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三十:シロップの味はどれも同じ


『ラストサバイバルの予選を開始します。この予選に参加する資格のある者はZ+ランク以上、ダンジョン踏破者、己より4倍以上強い相手に挑んだ上で勝ったことのある者でAランク以上、EXランクの連れ1人の…………計20名』



『サバイバルが始まるのまであと2日半』



『それでは、皆様の健闘をザザザ……ッザ……ザザ           ぷつん』



「よし、告知終了。……俺を楽しませてくれよぉ。1000年ぶりだしなぁ。期待してるぜ?噂だと2000って不吉な数字らしいがな」

「ぅぁ……」



「黙れ」



 誰も気づかない



 その隣で泣いて助けを乞うている少女がいることにも



 誰も気づかない


⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥


「……はっ!」

 なんか悪い夢を見ていた気がする。

 だが何も思い出せない。



「ん?」

 いつもと寝ているベッドが違うことに(そもそも今まではベッドじゃなくて布団で寝ていたことに)気づき、起き上がる。



 そして顔を青ざめかける。

「ようやく起きたか。まあ自分にとっては色々いじくり回すいい機会になったからな。で、自分が貴様に特訓をつけてやるから、せいぜい()()()()()()

 その言葉の不信感に首を傾げそうになるも、無闇に行動を起こすべきではないだろう。



 ようやく思い出した。

 俺はこいつがいる場所にのこのことやっていき、あっさり敗北し……その跡が思い出せない。

 多分気絶させられた後に運ばれたのだろう。



 なんにせよ、今の俺だと()()勝てない相手だ。

 大人しくしている他ない。



 だが、今は情報が欲しい。

「それよりもこの状況を説明してくれ」



「ほぉ、貴様。なかなか冷静じゃないか。つくづく面白い……普通連れてこられたら悲鳴ひとつくらい叫ぶものだがな……で、貴様。()()()()()()()()()()()()()()()()

 一瞬ギクっとするが、すぐに取り繕う。

「…………」

 ここは無言が最善手だ。



「無言を貫き通すとは、これまた聡明なことだ。自分には劣るがな…………“翼顕現”。これで終わりだ“翼権能「真実」”」

「……」

 忘れていた。こいつは天使だ。

 翼を顕現させることによって発動する能力もある可能性を思い浮かぶべきだった。



 だが、それももう後の祭りだ。

「ふむふむ……ほぉ、自由自在に形を変えられる便利な刀があるのか……なんと!権能も奪えるのか!?いよいよ持って面白い。だが、それだけだと自分には勝てないぞ……なるほど、仲間を呼ぶ能力があるらしいな。しかし、それでも自分に勝てないと踏んで早速もう気づかれないように能力の効果を上げる能力を発動済……」

「ちょ、ちょっと待て。お、お前は何を言っている?」



「まあそこを含めて自分が訓練してやるから、死なないように頑張れ。……もういいようだ。では、早速行くか」

「……どこに?」



「ここの庭だ」

「庭?」

 そこで一瞬息をついてしまうとしてしまう自分がいた。



 安心してしまった自分がいた。



 俺の目の前にいる()()()()()()()()()()()()使()はニヤリと悪い笑みを浮かべる。

 直後、天に張る結界のさらにその上を様々な感情を含んだ瞳で見つめたが、終ぞ下を向いていた俺がそれに気づくことはなかった。



「ああ、そうだ忘れていた」

 そう言ってこの背天使は……俺の心臓を掴んだ。

「ごはっ……!」

 口から血を吐く。



 体の中心から少し左に寄った胸に手を沈め、心臓を掴んでいた天使は……



 そのまま俺の心臓を握りつぶした。



「がゔぁ……!!」

 一際大きく喀血し、俺の体を動かす機能が停止する。



 体が大きく前に倒れていくのをなぜかゆっくり感じ……強烈な痛みをゆっくりと感じ……体がどんどん寒くなっていくのをゆっくりと感じ……。



 意識が沈む。まるで眠りに着くときみたいだ。

 だが闇ではない白き光を見、空間が凹み、その分だけ空間から離れた白い光が残る。

 それが纏わり付き、遥か彼方に俺を連れて行こうと体を包み込む。



 しかし、心臓を潰されたことによって魂を製造する場所がなくなり、()()()身体のどこにも魂が残っていないのを確かめ……離れてゆく。



 そのとき、遠くから声がした、気がした。

「「蘇生リサシティション」発動。媒体指定フール=リッシュエスタの魂8割、肉体1分。媒体の完全性10割による完全蘇生開始」



 今度は黒い靄がどこからか現れ、俺を縛り、投げる。



 超高速で飛ばされた先に強烈な光が差し、眩しくて目を手の甲で覆う。



 ゆっくりと体を起こすと、1つも異常の残らない俺がいた。



「……っ!?」

 さっき俺は一瞬夢を見せられていたのか?



「夢ではない。貴様が座っている場所を見ろ」

 ハッとして立ち上がり、座っていた場所を見ると、血が残っていた。



 赤黒い血だった。



 どろりとした血だった。



 変な匂いのする血だった。



 そして、黒き雷が走る血だった。



「うっ……ぷ……」

 吐きそうになる。

 いつの間に俺の体はこれほどおかしくなったのだろう。



「貴様、天使の血をそのまま飲んだな?」

 こくりと頷く。



「貴様、そのままだと死ぬぞ」

 眩暈がする。



「それほど強い天使ではなかったことが幸いか……まあいい。おそらく貴様の寿命はあと6年だ」

 頭の中を絶望が占めている。あと6年しか生きられない、だと?



「まだ説明していなかったな。()()サガクムシンに住む生物が天使の血を飲むと、死ぬぞ。……貴様は運が良かっただけのようだ」

 視野がどんどん狭くなっていく。



……まさか死がこれほど恐ろしいものだったとは。



 再び意識が()()()のある場所へ飛ぼうとしている。

 体にドロリとした液体が満ちていくのがわかったが、

「……」

もう何も考えられない。



 ああ、なんか前もこんなことあったなぁ、と思い出すも、もう何も気にしない。



「それが呪いか」

 ん?なんて言ったんだ?

 意識がどんどん白い光の部屋に引っ張られる。



「翼権能“真実”」

「権能“解除”」

「権能“絶対零度”」

「権能“無限熱度”」

「権能“施錠”」



 この少年の姿をした天使から黒い翼が生える。なぜか知らないけど、それがわかった。



「翼権能“偽装”」



「戻ってこい。この馬鹿が」

 そんな声が響き、意識が急速に復活する。



「あの……俺は一体……?」

「説明すると長くなるから掻い摘んで説明するぞ」



 そう言ってこほんとわざとらしく音を鳴らす。

「まず貴様は天使を殺し、その上天使の権能を奪って血を飲んだ。血を飲むと、このサガクムシンの生物なら死ぬという話を先ほどしただろう?そのときお前が生き残れたのは運が良かった、と言ったが、それは違う。おそらく権能を奪ってしまったことにより、致死では無くなったのだろう。しかし、もしそのような奴が現れたら脅威となる。……つまり貴様は脅威と見做されたわけだが。だが重要なのはそこではない。貴様は呪いをかけられたのだ。その強い器を基とする強力な呪いをな。だから貴様が自分から死にたくなるように調整したわけだ。そうすれば自然と溜まっていた呪いは溢れるわけだな……まるで蝋だった。そしてそれを最後に自分が完全に殺した、ということだ」

「……っ」

 要所要所で聞きたい質問がいくつもあったが、

「ありがとう……ございました」

謝ることにした。曲がりなりにも命の恩人だ。

 謝るくらいのことはしないと。



 そう言って顔をあげ、目の前を見ると、

「ん?」



 きょとんとした(この時だけは年齢相応の)、顔をした少年がいて……その天使は、

「はっはははっはははは!」

大笑いした。



「へ?」

 今度は俺がきょとんとする番だ。

「変なこと言ったか……?」

 そうひとりごちる俺を、少年の天使はもう1度見て、

「ははっははははっ!」

 再び大笑いした。



 そうして口角が釣り上がったまま口を開く。

「これでもお前を1回殺してもう1回殺しかけたやつだぞ?そんな相手に向かって謝るとは……ふふっふ……はははっははは!」



「え……でも結局俺を助けてくれましたよね?」



 再びこちらをまじまじと背天使は見つめる。

 そこから意味を持って言葉が紡ぎ出される。

「いいぞ。()()を強くしてやる。本気を出そう。お前も死ぬ気で頑張れよ」



 色々あったが、それは願ってもいない提案だ。

「よろしくお願いします!」

 こういうのはどんどん教えてもらうのが良い。



「よし!最強目指すか!」

 そうこっそりと心に決めて(どうせバレているんだろうけど)俺は前に進む。


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 とある研究者が導き出した研究結果がある。



 この世の全てはある点に向かっている、ということだ。

 どんな事象が起ころうとも、どんな偉大な人物が現れようとも、その点には否応なしに辿り着いてしまうと言う。



 その点には「完全なる終焉の更なる破滅」と刻まれていたという。



 その研究者はこの研究結果を発表した直後に死んだ。

 事故死だったらしい。


⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥


 とある研究者が導き出した研究結果がある。



 この世界にはいくつかの分岐があり、その分岐の先に存在するのがこの世界だという。



 我々が道路を右にいくかそれとも左へ曲がるかの違いだと、最終的には1本の大きな本流に合流するだけだが、その本流が分岐する地点がいくつかあるという。



 この研究者は他の分岐の先に広がる世界を「並行世界」とし、発表した。



 そして、今この世界は最も望まれた世界でもあるとした。



 その後、この研究者は国から直々に表彰され、その後も研究を続けつつ裕福に暮らしたという。


これが書きたかった……!

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