十:未だに止まぬ梅風よ
さて、まずは「空間生成」と「遊場開始」を合成するか。
多分「空間生成」ってスキルはわざわざ俺に与えられた物なんじゃないかと思う。
まず四次元を「石火Ⅷ」で創り出そうとするのは俺だけなんじゃないのかなあ。
いや、流石に自惚れか。
というか、「遊場創生」ってなんなんだろう?
まあいつかわかるだろう!
あともうひとつ思ってることがあって、誰かから行動を監視されてるような気もする。
そうじゃないと隠蔽之魔術の割には見つかりやすすぎる。
いくら俺が死闘を演じたとしても、この世界には俺以上の死闘を舞っているやつなんていくらでもいるはずだ。
「しっかし変だな。記憶が失われてる気がする」
「ああ、私もそれは思ったが」
『システムの領域に障害を及ぼす可能性がある会話として認識不可会話No.439として脅威度G認定で登録しました』
『施行中』
『成功しました。この会話を世界から忘却させます』
「あれ?なんの会話してたっけ」
「ふむ、おかしなことに私も思い出せない。まあいいか」
「だな」
……ちぐはぐな会話をしていることに、気づくことは無かった。
さて、合成するか。
「空間生成」と「遊場開始」を合成!
『「空間生成」と「遊場開始」を統合します』
『「遊場創生」を取得しました』
あれ?おかしいぞ。
スピードが上限の999999超えてるじゃないか!
もしかして俺のスピードだけ特別だったのかなあ。
最近は相手の速度が酷く遅く感じると思ったけど。
本当は「雷纏」っていうスキルを取得したいのだが、ptが足りないみたいだねえ。
なんか「石火Ⅷ」と合成できそうな気もしたのだが。
まあ、今回は「状態異常耐性」で妥協しよう。
このスキルはかなり稀だ。
普通は「毒耐性」やら「麻痺耐性」やら1つの属性に縛られることが多いからな。
『「状態異常耐性」を取得しました』
まだ120000ptも残ってるんだ。あと「光礫」と「創糸」と「操作返し」も取得しよう!
『「光礫」を取得しました』
『「創糸」を取得しました』
『「操作返し」を取得しました』
こんなもんでいいか。
さて、あと92000pt、何に使うかって聞かれたらもちろんスピード上げだよね!
まだ上げられることを俺は今知った。僥倖だ。
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*スピード: 1109203(+999999)
↑1up 10pt
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なんかもう上がり幅が少ないなあ。
「なんかもう主がおかしいからそう思ってしまうだけなのでは?」
やっぱりかあ。
ん?
「あれ?なんで俺が考えたことがわかるの?」
「さっき口に出してたぞ」
おっと、これは失態だな。
よーし。
強化は完了したからな。
次何しよう?
そうだ。
上の階層に上がったらあの石の数字が変化してるか確認しよう!
——第71階層へやってきた。
目の前には、羊がいた。
そう、羊がいた。
「え?なんで獣種がここに?」
とりあえず「鑑定」を発動しよう。
大丈夫なはずだ。
「看破」もあるからな。
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名称:なし
種族:怪異種フェイクシープ
職業:特異
詳細・・・・・・おとなしい動物の姿を真似ようとした結果、羊を選び、相手を油断させようとするものの油断されたことはない。相手のどれか3つの身体能力を自分の身体能力に上乗せする「便乗」を取得している。特異なので、身体能力が2倍(常に)。
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「「あっ、ちょっとかわいそう。」」
「サユノマサ?お前「鑑定」使えたのか?」
「いや、「鑑定」じゃなくて認識できるものならなんでも把握できるという「風の便り」というスキルを取得しているのだ。」
「……俺の全てにおいてサユノマサに劣っているのではないか?」
あ、顔を背けられた。
まあでも、弱そうだなあ。
名称保有ほどじゃないにしても今の俺なら多分余裕で勝てるな。
「石火Ⅷ」発動。
なんと「黎明」にも纏わせられるというのが最近わかったのだが、今こそその出番だな。
「黎明」と右足、両腕に集約。
そのまま突っ込む。
ザン
音が鳴り終わった頃にはもうフェイクシープに首はついてなかった。
「ふぅ。スタミナがより多く使えるって素晴らしいな」
そうだ、と、石に刻まれた数字を確認すると……なんと30から29へ減っていた。
「これはサユノマサの推測が当たったってことかなぁ。やっぱすごいな」
「ふむ。これくらいならできて当然なのだ」
おっ、なんか誇らしげだ。
——わしゃわしゃ
「……っ!?な、何をしている!」
「いや、なんか褒めて欲しそうだったから、つい」
「むぅ」
「そうカッカするなって」
「ふんっ」
あら、顔を背かれてしまった。愛いやつめ。
でも口元が少しだけ緩んでいるのは気のせいじゃないだろう。
まだ出会ってから少ししか経ってないが、俺はこいつの纏う雰囲気を案外好んでいるのかもしれないな。
さて、じゃれあいもここまでにして
「早く登ろうぜ。なあニゲル」
「キュキュッ」
「あっ、私の二ゲルが……」
そんな顔で俺を見るな。
そんな風に時々休憩をとりつつも上がってゆく。
「なんか第七十階層辺りから相手が強くなってるよなあ」
「ふむ、確かに主の言う通りだな」
まあでも、石に刻まれた数字はもう残り3だ。
「さあて、今は確か第九十七階層だっけか?俺の勘だとこれはそれなりーに強いやつが出てくるぜ」
『挑戦者の能力を参照します』
『確認が取れました』
『挑戦者に相応しい怪異を生成します』
「ん?なんか聞こえたか?」
「いや、私は特に何も」
今なんか聞こえたような気がしたのは気のせいかな……
ぐおん
と、空気が一瞬不可思議な動きをした。
「ははは。ついにお出ましかい?それはドラゴンの真似か?。いや、どうやらお前はどうやら全然違うものらしいな。訂正するぜ、こんにちは。エセ世界樹さん」
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名称:なし
種族:怪異種オブリーネムス
職業:特異
詳細・・・・・・忘れ去られた森の形をした怪異。人種、もしくは獣種がその存在を認識することは不可能と言われている。自然界の物を生成、操作することができる「ネムス」を取得している。また、このモンスターの特性より、認識されてない場合ライフとガードが毎ミョウ元の1%ずつ増える。特異なので、身体能力が2倍。
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ほほう、特性なんてものは初めて見たな。
なかなか厄介そうだか、別にそこまでの強敵ではなさそうだ。
若干期待外れだな。
強いて言うなら認識されないという点はかなり強いと思うが、攻撃を仕掛けた瞬間に気づかれるのではないか?
はてさて、この認識されない、という強力な武器は「ホンモノ」なのか「ハッタリ」七日、どっちなんだろうな?
流石に鑑定や看破はここまでは教えてはくれないからな。
では、いざ、尋常に参る。
ぐわんぐわんぐわんぐわん
くそっ、さっきからする耳鳴りみたいなやつはなんだ?
集中できない。
だがまあ、これくらい精神統一すればなんとかなる。
腹式呼吸を繰り返し、刀の塚を手で一回転させる。
これが習慣だ。
俺は刀を構えて、オブリーネムスへ斬りかかる。
そう、残念ながら、認識できないという能力は俺の「石火Ⅸ」を下回るようだな。
「石火Ⅷ」が「石火Ⅸ」になったことで、「思考」を併用しつつエネルギー放出の細かい操作が可能になった。
また、俺だけでなく、俺が認識したものならなんでも再現できるようになった。
そう、「石火Ⅸ」というスキルは、エネルギーを別のものに完全に変換することを可能とするのだ。
これはまさしく等価交換といえよう。
さっき、俺はエネルギー放出をこの部屋全体に100回行った。
さて、結果はどうだったと思う?
そう、何も反応しなかったのだ。
俺の目論見通り。
俺は相手がエネルギーを感知して反撃する可能性があることを考え、わざとエネルギーを放出しない場所をつくった。
簡単に言えば、今相手はちょうどそこにいるということだ。
そして先の耳鳴りの正体も判明した。
「さっきの音はお前が意図的に作り出した空間だろ?逃げ込むためにな。」
「看破」発動のおかげで気づいたこと。
それは、先ほど感じていた違和感、それが「忘却空間」という名のスキルであることだ。
そのスキルはそこにあるはずの空間を間隙として認識させる、いわゆる精神操作だ。
だが残念。
「俺は「操作返し」というスキルを持っているから、多少の影響は出るものの、今度はお前の方がその空間を認識できないだろ?」
つまり、今この瞬間をもって認識阻害はもう聞かないどころか弱点になってしまった、というわけだ。
こいつは元々、この特性に絶対的な自信を持ってたらしいからな。
スキルにばかり頼るのも良くないっていう教訓だな。
まあ俺は別に「黎明」一振りあれば別に困ることは何もないがな。
さて、特性に頼りすぎたオヴリーウィオーネムスさん?
決着をつけようか。
まあ
「俺がお前に負けることなどあり得ないがな」
刀を構え直す。
お前の位置はもうわかっている。
「精々死ぬまでの時間をカウントダウンするくらいはしてろよ。何もさせてもらえずに死ぬなんて可哀想なことを俺が今からする訳だからな」
今から俺が放つのは「石火Ⅸ」と「念動Ⅴ」を合わせた技。
さて、お前はどのくらい持つのかな?




