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三十四:月日星

〜《せい》者ちゃんの楽しい楽しい神様講座 on 死後の世界 TAKE1〜


side:サユノマサ


「では、始めましょう。この世に存在する神とは何か、     ((何も聞こえない))とは何か。そして、《()()()()()()()()()()()     ((何も聞こえない))に囚われている、ということを」

(は?《概念神》ディネクショネムは存在したのか!?)



「いえ、それよりもまず《神》と《王》の関係について話しましょう」

 《せい》なる者がそう言うと、私に擬似的な体が戻り、なぜか椅子に座っていた。

 目の前には黒板と《せい》なる者……《せい》先生が立っている。



……なぜ私は学生服?まあ、いいか。



「あー、あー、あー」

 発声に問題は無さそうだ。



「体の調子は大丈夫そうですね。それじゃあ、1限目の学習を始めます」

「あ、はい」

 まだついていけてないサユノマサだが、とりあえず話だけは聞くことにしたようだ。



「それでは、1限は私達を含めた「神」、とはいったい何なのかについてです」

「はい」

「何か質問ですか?」

「《せい》先生って神様だったんですか?」

 ノリはいいようだ。

 サユノマサの口調がいつの間にかですます調になっている。



「はい、そうです〜。私達、実は神様なんですよ」

 そう言って《せい》先生は黒板に扇形の形をしたサガクムシンを描いた……なぜチョークがある?

 さらにそのサガクムシンを覆うように張られた結界を青いチョークで描く。



「これ、「天覆結界」ですよね」

「そうです。ちなみに正確な名前は」

 《せい》先生はそう言って赤のチョークで私達が立っている地面をなぞる。

 これで生物はサガクムシンにおいて結界同士に挟まれていることになる。



 《せい》先生は続ける。

「「地載結界」と合わせて「真理結界エウオーベックス」と、私達は()()()()()()

「『呼んでいます』?《せい》先生達が張ったやつじゃないんですか?」



 直後、それまでにない険しい顔で彼女は呟く。

「実は、あれは……」

「あれは?」

「……私達も知り得ないのです」

「えっと、つまり、あの結界は一体どういう効果が?」


 《せい》先生は一瞬思いを巡らせるような顔をし、言葉を発する。

「あれはですね…………私達もよくわかりません」



「え?」

「本当に、あの結界がどういう効果を及ぼしているのか、誰がなぜ張ったのか、私達にもわからないのです」



「あの結界よりも外には出ることは可能ですか?」

「そうですね……試された神がいるのですが、その神は……身体中の細胞という細胞が潰れ、危うく命を落とすところでした。それなりには強い神だったのですが……」



 授業は進んでいくが、結局わかったのは、何もわからない、ということだけだった。



 だが、話は終わらない。

「しかし、私達、神も伊達に研究をしていたわけではありません。そして1年前、私達はついに1つの事実に辿り着きました……」

 事実がわかったという割には悲惨な顔だ。



 彼女が嗚咽を漏らす。

「うっ……あれは──私達、神の残骸だったのです……」

「ふむ……」



「私達は曲がりなりにも神なので、どのように死んだのかは読み取れるのです。彼らの死体は……それは、もう、凄惨でした……。うっ……」



「ふむ、それで、つまりあの結界は何をしているのですか?」

「それが、今でもわからないのです。ただ、神、といってもかなり体の構造が違っていて」

「ならなぜあれが神だと分かったんですか?」



「それは、彼らが……()()()()()()()だと、歴史上の史料と照らし合わせた結果です」

「ホモ・サピエンス……?」



「あまり知られてはいないのですが、この世界とは別に、他の世界……定義上「異世界」と呼ぶのですが……つまり別の世界線があるのです。そして、このサガクムシンは、「異世界」から来た、特にホモ・サピエンスと呼ばれる種族だったのです。彼らがサガクムシンを創り、生物を生み出しました。なんでもその「異世界」は「地球」と呼ばれているそうです」

「では、《せい》先生達、神様の祖先は「ホモ・サピエンス」ということでいいのですね?」

「まあ、そのような解釈で構いません。ただ、あなた達生き物は私達が造ったものです」



 《せい》先生が指を擦り、パチッとこ気味良い音をならすと同時に黒板に描かれていた図が消える。

 そこは神の力を使うのか……?と不思議な気分になりつつ、サユノマサは話の続きに耳を傾ける。

「さて、そして私がこれから説明するのは」



 《せい》先生は息を吐き、何かの覚悟を決めたような顔をする。



 そして、(まるで震えを抑えるかのように)手を押さえながら、「マ ヨ イ ガ ミ」と黒板に書き綴る。



──瞬間、《せい》なる者の()()9()()()()()()()

 神の造った体の9割が瞬時に蒸発し……その場で爆発した。



 サユノマサは咄嗟に防御姿勢をとるも、思っていた衝撃が襲ってくることはなかった。



 そこには復活し、手を翳して結界を張る《せい》なる者がいた。

「これでもっ……《せい》を、司る神、ですからね……」

 息も絶え絶えだ。

 しかし、それでも神。その結界はびくとも動かず、完璧に私達を守ってくれた。



「フゥゥ……」

 息を吐き、こちらを見つめる《せい》先生。

「あの      ((何も聞こえない))の名、読めましたか?」

 そう尋ねてくる。



 勿論、読めた。

「マヨイガミ、ですね」

 ほぅ、と息を呑む音がする。

「あなた……喋れるの?……いや、喋れるの、ですか?」



 1つ、興味深いことがある。

 サユノマサはそのことについて考察を思い浮かべていた。



 そう、

(《せい》なる者、それは様々な《せい》が集まってできた者()なのではないのか?)



 まあ、別に特筆すべき点では無……い?



(そんなわけは、ない)

 サユノマサは気づいてしまった。



──さあ、考察の時間だ。



 神は全てホモ・サピエンスという者だとする。

 そして、生物は全て神によって造られたとする。



 さて、()()()()()()()()()()()()()()()



──例えば、神すら騙すような幻覚がサガクムシンに充満していたとしたら?

──例えば、生物が神に勝てるということを神が隠そうとしたら?



 ここで、ホモ・サピエンスと神が完全に同じでは無く、むしろ違う者であることに注目しよう。



──例えば、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()



 その瞬間、《此星王》は身震いをした。



 この星の王とも言える、《此星王》が。



──彼女は考えを巡らせる。



 もしかして、いや、実は──マヨイガミが、全てを創ったのではないのか?



 しかし、彼女はすぐにその考えを捨てる。

 いや、だとしたら概念神ディネクショネムが囚われている理由がつかない。



 そもそも、マヨイガミとは、どのような姿をしているのだろうか?

 知らないことは率先して聞くべきだ。

「では、マヨイガミとは、どのような姿形をしているのですか?」



 彼女の瞳は一瞬闇に染まる。

「白です。純白です。ああ、なんと美しき色。ああ、触りたい、触れ合いたい、ああああああああああああああああ         」



 直後、ノイズ音が鳴る。



ザザッザザザザッザザザザザザザザザ



 何かが這っているような、気持ちの悪い音。がする。



 時間は巻き戻る。

 運命の線を点から外すため、そのバグは這い回る。



──どこからか声がした気がした。



 さあ、TAKE2だ。


⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥


──感覚の外で地震が起きているような、何も聞こえていないのに何かが動いている音がするというか。



 とにかく、その後、サユノマサの意識は闇に包まれていた。



 彼女の意識は、星の底に沈んでゆく。



 そこは真っ黒だった。



 何かが蠢いているのがわかる。



 あれはアンブラか?



 それでは説明しよう。アンブラとは強大な霊種の集合体だ。

 いや、正確に言えば、霊種が生きていく上で思考し、頭の中で浮かべる憂い、心の影、痛みの主に3つで構成された霊種だ。

 特に何かをして害を与えたり、無闇矢鱈むやみやたらに生活に干渉して来るわけではない。



 が、とにかく強いのだ。

 それに邪魔である。

 この巨体は何にも運用することができないことは、それなりに前から知られてきたことだ。

 しかし調査しようにもその周りに潜むそいつを囲むのアンブラをどう処理するかの方法が無いため、挫折した、という話なら枚挙に暇が無い。



 だが、目の前にあるこの星を包む黒いナニカは、最早口にするだけで恐ろしい。



 そう、()だ。



 ああ、理解した。



 これこそが、神なのだ。



 私は今まで何を信じていたのだろう…………。



 再び空間が歪み出す。

 そして、歪まされた脳が急激に元に戻る。



 ()()()()()()()()()()()



「あ゛ぁ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ ぁ ぁ」

 そして激痛が走る。



 神経が弾け飛ぶ。



 脊髄から強烈な信号が体全体に流れ出し、どんどん破壊されてゆく。



 まさに砂の如し。



 全ては三光鳥の羽毛のような色をした闇に沈んでゆき……粉状になって空間に溶け込む。



 自分の体だったものは激痛に苛まされつつ、消えてゆく感覚を生々しく映し出す。



 私はどこに行った?そんなことを私自身に問いかけ……消える。



──()()()()()()()



 三光鳥の「月日星」という鳴き声が聞こえた気がした──そんなもの、この世界にいるはずないのに。


真実が真実とは限らない。

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