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二十七:燕の巣


side:セヴン・デッドリー・シンス


「そこ!その攻撃はちゃんと避けて。あと動きに無駄が多い。体の芯にブレがある。そのままだと戦いの最中に転ぶよ。ほら!今言ったことちゃんとわかってる?そこ避ける!ちゃんと受けてもいい攻撃かどうかは君なら簡単にわかるでしょ。それだけは衝撃はあるけど痛くないから。だから受け流す力もちゃんとつけて」

「……はいっ……!」

   ・

   ・

   ・

「そうだね、エアリに教えられることは大体教えたかな。とりあえず基礎はこんなもんだ。あとは1つ1つ着実にその技術、スキルを極限まで高めることだ。だが、それにしても4日でここまで成長するとはね。さすがだ。僕ですら1日かかったんだ。お疲れさま」

「ゼェ、ゼェ……はい、ししょう…………」



 エアリは見るからに疲弊し切っている。

 そこで少しだけ彼女をいじることにした。

「ん〜、じゃあ今日のデザートは疲れたから食べなくていっか」



 まあ、そこはエアリだから。

「……たべる!」

「ははははは!はいはい、どうぞ〜。今日はミツマルだよ。これはミツマリュウの巣に含まれるミツマっていう物質が少しずつササイチゴに移ったものなんだよ。さっきミツマリュウの巣があったからさ、もしやと思って近場を探したらあったんだよね」

「ほへぇ……もぐもぐ」



 この食べっぷりには苦笑するしかない。

 セヴン・デッドリー・シンスなんて大層な名前だけど、修行以外の時なら自分の弟子には甘いのだ!



「ほら、ミツマルが右の頬についてるよ」

 そう言って拭ってあげる。

「ありがとう、ししょう」

 ようやく会話のボールの投げ合いができるようになった。

 こういうのが日々に暖かさを感じさせてくれる。



 だが、着実に魔王を殺す日は近づいて来ていた。



 彼らは、いや、彼と彼女はまた大いなるうねりに巻き込まれていくのか消すのか。


⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥∇⊥


「なあ主人よ……これどうにか出来なかったのか?」

「無理だな」



「せめてどうにか」

「無理だな」



「そこをなんと」

「無理だな」



「……」

「無理だな」



「流石にこれはないでしょうがっ!」

「……スマン」



「だがレンジュア、お前が武器を見たいっていうから、俺は頭を捻って考えたのだ!しょうがないだろっ!」



 よもやこんなことをする人は前代未聞だろう。

 これを混沌カオスと言わずしてなんと言う!?



 よし、テンションがおかしくなっていたみたいだな。

 ふぅ〜。



 では状況を説明しよう!

 まず、今日はレンジュアを連れて行く予定だった。

 だが、この時代において巨人が姿を見せたら何が起きるかわかったもんじゃない。



 そこで!

 「電光石火(黒)」を駆使し、ある程度吸収できる巨人の力の指向性を補助し、体を小さくさせる能力を手に入れさせたのだっ!



 まあ……ただ……その……なんというか、ちょっと形がおかしくなっただけで……。

「主人よ。我にそんな異常性欲フェティシズムはないぞ。流石にこれは羞恥が過ぎる……」



「まあ、なるようになるさ。安心してくれたまえ」

 そう言って親指を立て、いい笑顔で笑う。



 ぶちっ



「怒るな怒るな。いや、本当に。もう1度あの地獄を繰り返すか?」

「ふしゅぅ……ぐぬぬぬ……」

「それでよし。というか意外と可愛いぞ」

「キュい(ぼくは)……?」

「おうおう、ニゲルも可愛いぞ」

「絶対意味合いが違うと我は進言する」



 ではレンジュアの姿の詳細を記そう。

 まずはっきり言って意味不明である。

 色とりどりの糸で大小の9つの球が繋がっている。

 その中心にはモノクロで彩られた枠があり、その枠のさらに内側には不思議な靄がかかっている。



 なんか、芸術作品として売ったら意外といけるのでは……?

「売ったら何ベルクになるんだろうなぁ」

「売るな!」



「さて行くか。あ、サユノマサ、弁当ありがとうな」

「ふむ、それほどでもない」



「じゃあみんな「図鑑」に戻ってもらうよ」

 「図鑑」発動。レンジュア以外の全員の召喚を解除。



「さて、レンジュア、行くか」

「おう……」



 今日行くところは、俺が住んでいるヘイスト区の近く、セイオン区。

 セイオンのサザナイ一家といえば誰でも1度は憧れる武器彫刻所だ。

 怪異モンスターはどんどん強くなっていく上、何度も雲穿塔に登る必要があるこのご時世、武器が強くないといけないというのは流石にわかるだろう。



 だが、ただ武器を造るだけではその武器の進化を促したり、真価を発揮させたりすることができない。

 そこで武器を「彫刻」、つまり形を彫り、刻みつける人が必要となる。

 そしてこの人達は武器に特定の印を彫って刻みつけることで武器自身の隠れ潜むその才能が発現する。

 その印がとても格好いいのだ!心を刺激させるというか、なんというか。

 つまりは浪漫だな。うんうん。



「そういえばレンジュアの武器の名前ってなんていうんだ?」

「矛が「那智」で盾が「粘板」だ」

「なんとも厳つい名前だな」

「かっこいいだろう」

「まあな」

「わかってくれるか!」



「そういえば主人よ」

「どうした、レンジュア」

「我の「那智」と「粘板」、実は武器を吸収して強くなれるのだ。というわけで矛と盾を買ってくれないかっ!」



「まあいいぞ。別にお金はある。なんなら最高品質のやつを特注で造ってもらったらどうだ?」

 そう言ってニヤリと口角を釣り上げる。

「ほう!我のためにそこまでしてもらっていいのか!?」

「まあまあ、出世払いだ。どんどん強くなってくれ」

「おう!」



 今から行くのは武器を売っている所。ただし「彫刻」はされていない。つまりは器だ。

 まずはそこで特注の器を作ってもらう。

 次にサユノマサの「風の便り」によって手に入れた情報で「彫刻」してもらう。

 それを吸収してもらえれば完璧だぜ!



「ここが……」

「おいっ!手前ら、出ていけ、出ていけ!とっととこの区から出ていけ!」



「……ん?」

「話を聞いているのか!出て行けっつってるんだろ……ん?あんたたち誰だ?」



「あ、はい。こんにちは〜。武器を造ってもらいにきました」

「番号」

「633145」



「ふぅ〜。すまんね」

 そう言って彼女は謝ってきた。

 そこまで高くはないが、低いというほどでもない身長。

 燃え盛るような真っ赤な髪。

 それに相反するような涼しげな青い瞳。

 そして流れるようなスタイル、スッと通った鼻と整った顔。

 体を包むはところどころ傷がつき、雄々しさを感じさせる純白の肌。



 はっきり言って美人だった。



 そして見惚れた。

 レンジュアが。

「主人よ。あのお方は誰だ……。なんと美しい……」

「おいこら。お前の武器を造ってもらうために来たんだぞ」



「最近はここら辺が物騒になってきてるんでな、ついピリピリしてしまった。すまん」

「いえいえ。確かに近頃ここら辺に魔王がやって来るっていう噂がありますよね」

「そうだ。そのせいでベニアス区の方から()()()()を受けるのだ。年甲斐もなく騒いだ姿を見られちまった。それで、お客さんはどんな器をお求めだ?店頭に置いてある器の位置なら覚えている」



「特注で」

「ん?もう1度言ってもらえるか」



「特注で」



「……」

「もちろん相応の対価も材料も払うが……」



「はーはっはっはっは!まさかこの私に特注とはな」

「ん?あなたは《灼炎の槌》ですよね。腕は確かなはずでは?」

「はっはっは……。まだあたしのことをそう呼んでくれる奴がいたとはな……」



 その元気の無さに思わず反応してしまう。

「どうしたのですか」

「ここは由緒あるとまでは言わないが、そこそこ有名な場所だったんだ。あたしも自分の店を盛り上げようと頑張ってきた。それが……」



「経営に携わってくれた弟が先月、無惨にも殺された。『器精錬所「スモーク」で姉の不正を摘発しようとした弟、口封じのために無惨に殺されるか!?』っていう、見出しとともにな」

「それって……」

「そうか、お客さんは知ってたのか。その後すぐに私の無実は証明されてな。とある強盗の仕業だったんだっ……」

 悔しそうに拳を握り、目にはうっすらと涙を溜めている。



「んで、この話には続きがあってな」

「ん?」



「ほとぼりも冷めようとした時、大体1週間前に妹が殺された」

「……っ」

 あまりにも悲惨なその告白に一瞬息が詰まる。



「妹はかなり熱血な挑戦者でな、挑戦者専用の家も持っていてあたしはもう半年ほど妹に会っていない。でもその日妹は珍しく雲穿塔ではなく親友の家へ向かうところだったんだ。あたしがそれを知っていれば……」



「結局その後この店には呪いがかかってるみたいな噂が広がって……つい最近だと、昨日2人来ただけだ……」



「それでも!俺は半年も会っていない妹をそこまで思いやれる姉はとても素晴らしいと思いますよ。月並みで下心もある言葉ですが、これからもこの店を続けてくれると嬉しいです!」

「そう言ってくれるだけであたしは救われた気分になるよ。ありがとう、お客さん」



 美人のお姉さんは涙を拭って立ち上がる。

「それで、自己紹介が遅れたね。あたしの名はフェスタ・G(ギマグゴチーニ)・リアディアだ。フェリアと呼んでくれ」

「それではフィリアさん、特注の武器を造ってもらって良いでしょうか!」

「ああ、わざわざ話も聞いてもらったしな。それじゃあ」

 そう言ってフェリアさんは目を皿のように開いて俺の格好をジロジロと見てる。

 最後に意味不明の物体レンジュアをちらっと見て、口を開いた。

「お客さん達、矛と盾がいいのかな?」

「あ、はい……達?」



 え?

「どういうことでしょう」

「そこの意味不明の物体、何かしら生物が形を変えたやつだろ。勘でわかるさ」



 まじかー……。

「すみません。実は……あまり見せたくないものなんです。あ、いや、別に生物の虐待とかそういうのじゃなくて、バレたらやばいというかなんというか……」

「大丈夫。あたしは口が堅い方でね。それにこういう商売は信用が重要なんだ。だが、採寸が採れないと器の造りようがないんだ。頼む」



 まさか頼んでくるとは思わなかった。

「じゃあ……驚かないでくださいね?」

「ああ。あたしの肝はそんな小くはないさ」



「レンジュア、くれぐれも粗相の無いようにな」

 そう告げて、レンジュアに縮小化の解除の許可を与える。



 黒い線が体を貫く。

 瞬間、中心にノイズができたように感じた。



 謎の物体レンジュアから煙が湧く。



 煙が晴れると、そこにはいつものレンジュアがいた。



「騙してすみません。造ってもらいたいのはこいつの武器なんです」

「本当に我の武器を見繕ってもらえるなら、頼んだ」


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