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藤原斉信

おじいさんのありがた~い おはなし。

 藤原斉信には焦りがあった。

 源俊賢が先に公卿に列されたときも。選ばれるのは自分だと思って恥をかいた。その後、道長の兄、道隆(みちたか)が関白であったときはそちらに仕え、道隆が病死して、権力が道長の手に渡ると、道隆の子伊周(これちか)には付かず、道長に仕えた。そうしてやっと権大納言の地位を得ることができた。そして、道長が太政大臣に昇進すると、順送りで内大臣職が空席となり、いよいよ、大臣、大納言に昇進できると思った。どころが、内大臣は若い道長の長子頼通が持って行ってしまった。そして今、やっと左大臣の死去などで、大臣の席が空き大臣に昇進する機会が来ていたのであった。


 斉信は自分の才覚には自信があった。

 和歌や漢詩文でも公任には劣るだろうが、その他には負ける気がしなかった。しかし、優秀な若い者たちが現れていることも出世昇進に敏感な斉信には分かっていた。特に時の権力者、藤原道長の子たちは優秀で、しかも道長という後ろ盾がついているのだ。そこで、斉信は道長の子たちの様子を常に気にかけていた。その中でも、摂政頼通を除くと、一番警戒していたのが教通だったのである。


 斉信は、四納言で一番教通のことを悪く言うが、実はその将来性を最も恐れていた。

 教通には和歌も漢詩文も才覚はないが、抜群の記憶力と歴史知識があることを斉信は知っていた。それに頼宗ら異母兄弟と違って、摂政頼通の実弟である。そんな最も警戒する教通が、若い女流歌人に夢中で、政務さえおろそかにしている状況は歓迎すべきことであったのだ。


 ところが、この度の教通の動きを見ると、公任に言われるまでもなく、覚醒したかのような動きであった。誰も指摘しなかったが、今までの教通だったら、自らがここに現れて皆の前で得意げに、その不思議な体験を語ったであろうに、その緊急性を考え、都に一日でも早くと、貞光を使者に送ってきたのだ。その上、その報告は詳細に事の次第が書かれ、教通の高い知性と観察力をを感じさせるものであった。


 斉信は教通の変化に誰よりも早く気づいていた。そして恐れた。


自宅に帰ると、斉信は書斎にこもり、今日の報告について考察していた。

「相手の立場で考えてみよう。400年に渡る藤原家に恨みを持つものが祟りをなすとすれば……。今、権力を持っている道長殿が亡くなったとしても、すでに頼通殿が権力基盤を広げている。それに現在の藤原家は、不比等様の四兄弟以降枝分かれしたわが北家九条の中で、時の権力者が変っている。道長殿も兄の道隆殿が亡くなって権力を持たれた。つまり、今はここで一人二人の公卿を害しても代わりの藤原の者が力をもつだけだ。とすれば……。今の朝廷の力が及ばないところに新たな政権を作る方が合理的だ。これが平将門が関八州を独立させようとした理由だな。あの一件で、武を持って蜂起されると今の朝廷だと鎮圧が難しいことが証明された。とすると、今の時代なら源頼光やその弟、源頼信あたりを操って反乱を起こし、都から遠い東国で、いや陸奥で……。あっ、それで阿弖流為なのか。そういえば、平泉では金山発見の報告も上がっていたな。資金も豊富か。」

 斉信は、この一件の構図が見えてきた。

ー朝廷に恨みを持つ阿弖流為の霊を開放して、陸奥にあらたな武力による権力基盤を作り、

その財力と武力で、徐々に朝廷の力をそぐ、それこそがすでに朝廷と一体化した藤原の力を削ぐことになるー

 そのためには

ー阿弖流為の霊を開放するのに邪魔な力を持つ者を排除するー

ー新たに作る政権を討伐できる武将を排除、または操れるようにする。ー


「と、いうことだな。これだとわたしや俊賢殿が襲われないことも納得だな。しかし、誰がこのような大がかりなことを考えるのじゃ。歴史上、藤原が危うくなったのは乙巳の変で、鎌足公が功績を上げて以来だと、始めて関白になられた基経公が亡くなった後、年若い時平公だけが残り、宇多帝と菅原道真に権力を奪われた時期。そういえば伴善男のたくらみを暴いたのは基経公であったな。他には……。もっと昔の聖武帝の時代か。あれは疫病で……。それも呪いだったかもな。」

 なるほど、

ー蘇我入鹿、蘇我蝦夷、伴善男、菅原道真、吉備真備、玄昉、橘諸兄……。ー

 このなかで、恨みが残るのは、蘇我と伴善男、玄昉の四人か。

「待てよ。もっと大きな事件があったじゃないか。朝廷そのものが乗っ取られる……。」


<良く思い当たったな。>

「ん?」

 気が付いたら、斉信は身動きが取れなくなっていた。そしていつの間にか目の前には、若い僧を従えた。初老の法衣を来た男がいた。

「まさか…。」

<ああ、わしが弓削道鏡(ゆげのどうきょう)じゃ。>

「あなたも恨みを。」

<あたりまえだ。一族みな殺しだぞ。>

「それはあなたが詐称したせいですよね。」

<知らんわ。蜘蛛丸後は頼んだぞ。>

 蜘蛛丸と呼ばれた若い男は、蜘蛛の糸を斉信に吹きかけた。

斉信の意識はもやがかかったように薄れて行く、早く皆に知らせなければ……。


道鏡来た!!!

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