閑話:おそらくはこれまでの中で一番重要な話のはずなのになぜか閑話にされているという悲しきep46
──サユノマサから
side:サユノマサ
「昔日」という言葉が、「むかし」や「いにしえ」を意味する言葉、ということをつい最近知った。
そもそも「せきじつ」と読むことすら知らなかったのだが。
遠き日、と表現するのも悪くは無いだろう。
だがまあ昔であることに変わりは無いわけだ。
……少し「なぁばす」になっているのかもしれない。
この言葉も最近知ったものなのだがな。
今日は少し、昔の話をしたいと思う。
少しだけ付き合ってはもらえないか?
私の「独白」に。
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──これは、まだ私が「図鑑」の中にいて彼を「主」と読んでいた時の話である。
──また、これは私が「図鑑」から抜け出す直前に紙に記したものでもある。
──忘れたいくらい恥ずかしい話だが、私はこの「独白」を紙を机の上に置いたままにしてしまった。
──願わくば、主が自力で正気に戻ってほしいところだが、それがどうしても不可能なら……私が、最後の一手を置くことにしよう……。
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私は、目を開けたら、とにかく真っ黒なところにいた。
今だから「真っ黒」とわかるが、当時は何も知らず、何もわからなかった。
だが、決して私もすべてのことに関して無知であるわけではない。
私に課せられた2つの使命を、いや、その2つの使命だけを、私ははっきりと記憶していた。
私が成すべきは、管理すること。
そして、生きること。
そもそも、言葉を教えてもらうところから始まった。
(このままだと本当に何もわからなかった)
記憶にある限り、私が最初に発した言葉は「フゥ」だったはずだ。
今となってはそれがため息だったのか、ちゃんとした声だったのか見当もつかないが。
まあつまり、私に言葉を教えてくれる人が少なからず1人はいた、と言うことだ。
いや、多分彼1人だったのだろう。
私は彼しか見たことがなかったからな。
彼は、とても優しく、丁寧に、何度も、根気よく教えてくれた。
私が泣いても、笑っても、怒っても、悲しんでも、……そして、閉じこもっても、彼なら私を認めてくれる。
そんなことを子供心ながら信じていた。
私は、生まれて初めて恋をしたのかもしれない。
そう気付いたのは、地に足がつくようになった頃だった。
もうそれなりの時が経ち、私も大人に近づいた。
だが、今までずっとこの気持ちに蓋をしてきた。
拒絶されたくなくて。
例えそれがいくら私の心を蝕んでいたとしても。
──結局、私は蓋を閉めきれなかった。
固く閉めて、もう錆びていた筈の螺子が、潤滑油を指されてゆっくりと、でも確かに回って、緩んでいたように。
心に育った花を覆い、日光も水も入らないようにしていた筈が、強かに、いくらでも注いでくれる所為でいつの間にか漏れ、葉と根に吸収されていたように。
言葉というものは、矛であり、盾でもあり。
つまり、私の「言の葉の盾」は彼の「言の葉の矛」に破れてしまったようだ。
彼にじっと見つめられた時、気付けば自然と口から彼への想いが溢れ出た。
その時の私の心臓はこの星の鼓動よりも早く、私の顔は夕暮れを照らす夕日よりも赤かった。
私は自然とこの続きを妄想し、そして納得していた。
ああ、私は今までを忘れて、新しい生を歩んでゆくのだろうな、と。
果てには彼から幾光年も離れた場所から管理を続ければいいのではないか、とすら思っていた。
私は、ずっと彼が私のことなど歯牙にもかけていないと思っていた。
だが、事実は私の妄想通りに、いや、それ以上に私に恋をしてくれていたようだった。
──彼は何年も私を慕ってくれたようだ。
私が勉学に励んでいるのを見て、心にポカっとしたものがよぎった、といつになく溢していた。
私は嬉しくなって抱きついたのを今でも覚えている。
彼の匂いとその体温、体に纏うちょっとした静電気ですら心地よかった。
……彼には危ないだろうと叱られたが。
ようやく私は彼と結ばれ、一女を儲けた。
本当に、幸せだった。
私はそんな彼を復活させに行きます。
どうか、探さないでもらえるとありがたいです。
──主であるフール=リッシュエスタへ
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に挟まれたところは、後からサユノマサがスキルの力で割り込みしたものです。




