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三十六:価値ある物を掴み取れ


 俺は、ずっと不思議に思っていた。



──サユノマサについてだ。



 そう。

 今や俺の眷属として甲斐甲斐しく働いてくれているサユノマサ。



 だが、俺はそんな彼女に対して()()()()()()()()()



 挙げてみよう。



 まず、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 他人のスキルは、スキル同士で打ち消し合い、解除することは、一応できる。



 だが、眷属なら、「眷属」であることを解除することはできないのだ。

 つまり、俺の眷属である限り「図鑑」から勝手に抜け出すことができないこともわかる。



 そして、俺が本格的にサユノマサについて考えるようになった、雲穿塔内での出来事。



 1つ、考えてみてほしい。

 自分の身近にいる人が、急に動きを止め……また動き出すところを目撃してしまったら──。



 俺ならこう考える。

 もしかして、意識を誰かと共有しているのではないか?



 もちろん確かめる術はないし、それが俺の「図鑑」を抜け出せることに繋がるわけでも無い。

 ただ、その可能性は十分に考えられると、俺は思っている。



──まあいい、それはゆっくりと考えることとしよう。



 今は、それについて考えるよりもずっと、切迫した問題がある。

 さて、俺は今、どこにいると思う?



──家?違う、そんな生やさしい所では無い。

──「とマリぎ」?それで危機に陥るほど俺の胃は弱くはない。



──じゃあ、まだあの庭にいるの?



 そう、その通りだ。

 俺は今、あの地獄の特訓を続けている。……3年くらい。



 ああ、いや、実際に3年経っているわけでは無い。

 体感で3年経っているだけなんだ。



 この「庭」は時間の流れさえも調節しているらしい。



──思い返せば、地獄としか形容できない特訓だったな……、と感慨に耽りつつ、俺は今、()()()と闘っている。



 え?大先生が誰かって?

 もちろん、あの背天使大先生だよ。



 いやだなぁ、大先生のことを知らないのかぁ。



 まずは、大先生は、とにかく強かった。

 そうだなぁ……俺はあの「ナイフ避け」、を3日間でこなしたのだが、大先生は3回で完全に見切ったという。



 だが、3年間、俺は大先生の元、「ナイフ避け」から「蘇生リサシティション」取得、さらには「死に慣れる」等々……、まあ、とにかく、さまざまなことを学んだのだ!

 ああ、忘れてはいけないことがあった。



 解析玉を大先生に渡した。

 すると大先生曰く、隠蔽之魔術シークレットスキルは、なんと大先生も見たことが無いと言いらしい。

 だが、「昇華できるならしておくべきだ」と言われ、昇華の選択肢が現れた1()()()に「遊場ゲーム廻転ローテート」を取得した。



 そう!これが思いの外強くて、自分の周囲に結界を張ったり、その結界を自由に操れることは変わらないものの、そこに回転の力が加わったのだ。



 どういうことか?

 つまり、攻撃を「遊場ゲーム廻転ローテート」で受けると、周りに分散させたり、逆に自分自身の攻撃を一点に集中させることもできるようになった。

 まさに、破格のスキルだったのだ(それでも「ナイフ避け」をクリアするにはあまり関係無いけど……)。



「お前は考え事をするくらいなら、闘いを完璧にこなせ!」

 おっと、大先生からお叱りを受けてしまった。



 一旦先頭に集中する。

 だが、気をつけてほしい。

 これは、殺し合いではない。



 闘いだ。

 俺は、大先生と闘うことで、自らの力を高めていってる。



 そして俺も、大先生も素手だ。



 つまり、殴り合いでもある。



ヒュン



 風が唸る。

 体が風圧だけでその場に縫い止められる。



 もう目の前には大先生がいて。

 そして俺は……そこっ!大先生までの空間が空く。

 拳を無理やりねじ込み──叩き落とされる。



「相手が作った隙にすぐに飛び込もうとするな。動きが粗い。わかりやすすぎる」

「はい!精進します!」



 諭されつつ、再び、同じように空いた空間に拳をねじ込み……またか、といったような顔をする大先生。

 だが、俺も簡単にやられる気はない。

 今度は手を即座に開き、上に向けて叩き落とそうとした手を掴む。



 1歩進む。



 頭突きをかますがかわされ──だが、1歩分俺は前に進んだ。

 回し蹴りをすると見せかけて、膝を曲げ、地面を蹴って離脱、回り込む。



 瞬間、大先生の回し蹴りが炸裂した。

 鋭い風が吹き荒れ、先程まで俺がいた方向は大きく抉られている。



 冷や汗をかく、が、それを拭う暇もない。

 ジャンプし……空中で半回転して空気を掴む。



──それは一瞬の出来事だった。

 空気を掴んで飛び越そうとした瞬間、空気ごと引っ張られ、体制を崩す。



 もう俺に助かる可能性はない。



 目の前に拳が迫り、心臓を抜き取られ、破壊される。



 もう何度も見慣れた白い部屋……いや、俺はここが黒い部屋であることを知っている。

 だが、なぜかそれについて聞くことは憚れた。



 俺が死ぬ直前に残した魂と、肉体を基に「蘇生リサシティション」が発動され、意識が再び蘇る。



 大先生は口を開き、言葉を紡ぐ。

「最後の発想は、まあ、なかなかだ。だが、あの時自分は真空を作ることでそれを防げた。なら、どうするのが正解だった?」



 俺は考え、言葉を選ぶ。

「もう片方の手に空気を凝縮させておいて、相手が真空を作った瞬間に投げ込む、とかどうでしょう」

「なるほど、悪くない。だが、違う。見せてやろう」



 大先生はそういうと、無造作に空気を掴んだ。

 すると、超巨大な圧力がかかったのか、気体が個体となる。

「お前が言っているのはこういうことだな?だが、これだと時間との戦いにさえ付き纏われる」

 大先生が言っている側から、固体は昇華して気体となっていった。

 改めて自分の考えの浅さを恥じる。



 さて、実際にどうするのか教えてくれるようだ。

 今度は別の空気を掴む。

 だが、別に凍ってはいない。

「よく見てろ。今から自分が真空を作る。お前は自分を真似てみろ」

 そう言って、手を動かす──そこには一瞬だけ真空ができ、周りの空気が引っ張られる。



……だが、俺の時とは違い、掴んだ空気は振動すら起こさなかった。

「これを、「空間固定」と自分は呼んでいる。これさえできるようになれば、わざわざ足場を作らずとも空を走れる」

 おお!なんと魅力的な提案だろう。



「はい!」

 大きな声で答え、俺は今度は「空間固定」を取得しようと特訓をする。

 外の世界では、まだ1日しか経っていないはずだ。

 ちなみに、俺の解放条件は大先生に勝つこと、らしい。



──まだまだ遠そうな道のりだな、と思ってしまう。

 ただ、特訓を続けて最強になる、ということはとても甘美な響きだ。



 ああ、素晴らしい。



 最強に……なるしかない。


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side:サユノマサ


 サユノマサは閃いた。



 何に?

 もちろん、この矛盾をほぐし、解き明かす方法を。



 サユノマサは念の為、()()()()()()()()()()

 彼は、私が命の危機に陥った時以外、彼自身から私に話しかけてくることはほぼ無い。

 だが、私が聞けば、大体返してくれる。



 そして、彼の予想も私と同じらしい。



 ()()()()()1()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()



 考えたくない話だが、この世界で安心して生きてゆくためには、神を殺さなくてはならないらしい。



 なぜって、神がどこにいるのかわからないから。


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side:セヴン・デッドリー・シンス


 ここには、今EXランクが3体も揃っている。



 僕、《魔獣王》、そしてエアリを食おうとした、あの忌々しい小鬼ゴブリン

 いや、おそらく霊種ではあるのだが小鬼ではなく別の霊と見ていいだろう。



 そう、もう1人は《幻奇王》なのだから。



 ただ、今は再び「人化」を発動してエアリを抱いているため、迂闊に解除できない。



「それ、ボクも混ぜさせてもらおうか」

 急に横から声がした。



 なぜか《魔獣王》の側近が納得したように頷く。

「なるほど、ただの田舎出身のメイドではないと思っていたが、まさかそこまで偽装していたとは」



 見ればわかる。彼女もEXランク。

 放たれるその気配より、《風聖王》と見て間違い無いだろう。

 そして、その側に佇む爽やかな青年もまた、《魔獣王》の側近と同じほどの力を持っているのが手に取れる。



「あれぇ?こんな感じに集まるはずじゃぁ、無かったんだけどなぁ」

 《幻奇王》が呟く。



カツン、カツン、カツン、カツン



 そのとき、足音が響いた。

 4人分の足音だ。



 扉に目を向ける。



スーッ



──先ほどから嫌な予感が付き纏うが、どうやら僕の勘は悪い方に転がってしまったようだ。



 扉が開き、大男、巨人と体に火を纏った小柄な女、おそらくは獣種フェニックス、が現れる。

 巨人の方は《不折王》、フェニックスの方は《臆病王》だろうか?



 《不折王》が声を張り上げる。

「《幻奇王》!俺は、父の仇であるお前の首を取るまでは死ねない!」

 力強い声だ。

 その言葉の中には、さまざまな感情が含まれていることだろう。



 そして《臆病王》。

……んー?もしかして、

「ふーん、僕が逃しちゃったせいでEXランクになったやつか」

「あ、あなたは、も、もしかして……」

 めちゃくちゃ震えているが気にしないこととする。



 2人とも従者をつけている。

 どちらもそれなりの強者なのだろう。



「さて、ここまで人が集まったことだし、もしかして最後の1人が来るのではないのか?」

 どこか恐ろしそうに《幻奇王》が囁く。



──しばらく時間が経ち、ついに、扉が開く。

……今度は、()()()()()()()



 そこには、最後のEXランク、《此星王》と、巨人がいた。

「やはりな」



 彼女の音を僕は偶然拾う。

 僕も知り得ない情報を彼女は知っているのだろうか?



 そこで、システムの声が頭の中に響いた。



『全てのEXランクが一斉に集まったことを確認』

『準備は完了しています』



『これより、第3回サガクムシンサバイバル、いえ、今回を持ってして()()なので改名します』



『これより、ラストサバイバルを開始します』



『マヨイガミは、ある方を探しています…………それでは、プログラムを実行します』

『健闘を、祈、いの、いいいい……  』



 参加する資格を持つ者は、全て、消えた。



『「バグ」が……潜り……いることを確認ザザザザザザザザ     』



 バグのせいで起きたエラーにより、取り残されたエアリを除いて。


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side:????


「ほう、斥候がジウノ帝国から帰ってきたか。通せ。──魔王城さえ堕としてしまえば、我ら「神祈ナスメレ共和国」のこの世界での地位は揺るぎないものとなる……」

 彼は、霊種の住まう国「星祈ナスメレ共和国」の政治用星人形(ゴーレム)Ciと言う。



 彼はなぜ戦争を起こしたのか?

 それは、政治用星人形(ゴーレム)Ciを設計した者しか知らない。



……設計士は、ストイ・()()()()()()()と名乗ったという。


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