八:響き渡る
投稿再開します。
「主よ。そろそろ起きなくて良いのか?」
「ふぁぁあああ。よく寝たよく寝た。今から起きる……って、お前、誰?」
誰かから声をかけられたような気がして目を開けると、目の前には深緑色の髪と翡翠のような目を持つ美少女がいた。
スラリとしたスタイルに薄緑色の戦闘服とサラサラの髪が映えている。
俺、一瞬女神かと思ったぞ。
ただし、色々ちっちゃい。
何とは言わない。
もちろん心優しい俺は口には出さない。
「主よ、今すごく失礼なこと考えなかったか?」
「……いやぁ、それほどでも」
「考えたのは認めるんだな?」
「すみませんでしたっ」
「よろしい。許す」
あれ?
「というか、なぜ俺を主と呼ぶ?別に俺はお前の主とやらになったつもりはないのだが。てかマジでお前誰?」
「いや、そんなこと言われても。私としてはスキルを確認しろとしか。あっ、ちなみに私はさっきのサユノマサだぞ」
えっ、あのいかにも名人の構えだったサユノマサがこんな……
「ぷふっ」
「…………」
ヤバい。無言の圧がヤバい。
「すみませんっ、もう二度と邪なことは考えませんので何卒お慈悲を!」
「仕方がない。許そう」
おっと?俺がお前の主じゃないのか?なんか俺の方が立場が低いような気がするのだが。
っと、それは一旦置いといて、本人がそういうのならそうなのだろう。
多分サユノマサ(?)が復活したのは新しく取得したスキルに関してだと俺は踏んでいる。
「鑑定」発動。
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スキル名称:「図鑑」
スキル種類:生産系
スキル詳細・・・・・・今まで倒してきた敵、相手の中で、システムが強いと認識した者を記録する。ただいま記録されているのは「ヴァンエニサピエン」「エニアイサピエン『サユノマサ』」。ただし、ただいま「サユノマサ」は解放されたことにより「ウィンディア『サユノマサ』」と霊種になっている。
「看破」による隠し情報開示・・・・・・このスキルの保有者が名称保有怪異を倒すと、自らの眷属として召喚可能。また、自らの眷属が縛られている場合、解放する。
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えっ、お前霊種だったの。
「人間種だと思ってたんだが」
「それを私に言われても、というか見ればわかるだろう。少しだけ肌が透けて見えないか?」
「あっ、確かに」
へえ。霊種ってこんな感じなのかあ。
「ちなみにランクは?」
「なんかさっきEXランクって言われたが、そのランクって一体なんだ?」
「なん……だと……。なぜ主である俺よりもお前の方が強いんだ!?ってEXランク!?やばい、死にそう。割とガチで」
「えっ、なんかすまない」
「あ、いや、別に大丈夫だぞ」
「切り替え早いな」
とりま俺がボケでこいつがツッコミになりそう。
でもEXランクってことは、サユノマサ1人で1つの国を滅ぼせるのでは……。
おー怖い。
「ま、まあいいや。とりあえずレベリングはやめて最上階目指すことにするから、俺が頂上に到達するまで何も手出ししなくていいぞ」
「いや、そもそも私は眷属だから呼び出されるまで手出しが出来ないのだ」
「ならよし。俺の戦う出番がなくなったら嫌だからな」
さて、休みもここまでにして
「さあ目の前の相手を倒すか!」
「いや……主の強さだともう相手にすらならない気がするのだが……」
「なんか言った?」
「何でもない」
まあいいや。
中央に鎮座するは、地獄で死者を苛むという話で有名な牛頭馬頭、そいつらが融合した姿の怪異ニドウギマ。
でも弱そうだなぁ。
「……だから言ったんだが。相手にすらならないって。」
「ん?」
「この鈍感が」
「自分の眷属の暴言がひどい!」
結界を壊しにいく。
「主よ、何をしているのだ?」
「ああ、実はここに結界があってだな、これを壊すと怪異が動き出すのだ」
「ふむ、それは私も知らなかったな。主には見えるのか?私には見えないが」
「あれ?見えないの?まあ、俺には見える」
おっと、まずは戦闘に集中しなきゃいけない。
ぐうおおおおおおお、とニドウギマの咆哮が響き渡る。
「ふぁああ。あくびが出る」
「念動Ⅱ」発動。
もう「黎明」使わない縛りはしないからな。
「おらよっと」
黎明を相手に投げつける。ヒュンと風を切る音がした。
ぶしゃっ
「あれ?もう倒しちゃった?」
「だから……」
目の前には胸に穴をあけ、血を吹いているニドウギマがいる。
「よ、よしっ。次の階層行くかあ」
「……」
自分の眷属のジト目が痛いよ〜。
「サユノマサさん。そのジト目やめて欲しいのですが」
「責任は全て主にあると思うのだが?」
まあ、とりあえず第十二階層上がるか。
・
・
・
「なあサユノマサよ」
「どうした、主よ」
「ここ第何階層だ」
「……」
なんか怖いんですけど。
楽しすぎてどんどん次の階層行ったからな。
もしかしてもう第五十階層行っちゃってる?
体感ではまだ日付が変わってから1コクも経ってないような気もするが。
あ、第五十階層っていうのは新人挑戦者の壁って言われる怪異が出現するところなんだけど、その挑戦者にとって最も相性が悪い怪異と戦うことになるらしい。
簡単に言えばその階層がクリアできるかできないかでこれからの挑戦者人生が決まるってことだな。
「主は自分の強さを自覚した方がいいのだ。あと、今は第七十階層だ」
「あれ?第五十階層の相手って何だっけ?」
「全スキルを無効化する白いリスがいたはずだ」
「ああ、『黎明』で切ったら一瞬で終わったやつね」
「主はそれしかやってないだろうに……」
あれが挑戦者の壁だったのか?
にしては簡単だったな。
スキル使わなければいいだけだろ。
というか途中からは、「黎明」を持って相手の懐に潜り込み、胸を切って倒すだけだったからな。
そういえば白いリスがいたなぁと思う気もするけどべつに気に留めるほどでもなかったからな。
あ、でも実は強いから「図鑑」に登録されてたりして。
とりあえず「図鑑」発動してみるか。
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スキル名称:「図鑑」
スキル種類:生産系
スキル詳細・・・・・・今まで倒してきた敵、相手の中で、システムが強いと認識した者を記録する。ただいま記録されているのは「ヴァンエニサピエン(怪異種)」「ウィンディア『サユノマサ』(霊種)」「メモリア『ニゲル』(獣種)」。
「看破」による隠し情報開示・・・・・・このスキルの保有者が名称保有怪異を倒すと、自らの眷属として召喚可能。また、自らの眷属が縛られている場合、解放する。
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あれ、名称保有だったんだ。
ってことは召喚できるってことか!?
これはアツいぞ。
なんか獣種って記されてるけど、まあいいか。
「メモリア『ニゲル』」召喚。
「キュウ?」
「「可愛いっ!」」
いやあ、想像を絶するほどの可愛さだな、これは。
ん、でも体が黒いなのは何故だろう?
まあ、漆黒ってかっこいいからいいか!
「……」
「あれ?サユノマサ?」
「……はっ。可愛さにやられてしまった……。不覚」
「いやいや、お前も十分可愛いんだから」
「どうした?顔なんて真っ赤にして。まあいいか、とりあえず頂上目指すぞ」
背中をぽかぽかと叩かれている気がする。
あ、ちょ、ま、痛い、痛いって。
EXランクのぽかぽかなんてマジで洒落にならん。
さて、第70階層の怪異は、げっ、アモルフェスかぁ。
アモルフェスってあの物理攻撃無効化してくるやつだろ。
ネバネバしてて、スキルで攻撃しようとしても吸収してくるやつで、第二十階層の怪異だったはずだ。
まあ「石火Ⅷ」で殴ったら消滅したけどな。
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名称:キタヒルビワ
種族:怪異種サウザンドアモルフェス
職業:名称保有 特異
詳細・・・・・・アモルフェスの進化した姿。アモルフェスは緑色だが、この種は藍色である。アモルフェスが1000体集まったものと同じ力を持つ上、1000回殺さない限り倒せない。また、20ヒン経つとどんな攻撃も通用しなくなる「不動」、相手のライフが減れば減るほど自らの能力が上がる「ライフ変換」を取得している。システム上サウザンドアモルフェスと呼んでいるが、「囚われ」という別称で呼ばれることの方が多い。この種は大体名称保有。前の頃の能力が自らの能力に追加される「継承戦争」。また、特異なので、身体能力が2倍。
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ふむ、ようやく強そうなやつが出てきてくれたなあ。
「これは楽しめそうだ」
ははっと笑い声が漏れる。
今までのどんな相手もサユノマサより弱い。
はっきりいって物足りない。
もっと楽しく戦いたい。
命を賭す戦いがしたい。
さて、この怪異はどうだろうか。
どんな防御も貫通する攻撃を持っているか?
絶対に死なない体を持っているか?
光を超えて、過去と未来を自由に行き来できる力を持っているか?
——否だ。
こいつはそんな相手ではない。
でも、まあ、
「とりま俺の糧になれ!」