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四十三:起きて見るにふないすずめ


 僕の家のすぐ近くには水田があり、隣の農家さんが米を作っているのをよく見かける。

──僕は今、下校の途中だ。



「そういえば久しぶりにみんなでさ、家に寄っていい?」

 話すのは天到地てんどうじ あまね、僕の幼馴染にして吸血鬼ヴァンパイアの女の子だ。



「あー、確かに。僕はたまに寄ってるけど、()()()で行くのは久しぶりだよなぁ」

 話すのは、僕の親友でもあるみつ 戸屋とうやくん。

 彼はさらに左に話しかける。

「どうしよっか?」



 もう1人の女子がいる。

 戸屋くんが話しかけた子だ。

「んー。私は戸屋くんに従うよ〜」

 彼女は、堀ヱ(ほりえ) 乎奈いなさん。

 いわゆる()()()()()

……彼女のことが戸屋くんは好きらしいんだけど……大変そうだなぁ。



 さて、いつも通り僕らは話に花を咲かせながら、家までの長い距離を歩いていた。

 さっきの質問に対する返答が返ってきた。

「あー!ごめん!今日僕実は用事あってさ、行けないかも……」

「ん?じゃあ私もいいや」



「ああ……それはしょうがないね。また今度にしよう」



「うん」

「私は戸屋くんについて行くから」



 しばらくして、提案者でもある周が口を開いた。

「そっか……じゃあさ今日は私だけでいーい?」



 しばしの沈黙。

「「えっ?」」

 僕と戸屋くんの声が重なった。



 戸屋くんが僕に聞いてきた。

「え、まだ天到地さんを部屋に連れて行ったこと無いの?」

「……無い」



 彼は心底びっくりしたような顔をしているが、しょうがない。

 僕には度胸がないんだ。



「はぁー。考えて……みる」

「考えるじゃないの!今すぐ言って!」



 即答……。

 少し腰が抜けてしまった。

「じゃあ、いいよ……?」

「やったー!」



 ついに交差点に差し掛かる。

 僕の家は左だが、彼らは右だ。

「「じゃあね」」

「「また明日」」



 というわけで、僕は初めて自分の部屋に女の子を連れてくることとなった。



 多子高齢化が続いており、日本の人口は年々増えてきている。

 だが、僕は姉と兄が1人ずつしかいない。

 姉と兄は双子で、ちょうど僕の2歳年上だ。

 両親は家に居ず、姉と兄も今日は帰ってこない。



 さて。

 家に到着する。

 準備は万端、のはず……。

「ふふん。あまねく所にあるものは全て私のものなのだ!」

……また言ってる。



「では、いらっしゃいませ〜」

「いらっしゃいませって……プクク」

「笑うなって!これ以外に考え付かなかったんだって!」



ドンッ

 彼女は、その1歩を踏み出し……直後の衝撃によって尻餅をついた。



 空が黄金色の光で埋め尽くされる。

 眩しくて目を腕で覆うが、それでも隙間から入ってくる光がどんどん強烈になってくる。



 いきなり光が収まった。

 直後だった。



どガァぁあああああああん



 家の塀に、何かがぶつかったような音がした。



どガァぁあああああああん

     どガァぁあああああああん

          どガァぁあああああああん



 連続して、何回も、何回もナニカがぶつかってくる。

「ひっ」

 僕は後退りをする。



 だが、ちょうど真横に横たわっている周を見て……全て吹き飛んでしまった。

「周!周!大丈夫か、周!」

「ぅん……」



 彼女に何事もないと知ると、僕は安堵の息をついた。



 ()()()()()()()()()



 どがん、という音が再度鳴り響き、ガラガラ、と音を立てて塀が崩れたのだ。

「「あ」」

 思わず声がハモってしまう。

 周はもう起きたようだ。



 塀を崩したナニカに目を凝らす。

……それは、車だった。

 今日の学校での会話を思い出す。

『そういえば、どこかのお金持ちが「爆速車」を全種類1台ずつ、計20台も買ったらしいよ』

『え、ソウなの?』

『そう!で、今日実際に今日運転するらしいんだよ!』

『へー、すごいんだね』

『いっやぁ、それほどでも』



『初めて知った。ってそんなにすごいんだー』

『え』



 周りで見ていた人は思わず失笑してしまった。

 かくいう僕もその1人だ。



 そんなことを今、急に思い出した。

「……もしかして、よりにもよって、あの「爆速車」なのか!?」



 ゆっくりと事実を噛み締め

ゴリゴリゴリ

べちゃ

──る暇も無く、僕の意識は闇に沈んだ。



 ああ、そうだ。

 最期に強い衝撃を感じた瞬間、彼女の顔を見たんだ。




……で、これは一体、()()()()()()()


⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥


 最期に見た彼女の顔。



 ノイズが混じって、どんどんパーツが変形してゆく。



 赤、青、緑が絶えず交互に現れ、顔のパーツをどんどん改造してゆく。



──彼女の顔は、悲痛に満ちていた。

 僕の頭に疑問が大量に過ぎるが、僕は何をすることもできない。



 その時だった。

 頭に直接声が届いた気がした。



ねえ、誰か、助けて?


⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥


「おいおいおいおい……「心地良い夢(ハピネスドリーム)」何じゃねぇのかよ。俺は()()()()()とまでは言ってないぞ」



 そう、今俺の見た夢、いや、おそらくは誰かの記憶で、俺のすぐそばに立っていた紫色の髪をした少女。



 彼女の声こそが、俺が雲穿塔で聞いた声だった。

 ここに、何かしらの意図が感じられる。



 俺に向かって「助けてほしい」、だと?

 流石に……怪しすぎるな。



 信用できないとは言わないが、流石にいきなり変な動画を見せられて信用しろっていう方が難しい。



 それよりも、だ。

 ここから、抜け出さないといけないのでは?



 この記憶の主人公が死んだことにより、俺の精神は解放されたようだ。

 しかし、今あるのは精神だけなので、肉体を伴っていない。



 どうすればいいのか……。



 悩む俺の目の前に、空間が裂ける音がした。



ビリっ

 まずは小さな破け目ができた。



ビリビリビリビリッ

 そして、そこから一直線に破けが大きくなってゆく。



ビリビリビリビリビリイビリりっ

 ついに、1人入れるほどの裂けができた。



 直前の誘惑など露ほども覚えておらず、俺は穴をくぐる。

 少女の最後の助けにも、自分の正体にも気付かず……いや、気付いてはいた。



 無視しただけだ。

 これは、俺とは関係ないって。



 もう、こんなに重いことは背負いたく無かったんだ。



「もう!うんざりなんだよ!俺はもう雲穿塔を攻略したじゃないか!なんで、俺が、最強じゃないんだよ!俺が、この世界、歴史の中で最強なんだよーーーー!」

 ただただ、自分の願望を叫ぶ。

──立てよほら。

 違う、俺は最強じゃないから、立てない。

──最強は生まれた時から最強だと思うか?

 そう、じゃないのか……?



──さあ、お前はまだ、最強を目指せる。

 そうなのか!!

──わかったなら、立て。

 おう!俺は、最強を目指す!



 そうして、ありがたい助言をもらった俺は、最強を目指すことにした。



 あれ、さっき、俺、何やってたんだろ……。

 そういえば、スキルって魔媒素があるから発動できるんだったね。



 なら、「1=2」、つまり、無い分を作り出すことはできるのか?

 それができれば快挙なんだけどなぁ。



 取り止めのないことを考えながら、俺はつぶやく。

 他の人は今どこにいるのだろうか、と。


⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥


 side:????



 時空のひずみは、貯まれば溜まるほど、過去・現在・未来へ大きな影響を及ぼす。



 地に深く潜む黒い神は、まだ気づかれていないようだな。

 俺の作戦はとりあえず成功していると見ていいだろう。



……もう何回も、何回も繰り返したんだ。

 今回で終わらせてやる。



 この、終わらない戦いに終止符を打つ。



 だから、手伝ってくれ、サユノマサ。

「ふむ、いいぞ」

 彼女は顔を綻ばせる。



 俺達は、サガクムシンを救う。

 それだけだ。



 絶対に、この破滅の1点から、全力で回避してみせる。



 これはやるかやらないかじゃない。



 やるしかないんだ。


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