浄化することだ。>
「でもどうやって。」
<漢籍、管弦と来たのだろう。残りの一つに賭けることだな。>
「明日の和歌か。」
演奏が終わった後の博雅を、公任、保昌、教通らがハイタッチで迎え、「管弦の宴」は大成功に終わった。博雅は保昌とハイタッチすると。
「保昌様、小式部さんは?」
「ああ、今、河内に行ってますよ。」
「河内!保昌殿、まさか一人で行かせたんじゃないでしょうね。」
先ほどから、目で小式部を探していた教通が表情を変えた。
「ああ、あちらで頼信殿が警護をつけてくれることになっている。」
「ご安心ください。わが息子、頼義は武芸に秀でたもの、わしより強いかもしれません。」 道長を警護していた源頼信が、近づいてきて、保昌に耳打ちをした。
「え、源俊賢殿が?」
「ええ、演奏中に気絶しました。」
「まさか。あの方まで」
急いで、公任、教通とともに、道長のいる御座所に戻ると、俊賢は目を覚ましていた。「どうやら、私も意識を奪われていたようなのだ。」
「それで、毎回毎回話の内容を先取したり、まとめたりしていたのか。」
公任は納得した表情でうなずいた。教通は考えた。
「しかし、何のために……そうか。相手は俊賢殿の言葉しか聞こえていないのか。」
「多分そうだろうな。」
「それでは、晴明が言っていた蜘蛛が操るのと違いますね。」
「俊賢だけじゃないぞ。」
関白殿が御座所に戻ってきた。
「場内で倒れたものが数名、五月姫の話だと蜘蛛丸が操っていたもの以外のものも混じっていたそうだ。」
そこに晴明が戻ってきた。
「七つに分かれた魂の同化が終わらないと一つにならないようです。」
「同化?」
「全て浄化するか。恨みに染まるかです。」
教通が何かに気付いた。
「明日、あの七つの玉を全て光らせる歌を読めばいいのではありませんか。」
「なるほど、明日の和歌の宴は将門殿が審査員か。これは面白い。」
公任は自信ありげに笑った。
スーパーミュージシャン源博雅!




