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三十九:火が上がり


side:Si


「では詳しく説明させてもらいます」

 斥候用星人形(ゴーレム)Cbはこちらに向き直り、説明をしようと口を開く。



 だが、その瞬間



「う゛う゛あ゛」

ガン ガン ガン



 うめき声と同時に檻の中で暴れる音がした。

「……」

 星人形ゴーレムなので、余計な感情を造りられていない我らだが、Cbは行動に出た。

 まあしょうがない。

 見てみろ。



 暴れるやつには痛い目を見せるしか無いだろう?



 そんな表情をCbはしているだろう。



「コード〔罰〕{電気→脳}[従順]」

 どういう効果があるのか、よく理解している。



 さて、星人形ゴーレムというのは、そもそも生物では無いため、異能を授かっていない。

 しかし、「コード」を空気の振動に乗せ、専用の器具に伝えることで何かしらの行動を起こすことができるのだ。



 そして、Cbの造られた性格は覚えている。



 その上で考える。

 このコードは、かなり()()()ものなのだろう、と。



 彼は、あれでかなり残忍で、冷酷だ。

 ただ、命令は必ず成功させる。



──いや、我らは全て設計された者なのだ。

 我らは、御方の願いを、悲願を達成させるため、支えるだけの者。



 Cbがコードを呟いた。



 劇的な変化が現れる。



ビリッ

 音が鳴った。



ビリリリ、ビリッビビビビビ!ビビ!リリリ!

 空気を裂いたような音が響いた。



「うっ────…………  」

 彼女は一瞬奇声を上げ──すぐに、こちらに向かって()()()()()

 背中を見てみると、幾本もの銀色の棒と線が、頭と脊髄、体の神経を繋いでいる。



 彼女の目は虚だ。

 これで従順になったのだろうか?

 獣だから調教か?などと思いつつ、耳を傾ける。



 話の準備は整ったようだ。



「これで邪魔はいなくなりました。それでは話を続けましょう」

 Cbは何事も無かったかのように言う。



 本来なら、このような行為は言語道断であり──だが、くどいようだが、そもそも我らは造られたのだ。

 反抗することなどできようはずも無い。



 つまり、それ相応の理由があってのこと。

 彼の率いる斥候も特に何も言うことは無い、と言う顔をしている。



「まず彼女、仮に《少女》としますが──ああ、名前は聞き取れなかったんです──この《少女》は、()()()()()()()()()()()()()()()

「というと?」



「はい。つまり、彼女の両親は、我らとの関係を一切伝えていないと言うことです」

「だが、それなら説明すればいいだけの話だろう」



「それが、次の報告内容にもつながります。──結論から言います。《魔獣王》が、目の前で消えました」

「なっ!?」

 思わず驚いてしまう。



 何に?

 どういう状況か全く理解できない、ということに。



「Cb、君なら完璧な仕事をしてくれると思っていたのだが、これはどう言うことか」

 少し威圧を込めて話す、が、彼は一切物怖じした様子はない……やはりそう造られているのか、と謎の満足感を得る。

「それが、本当に目の前で消えたのです」



「それは……それは……」

 いまだに理解はできていないが、つまり()()()()()()()()()()()()()かなり有利な状況にある、ということは確実だ。



「そうか、今御方をお呼びしてくる」

 だが、立ちあがろうとした瞬間、

「お待ちください」

制止がかかった。



「ん?これは早急に御方に話すべき内容じゃないのかね?」

「いえ……実は、これが3つ目、御方らEXランクの《王》7名がその場に集い──そして、全員その場で消滅したのです。……この少女を除いて」



 彼は淡々と話し続ける。

「そして、状況を鑑みるに、《少女》はその場にいた《大罪王》らしき者のすぐそばにいました」



 そこから導き出せる結論。

「つまり、星祈ナスメレ共和国を裏切り、獣種の《大罪王》に付いた挙句、我らに向かって暴力をかざしてきたこと──そうなんです。状況を説明した上で連れて行こうとすると、なんと蹴りかかられたのです──は()()()であると判断したため、この《少女》に()()することとしました」

「なるほど、それも致し方のないことだな」



 さて、《少女》に関する話題はここまでだ。

 それよりも重要で、対応を迫らせられる問題がある。



「御方のことだ。何かしら考えがあってのことだろう。だが、それよりも、だ」



 言葉を選ぶ。決して誤解されないように。

「つまり、3日以内に()()()()()()()()、我らがこの世界で生き残れる、ということだな」



 Cbは悪い顔で微笑む……。

「その言葉を、待っていました」



「宣戦布告だ」



 私は宣言する。

「3日以内に、魔王城を落とす」


⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥


 起こるべき未来が、変わる。

 本来なら、戦争の件は誰にも話されること無く実行されるはずだった。



 何かが、おかしい。



 時間が歪んでいる?



 悩み、悩み、悩む。



──そういえば、聞こえただろうか。

 SiがCbを部屋に入れる直前に鳴った、()()()()


⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥


 むむむ……。

 今俺には頼れる仲間がニゲルとGF46-Bしかいない……。



 というか、最強になるためなんだからサユノマサとレンジュアも、ニゲルもGF46-Bも、()()()()()()()()



 だが、それについては不安定要素が強すぎる。

 今の俺がどれほどEXランクに太刀打ちできるかどうか……。



 だが、そういうことをぐだぐだ言っていても仕方がない。



 まずはこの浮遊して一歩も動けない状況をなんとかしないと。

 「看破(覚醒)」発動。……何もわからず。



 口を開き、喉を震わせて発声しようとするも鼓膜への振動、空気の揺れは一切感じられず、自分の状態も確認できない。



 そこで、ふと、思いついた。

(そういえば大先生から「空間固定」の使い方習ってたなぁ)



 「空間固定」発動。

(あぁ゛〜、やっぱり地に足をつけるっていいなぁ〜)

 やはり人間種ヒトだからか、ずっと中に浮いていることには些か抵抗感がある。



 途端、目の前に扉が現れ、重力が付与され、本物の地面が浮き上がる。



(うおぅ)

 流石にこれには俺も驚いた。



 だが、()()()()()()



 強い決意を胸に抱いて、ドアノブに手をかけ、扉を開く。



 ()()()()()()()()

 どこか、怪しげな雰囲気を醸し出す、()()()()()()()()



「…………────っ!?」

 臨戦体勢に入る。

 片手を前に出し、もう片方の腕はぶら下げる。



 ぶら下げている方の手には、もう何度も使い慣れた隠蔽之魔術シークレットスキル遊場ゲーム廻転ローテート」を発動させる。



 右か、左か……いや!?これは前か!



 もうすでに戦闘は開始していた。

「っしゃぁ!あったしの勘冴えてるぅ!早速、最下位くんに当たるなんて!パパッと終わらせちゃうよ「回転氷塊ドリル」発動」



 直線上にある物全てを抉り取る氷の塊が、突っ込んでくる。



ドギャギャギャギャ    ギャギャギャ

       ギャギャギャギャ



 もう冷気が皮膚の表面の水分を凍らせ始めている。

「これは、早めに対応しないと行けなさそうだな……」



 だが、これくらいなら()()()()



 え?隙間がないって?



 作るんだよ、隙間を。



 「遊場ゲーム廻転ローテート」を発動させた腕を振り上げる準備をすると同時に、まずは「射的」を発動して、一時的にあの「回転氷塊ドリル」の一部を脆くする。



 ここだ!

 「空間固定」発動。

 「回転氷塊ドリル」の動きを止める!



「残念でしたぁ。その「回転氷塊ドリル」、実は「種子」が埋め込まれているんだよねぇ」

「その位、こっちだってわかってるっつーの!」



ポンッ



 と軽快な音を立てて氷塊から真っ赤な蔓が伸び──蕾ができて、止まった。

「んなっ!?」



 そこには、「遊場ゲーム廻転ローテート」を発動し、攻撃を避けようとした俺がいた。

(くそくそくそ……!完全に想定外だ!っていうかなんだよ!いきなり攻撃してきてなんなんだよ!)



 混乱の最中に俺。

 その一瞬の思考の鈍りのせいで、首筋に突きつけられたその存在の認識が一歩遅れる。



「弾け飛んじゃえ!魔砲キャノン「四季」充填チャージ完了!属性「夏」だぞ〜!」



 俺の()()に小さな太陽が生まれる。



 熱風が吹きつけてくる。

「せめてもの慈悲だね。3秒時間あげるから、自由にしていいよ〜」



 これは、地獄のカウントダウン。

「3」



 ああ、流石に、これは、やばい。

「2」



 本当に、何も、太刀打ちできない。

「1」



── ()()()

 そもそも、俺のスキル、お前知らないだろ。



 俺はずっと、「猿眼」を発動していた。

 お前の作戦は全て筒抜けだ。



……まあ、だからといって「遊場ゲーム廻転ローテート」を発動させようとも、おそらく周囲の空気の膨張、小さな太陽から出るプラズマ、全てを処理し切ろうとするのは、()()()()()(できないとは言ってない)。



 さて、俺も望んでこの状況になったわけではない、が、使えるものは全て使ってしまえ。



 カッと目を見開く。

0(ゼロ)〜」

「そこだ」



「へっ?」

「「黎明」召喚。「亭午」に変化」

 さあ、この時俺が両手を突き出しているおかげで次の行動に移しやすくなる。



 「魂後刀」を上に掲げ、「電光石火(黒)」発動で高くジャンプ。

 

 「血前刀」を細く細く。体積は変わらないため、極限まで長く細く──。



 おかげで頭上の小太陽の()()()()に成功。

「うわっ、あぶなぁい」

 だが、「血前刀」は避けられてしまった。



「ちっ」

 舌打ちをしたが、これは攻撃が当たらなかったことへの八つ当たり──では無く、そもそも「魔砲」にも「夏」エネルギーの塊が溜まっていることに対しての焦りだ。

「対策は十分!今度は油断しないからね!発射フィリング!」

 彼女は彼女程の大きさがある「魔砲キャノン」の砲口をこちら側に受けている。



 周りを見渡すも、逃げようとしてもおそらく1歩足りない。

 微妙な位置だ。



「どんっ!消えちゃえ!」



 ああ、くそ!

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()



 「スキル付与(創作時)」発動。

 「黎明」に戻す。

 そして「黎明」には「電光石火(黒)」を纏わせる!



 本当はこれはもう少し後になってから使いたかったんだが……やむを得ない。

 これは、俺が大先生に隠れて開発した技なのだが。



 だが、俺が舐められる、ということの方が重大だ。



 お前のその考え方、変えさせてやる。



 俺が、最強だ。


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