滝夜叉姫のお約束
おじいさんのありがた~い おはなし。
門が開くと、篳篥を咥えたまま教通は気を失っていた。
「季武、教通殿をお守りしろと言ったではないか。」
「すまん、門を閉じるのにあせったようだ。」
「しかし、篳篥って強力な武器なんだ。」
金時は感心しながら教通を抱え起こした。
「ん、大蜘蛛は?」
「おめえの篳篥で消し去っただ。」
「切ろうとしたら、消えておどろいたぞ。切らせろ!」
綱はまだ刀を収めていない。
「さて、中に入るか。」
頼光は、全員の無事を確認すると、砦の奥に進んでいくことにした。
「何か変な感じがするだ。」
「うむ。油断するなと赤子が言っておる。」
残りが少なくなった赤子を背負って、季武が周囲を油断なく見まわしている。
「この扉の奥だな。」
砦の奥まで進むと何か不思議な文様が入った丈夫そうな扉があった。
「よし、開けるぞ。」
金時と季武が門を左右にそれぞれ開くと、頼光と綱が飛び込んでいった。続いて、金時と季武、そして取り残されないように教通も門の中に入った。すると、扉は勝手にしまってしまった。
「これは罠か?」
巨大な髑髏が中央に一体、その周りには多くの骸骨が並んでいた。
「動かないな。どうなってるだ。」
「これは、お約束だと赤子が言っておる。」
すると、巨大な髑髏の後ろから、若い男を従えた老婆が入ってくる。
「あれが、滝夜叉姫?」
教通が、思わず口に出すと。
「おお、藤原の若君か。まあ五男坊のようじゃが、それに頼光か。ああ、わしが滝夜叉じゃ。よくここまで来たものじゃ。」
滝夜叉姫は、不気味な笑顔を見せている。そして、傍らの男にむかって
「蜘蛛丸よ。おぬしの蜘蛛もいまいちじゃの。小奴も殺せぬのか。」
「今から、この場で始末いたします。」
蜘蛛丸と呼ばれた男は、呪文を唱えようとした。
「待て、あの時、お前が頼光を殺っておれば、こんな面倒なことになってないんじゃ。土蜘蛛は通用しないようじゃぞ。」
「むむ……。」
蜘蛛丸は悔しそうに呪文をとりやめた。
「武の源頼光、陰陽師の安倍晴明、二人を消せばと思ったのじゃがの。他にも数名面倒くさいものがおったようだ。そこの五男坊もリスト入りじゃの。」
教通は青くなってしまった。それでも勇気を振り絞って
「じゃあ、小式部さんを襲ったのもお前たちの仕業なのか。」
「ああ、小式部内侍とその義父、藤原保昌も処分リスト上位じゃの。」
「小式部さんを狙うのはやめてくれ、代わりに私を。」
「心配せんでも、準備はできておる。それにお前も今、リストに入れたから安心しろ。」
「準備って、清水の結界か。やめろよ。」
「ほう。お主は何でそれを知っておるのじゃ」
「あっ。」
「それは、生きてここから出すわけには、ますますいかなくなったかのう。」
教通は、思わず懐から篳篥を取り出し、吹こうとしたが、不思議な力で跳ね飛ばされてしまった。
「おっと、それは使われると面倒かの。まあ、わしは先を急ぐでな。あとはここにいるものに任せるとするさ。」
と、言うと、滝夜叉姫と蜘蛛丸は姿を消した。それと同時に部屋中の骸骨が動き出し、大髑髏は立ち上がった。
「やっぱりこの大髑髏動き出すんだ。」
「滝夜叉姫のお約束だと赤子がいっておる。」
「早く片付けてあとを追うぞ。」
頼光の命をうけて、綱、金時、季武が動き出す。教通は跳ね飛ばされた篳篥を拾おうと探すと、骸骨の群れの中に落ちている。
「金太、篳篥を取り返せ。綱、大髑髏は俺たちで防ぐぞ。季武は双方の援護を頼む。」
頼光と綱は大髑髏の注意を引きつつ、攻撃を受け流している。時々切り込むが、硬くて切れそうもない。季武が、小髑髏の群れに赤子を打ち込むと、周辺の小髑髏は跳ね飛ばされ、そこに金時が飛び込んでいく。
「教通殿、これを」
金時が篳篥を投げ寄越すと、教通は心を澄ませて篳篥を吹き始めた。骸骨たちの動きが止まり、次々と崩れ始めた。しかし、教通は必死で、篳篥を吹くが、大髑髏はその動きがおそくなったものの崩れる気配がない。
「これが、私の限界なのでしょうか。」
「これだけ遅くなれば十分。切る!!!」
綱が、大髑髏の両手を切り飛ばすと、頼光が首をはね、そのとんだ髑髏に季武の射た赤子が命中し爆散、残りの胴体を金時の鉞が粉砕した。
「粉々になりましたね。」
教通は、安心して篳篥を吹くのをやめた。
頼光四天王(-1)大活躍。




