十七:朝餉食べ御椀覗けば
side:セヴン・デッドリー・シンス
よし、とりあえず殴るとしようか。「人化」一部解除、指定両腕。
お前ら、許さんからな。
言ってなかったっけ?僕の一番嫌いな言葉が「英雄」だって。
ああ
むしゃくしゃする。
「おい、ボケっとたってるにいちゃんよ、それだけか?」
こいつ、今何つった?
「お前の能力はそれだけか。なら、消えろ」
攻撃を出そうとしてくるのがわかる。あれじゃあ大振りすぎだ。それに届くわけがない。
そうだなあ。とりあえず攻撃を受けてみ
「ごはっ」
腹に拳が突き刺さった、気がした。
「救えないバカみたいだな。お前ら、やるぞ。」
「おーけぃ」
「おう」
「……ん」
といっても、その言葉はセヴン・デッドリー・シンスには届いていない。
(今のはなんだ?見えないうちに殴られた?ーああ。わかった。今体が人化の状態だからユニークスキル「空間把握」が発動してないのか……理解した理解した)
「立派にドラゴンの籠手なんてつけてよ。ん?ちょっと待てよぉ。お前、獣人か」
「そうだが」
どっから見ても僕は獣人だろう?
「ははははっ、おいお前ら!こいつ、髪の毛以外頭に何も生えてないぞ!」
「おいリーダー。ってコトはヨゥ」
「俺らで処理していいってことか!」
「……やりがいがある」
その時、少女が声を上げる。
「……っやめて!」
「まだ喋れたのか?邪魔だ」
「……殺しておく」
「任せた」
つまりこの流れでいくと僕を殺そうとしているってことか……?
この頭の角を隠すの、頑張ったんだぞ。
まあいい。とりあえず一旦冷静になって。
「人竜化」発動。これで竜の時のスキルが使える。
とりあえず、HPを−999999(ー999999)にしといて、「エネルギー停止結界」とユニークスキル「時空把握」を発動しておき、あと「見て見ぬふり」も発動。
ああー。まだ周りに20人ほど護衛がいるなぁ。でも僕のこと認識できないでしょ。
さて、次にあの女の子に「枯れ散る回復」と「怠惰(極)」と「エネルギー停止結界」を付けとけばいいか。あと「見て見ぬふり」も発動。これで相手は彼女も認識できなくなる。
「おい!お前ら、あいつらが消えたぞ!どこにいる!」
「……リーダー、あれも……いなくなった……」
「くそっ探せ!我ら獣種の恥だ!出てこい!」
草むら、木の影、果ては地面からも獣たちが出てくる。まあわかってたけどね。そうだねぇ。恐怖を植え付けるにはこんくらいで十分かな。
「悪魔の取引」発動であいつら全員の「恐怖」を3倍にしてやろうか。
「真似」発動、相手の恐怖するものを「『EX』ワープダークブレス」で真似る。
そのまま全ての敵の目の前でちょうど腹の位置で発射!ただし出力は最低で。
そして────その場にいるものは、僕以外全員地に伏せた。もちろん口から泡をふきながら。
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俺は「虎狼痢」を使い始めたばかりが、ユニークスキルだからか扱いが他のスキルよりもやりやすい。
でも、ユニークスキル「虎狼痢」は隠蔽之魔術「遊場創生」を発動している、かつその領域内にいないと発動しない。
だが、前の戦いで「石火Ⅹ」の「一時スキル吸収」を使えば、ユニークスキル「虎狼痢」が「石火Ⅹ」のエネルギーに取り込まれる。
ここで、だ。なぜ俺はこのエネルギーを放出させなかった?
今ままで何度も行ってきた「石火」のエネルギー放出、それは莫大な熱量を保有している。その上、「石火」の熟練度(仮にそう定義しよう)もⅩに至った俺ならそのエネルギーの操作も容易い。
まあ、今更そんなことをぐだぐだ呟いてもしょうがない。
「やるか」
使えるはずだ。「電光石火(黒)」発動「スキル吸収」を軸に「「虎狼痢」吸収」。
おっと?なぜか「一時スキル吸収」ではなく「スキル吸収」となっている。まあ今はいいか。
『熟練度が一定に達し得たことにより「電光石火(黒)」をパッシブスキルへと変化させます』
そのまま「エネルギー生成速度上昇」「エネルギー循環」発動。
そしてこの戦いが始まった時から部屋の至る所に敷き詰められた質量を持たない「分身」。
それらを体に取り込み、エネルギーを練る。
「なんか補助してくれるものが欲しい……。そうだなぁ弓とかどうだ?」
隠蔽之魔術「遊場創生」の一部を手に取り、弓を模る。
俺と同じくらいの大きさの弓が出来上がってしまった。
それもただの弓ではない。「創糸」で的に引っ張られるようにし、あと「光礫」で相手の目を眩ませる効果も付けた。そうだ、「念動Ⅴ」も付与しておこう。これで周りの空間ごと巻き込んでどんどん加速してくれるはずだ。
「電光石火(黒)」によって生成されたエネルギーを空間抵抗が少ないような形に仕上げ、矢として弓に番える。
『熟練度が一定に達したことにより「射的」を取得します』
『熟練度が一定に達したことにより「スキル付与(創作時)」を取得します』
『熟練度が一定に達したことにより職業が武士から狩人へ変化します』
『一定条件に達したことにより「黎明」の第二形態、「亭午」を解放します』
『一定条件に達したことにより「移動抵抗減少」を取得します』
『許可が降りました』
『一定条件に達したことにより焔禍のスキルを継承します』
『一定条件に達したことにより「猿眼」を取得します。他のスキル取得までは少々時間がかります』
うわっ。いろいろな情報が飛び込んできた。ただ、その中で聞こえてきた「スキルの継承」。
これはいける。「猿眼」を継承したのか。
──最高だ……。
おっと。無駄話をしすぎてしまった。相手は空間ごと食おうとしてきている。
だが、残念。
俺の隠蔽之魔術はそんなんじゃ破れないぞ。
「射的」発動。相手の身体の至るところに赤い印が現れ、的のようだ。
「的」の上にはそれぞれ得点が示してあり、「看破(覚醒)」を発動すると、点数が高いところが弱点と化していることがわかる。
「チートだぁ……。弱点を造るなんて」
一応保険としてエネルギー放出を自分が見えない範囲全てに埋め尽くす。もちろん「「虎狼痢」吸収」済みだ。
これで準備は完了。
弱点を目掛け、そのまま…………放つ!!
だが、そんな簡単に行ってくれるはずもなく、空間全てを飲み込む深い闇が現れ──そして、見事に消えた。
「うっし。俺の攻撃の方が速かったな」
──攻撃を盾で防がれると嘆く武人はいくらでもいた。しかし、盾で防ぐよりも早く攻撃を繰り出すことを成し得た者はそれこそ人外だろう。
「まあ、簡単だったな……?」
GF46-Bの亡骸が地面に吸収…………ではなく、さらに奥の扉に吸収される。
扉に描かれた模様に、GF46-Bだったものはドス黒い粒子となって吸い込まれてゆく。
「看破(覚醒)」発動。「魔法」発動を確認。
「脳」発動。「ニゲル」の召喚を提示する。という文言が頭の中に浮かび上がってくる。
「「図鑑」発動!ニゲル召喚」
「キューイっ(ニゲル参上だよっ)!」
……声まで聞こえてくるようになった。ちょっと病院に……って今はそういう場合じゃない。
「頼む、ニゲル!今から来る攻撃を防いでくれ!任せた」
「キュキュゥィっ(任された)!」
そうだ、「黎明」の第二形態の……「亭午」だ!「黎明」を「亭午」化。
変化した「黎明」、「亭午」は新たな姿をその場に現す。
それは2振りの短刀だった。
片方は禍々しい赤褐色、もう片方はこの世を超越した魂色とでも表そうか、そしてそのどちらの柄にも骨(と思われるもの)が使われている。
赤褐色の方は「血前刀」、魂色の方は「魂後刀」。2振り合わせて「亭午」。
『一定条件に達したことにより、「黎明(亭午)」に「回収」を付与します』
肌で感じる。
今回使うであろう新たな相棒を手で握りつつ、目の前からゆっくりと歩いてくる敵を見据える。
これは洒落じゃない。全身全霊で対処しないと…………負ける。
だが、こういうものこそが俺が欲したものだ!
──反応すらできなかった。
風が揺らぐ、と同時にドンっと強い衝撃が伝わる。
だが、あくまで衝撃だ。
パッと外を見ればわかる。
これを防げなければ今の俺でも即死だろう。
頬を冷や汗が伝う。
だが、まずは俺の相棒への労いだ。
目の前には全方向から出現した棘の山と、それらを全て結界で防ぐニゲルがいた。
「よくやった!ニゲル」
「キュウ(やった)〜!」
俺は気を引き締める。
これだけで攻撃が終わるはずがないからだ。
次はどこから来る?
どこから飛んでくる?
どう防げばいい?
だが、俺はまだ心の片隅で「魔法」を侮っていた。
だって、何もないところから出現したことを見逃してしまったのだから。




