十六:始まり開け春一番
この星、サガクムシンの上には多くの生物が過ごしている。
そして、その生物についてのさまざまな研究が行われている。
さて、このような研究をする上で必ず行き着く壁がある。
なんだろう。そう、原初の生物とは一体どうやって生まれたのだろう?
一応原初の生物は球が2つ重なり合った形をした浮遊生物だったことはもうみんな習っただろう?
さて、その生物をなぜ生み出したのか、いや、そもそも誰が生み出したのか。どの研究結果も結局はこれに行き着く。
生物が生物を生み出した……これだとその生物もさらなる生物によって生み出されたことになってしまう。循環しているね。
ではこの星が生物を生み出した……残念ながらこの星に含まれている生物と大地に共通点はあまりなさそうだね。
じゃあ、神が創造したとするなら……神はいないから証明しようがないね。と言いたいところなんだけど、そんなことはない。
大体1900年くらい前に光が差し、怪異、そう、新たな生物が生まれたんだ。
彼らはどんな生物よりも基礎のスペックが高いんだけど、「神の悪戯」によって彼らが生まれたとしたら?
彼らと僕らの戦いを神が娯楽として鑑賞していたら?
まあでも、結局まだ生物が生まれた理由はわからない。いつかわかる日が来るといいなあ。僕はそう思ってるよ。
〜とある研究室の教授の講義の記録 より引用〜
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「えっと、あと1階層で終わりなんだよな。実感が湧かないな」
「主の攻略の速度は異常だと思う」
「そうなのか?主人のことに関して口出しする気はないが、あれほどなら我でもいけるぞ」
「いや、主は速度が異常なのだ。一瞬で殺すのをなん度も繰り返してるからな」
「おっ、そんなに褒めてくれて、お前の主は嬉しいぞ」
ポカっ
「あてっ」
「これだから主はすぐ調子に乗る」
痛いな〜、これだからEXランクは……ん?待てよ?EXランクってことは…………今のポカっで人殺せたりする……?恐ろしい子。
さて、こんな茶番もやめやめ。疲れも取れたことだし塔最上階層の攻略だー!
「「「おー!!」」」
ノリいいな
とりあえず「電光石火(黒)」の効果が知りたい。
実験とか言ってる場合じゃないとは思うけど、試してみよう。
いつも通り(例外はあったが)例の結界を壊す、と同時に「遊場創生」発動。
出し惜しみはなしだ。
前回はこれを使うタイミングをミスったおかげでかなり苦戦したからな……。
そして俺は眼前の敵を、いや、敵の一部を視野に入れる。
なんだこれは?
言いようのない不安が体を襲う。
鳴き声、と言っていいのかわからないが、声が聞こえてきた。
くるククrくうっるるるっるうる…………………………食う食う食う食う食う食う
一瞬だが、「操作返し」と「状態異常耐性」を持っている俺が背筋にゾクッとしたものを感じた。
即座にその場から離脱。
「脳」と「遊場創生」、「電光石火(黒)」によるエネルギー放出の引き継ぎのおかげで、ギリギリ攻撃を捉えられた。
巨大な触手が空間ごと貫く。
「看破(覚醒)」発動。「刺突(神通力強化)」発動を確認。
どこにいる?あんなに大きな巨体だったものがどこにいるのかすらわからないだと?何が起きた?
「っそこか!」
後ろを振り向くと、そこには小さなコウモリがいた。
「鑑定」発動。
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名称:GF46-B
種族:怪異種クリエイツ
職業:名称保有 守護者
詳細・・・・・・神出鬼没かつ強力な怪異。神により造られた全24クリエイツの第1作目。クリエイツの内、12作目の「LVbm」と5作目の「UBcaos」は討伐済み。全てが討伐された時、終わりへの始まりの扉が開く。
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「詳細が抽象的すぎるっ!?」
くそっ、「鑑定」が意味を為してない。
「電光石火(黒)」によって流れが変わったエネルギーを感知する。
今度は……上か!
上を見上げると、俺の100倍以上の大きさの巨体が降ってくる。
咄嗟の判断だった。
【月白布 / 擦 / 守界】
俺の周りにやわらかい、それでいて凛とした雰囲気を纏わせた布が巻き付く。
まさに月の名を冠する布の鎧だ。
ふわぁぁぁんん
相手の攻撃は全て受け流す。
「じーさんのあれか!」
俺は先の戦いを思い出す。
だが、相手もそこまで弱いわけではない。
「はははっ、大技が来るぜこれは。」
「看破(覚醒)」発動。「晴天(神通力強化)」発動による能力2倍を確認。
「鬼が出るか蛇が出るか……。」
「看破(覚醒)」発動。「霹靂(神通力強化)」発動を確認。「晴天(神通力強化)」が発動していることより連撃「青天の霹靂」発動を確認。
天井だった場所が晴天に置き換わり、全てを雷が埋め尽くす。
避けなければ、いや、避ける場所がないっ!?
いや、待てよ。
なぜ逃げる必要がある?
この雷、「電光石火(黒)」で操作できるのでは?
「電光石火(黒)」発動。雷のエネルギーを支配する。
ああ、分かる。
これは魔媒素を介することによって雷という概念を運び込み、現象として再解凍するスキルだ。ここで雷を構成する概念を覗いてみよう。
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〈スキル「青天の霹靂」の構成〉
#「晴天」発動済を確認した後
①魔媒素による魔電生成
②魔電のプラスとマイナスを強制的に分離
③プラスを目的に纏わり付かせる
④魔電にエネルギを注ぎ込み発射
⑤その過程で空間と擦ることによって出るエネルギーをさらに溜め込み、加速
⑥障害物に触れた瞬間、空間に穴を開け、無理やり通す
⑦障害物をエネルギーとして捉える
⑧目的に触れた瞬間、全てのエネルギーを一点に絞り込み、目的を貫く
⑨ついでに目的をエネルギーとして取り込み、目的の消滅まで持続する
(これらを「晴天」によりさらに強化)
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ここの目的を「書き換え」し、俺ではなく怪異、GF46-Bへ設定。
主導権は俺が握った。
「青天の霹靂(神通力強化)(変換済)」を俺が発動。
その瞬間「看破(覚醒)」発動。「移動速度上昇(神通力強化)」発動を確認。
俺ごと空間に穴を開けさせるつもりか。
だが残念、改竄内容には、「発動者を避ける」ように設定した。
つまり、お前には自分自身によって強力になった攻撃が大量に刺さ…………ってない?
天井を埋め尽くすほどの雷は全てあいつを貫こうとするが、それが喰われている。
ふふふふふううううう食った食った食った食ったくったくった
再び背筋が冷え込むような声が響く。
だが、習慣を何度かこなせばある程度は落ち着く。
「手札がよくわからなくて勝てそうにないぜ……」
いや、ほんと。全然勝てる気が…………ちょっと待て。
なんで俺は思いつかなかったんだろう!
これを使えば状況は一気に好転する。というか、なんでこんな簡単なことに至らなかったんだろう。
先の戦い、あれができたのだからもちろんこうすることもできた。
考えがいきなり天から舞い降りてきた気がする。
いや、これは最早考える考えないの問題じゃない。
「脳」をフル活用してあれの使い道を模索するべきだった。疲れていたからしょうがないとはいえ、流石に気づくべきだった。
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スキル名称:「電光石火(黒)」
スキル種類:支援系
スキル詳細・・・・・・それは雷光であり、火花である。それは全てのエネルギーを司り、闇の光を纏う。全ては廻る。黒き光よ全てに安らぎの闇をもたらせ、終わりへの道を繋げよ、ラストサバイバルを生き残れ。廻レ廻レ。
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ああ!答えがもう目の前にあるじゃあないか。
じゃあな。これで俺は塔を踏破する。
くるくるくるrくるるるるるrくっrる???
あの怪異まだ鳴き続けている。
「お前が何もわからない間に終わらせてやる」
GF46-B。お前は別にそこそこ強い雑魚だったようだ。
いや、相手が悪かったのか。
まあ、兎にも角にも今のお前にこれを止める術なんてないはずだぜ。
決着をつけよう。
これで終わりだ。




