地獄の鬼ギルド登録をする
異世界冒険者ギルドへの第一歩
兵士たちの案内で砦に到着した大嶽丸は、その場所の賑わいに驚きを隠せなかった。砦には防壁が張り巡らされ、塔の上には見張り台が設置されている。多くの兵士が訓練をしており、荷物を運ぶ商人たちが行き交い、まるで一つの街のように活気に満ちていた。
「ここが砦か…。地獄とはまるで異なるな。」
大嶽丸はその光景に少し感嘆しつつ、異世界に来たことを改めて実感していた。
一緒に歩いていた兵士の一人が振り返り、大嶽丸に話しかけた。
「砦の中で記憶を取り戻す手がかりを探すのもいいが、まずは身の安全と生活を確保するべきだ。冒険者ギルドに行くのはどうだ?どこから来たのか分からない者でも受け入れてくれるはずだ。」
兵士の助言を受け入れ、大嶽丸は冒険者ギルドに向かうことにした。
冒険者ギルドの建物は砦の中心部にあり、木と石を組み合わせた威厳ある外観をしていた。中に入ると、大嶽丸は初めて見る光景に息を呑んだ。
広いホールには多種多様な者たちが集まり、それぞれの依頼を受けたり、酒を飲んだりしている。耳の長い美しいエルフ、猫耳と尻尾を持つ亜人、体躯の大きな獣人など、地獄や人間界では見たこともない種族が共存していた。
「ここは本当に地獄とは違う世界だ…」
大嶽丸は改めて自分の置かれた状況を実感し、心の中で決意を新たにした。
やがて彼は、ホールの一角にあるカウンターに目を留めた。そこでは若い女性が冒険者たちの話を聞きながら手際よく対応している。
カウンターに近づいた大嶽丸は、女性の一人に声をかけた。
「すみません、冒険者として登録したいのですが。」
その女性――整った顔立ちに明るい笑顔を浮かべたギルド嬢が、親切そうな声で答えた。
「ようこそ、冒険者ギルドへ!まずはギルドのルールをご説明しますね。」
彼女は冒険者ギルドの基本的な仕組みを説明した。
「冒険者にはランクがあり、最初はFランクからスタートします。最高ランクはSSSランクです。依頼を受けて達成すれば実績が認められ、ランクが上がります。ただし、冒険者は命を懸ける危険な職業でもありますので、その覚悟が必要です。」
大嶽丸は静かに頷きながら、その説明を真剣に聞いていた。
さらに彼女は、初めての簡単な依頼として「角付き兎」の討伐を提案した。
「角付き兎はこの辺りでは数が多く、討伐依頼が頻繁に出ています。ちょうどいい初心者向けの仕事です。小さく見えても、角で突進してくるので注意してくださいね。」
初めての依頼と装備の準備
依頼を受けることを決めた大嶽丸だったが、ギルド嬢に指摘された。
「その…失礼ですが、武器はお持ちですか?」
彼は一瞬考えた後、首を横に振った。
「いや、何も持っていません。これまで己の身体ひとつで戦っていました。」
ギルド嬢は驚いた表情を浮かべながらも、親切に案内してくれた。
「でしたら、ギルドでは簡単な武器の貸し出しを行っています。初心者には棍棒や剣が人気ですよ。」
彼女に連れられてギルドの武器庫に入ると、そこには簡素だが頑丈そうな武器が並んでいた。大嶽丸はその中から棍棒を選び取った。
「これは扱いやすそうだ。これで十分だ。」
武器を手に入れた彼はそのまま砦を出て、角付き兎討伐のため森へと向かった。