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バカと呪いと魔法学園 ~魔法を知らない最優の劣等生~   作者: 出雲大吉
第2章

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第080話 わからないのは当人達だけ


 木曜に確認することを決めた俺達はジョアン先輩と別れ、男子寮でアンディ先輩と別れた。

 そして、家に帰ると、すぐに隣の部屋に行く。


「トウコー」


 扉を開けながら声をかけると、トウコがベッドでポテチを食べながら漫画を読んでいた。


「なにー? あ、ノックしろー」

「はいはい。ちょっといいか?」


 ノックをしつつ、聞く。


「んー? 薬草採取デートはどうだった? 熊でも出てきた?」

「いや、狼すら出てこなかった。シャルがキャラメルマキアート味のポーションを作ったからお前にやるってさ」

「おー! できたのかー」


 トウコがベッドから起き上がった。


「ただ湯煎した方が美味しいんだってさ」

「キャラメルマキアートだもんね。よし、早速、試してみよう」


 俺達は部屋を出ると、1階に降りていく。

 そして、リビングに入ると、父さんがパソコンを操作し、母さんがテレビを見るといういつもの休日の風景だった。

 俺達はそんな日常の風景をスルーし、キッチンに入る。


「湯煎だっけ? 電子レンジじゃダメなのかな?」


 確かにそっちの方が早いし、楽だろう。


「シャルが湯煎って言ってたしなー」

「電子レンジだと効果がなくなるのかな?」

「それならまだしも爆発したら怖いな」


 謎の液体だし。


「会長の言う通りにしておこうか……ポーションなんて謎の液体だし」


 トウコがそう言いながら鍋を取り出し、水を入れていく。

 すると、母さんがキッチンを覗いてきた。


「あなた達、何をしているんですか?」

「これを湯煎する」


 そう言って、茶色っぽいポーションを見せる。


「何ですか、それ?」

「キャラメルマキアート味のポーション。シャルが作った」

「キャラメルマキアート……え? 作った?」


 母さんが驚いている。


「シャルの趣味。この前のコーラと一緒だな。温めた方が美味しいらしく湯煎しろってさ」

「ハ、ハァ? 変わった子ですね」

「いや、これはトウコがオーダーした。ちなみに、俺はこっちのソーダ味」


 そう言って母さんに透明のポーションを見せ、冷蔵庫にしまう。


「あまりシャルリーヌさんに負担をかけてはいけませんよ。至れり尽くせりじゃないですか」


 いや、それは俺もそう思うんだが……


「本人が楽しんでいるっぽいんだよね。今日もこれをもらったら次は何を作ればいいのってニコニコ顔で言われた」

「それだけ聞くと、会長がダメ女みたいだね」


 優しいだけでダメ女じゃねーよ。


「錬金術が趣味なんだよ。今日だってそのための薬草採りだからな」

「うーん……よくわかりませんが、ちゃんとお礼を言うんですよ」

「わかってるよ」


 ちゃんと言ってる。


「お母さん、湯煎ってどのくらいなのー?」

「貸しなさい。あなた達は料理なんてしないんだから私がやります」


 母さんがそう言ってポーションを受け取り、コンロの前に立ったので俺とトウコはリビングで座って待つ。

 そのまましばらく待っていると、母さんがコーヒーカップを2つ持ってきてくれた。


「こんなものでいいと思うけど……」


 母さんがそう言いながらテーブルに置く。

 カップに入っているのはやはり茶色っぽい液体で湯気が出ていた。


「いただきまーす」

「いただきます」


 俺とトウコはそれぞれカップを手に取り、口をつけた。

 ちょっと熱かったが、それでも飲んでいくと、口の中に甘い味が広がっていく。

 これはこの前飲んだキャラメルマキアートで間違いない。


「おー! すげー! キャラメルマキアートだ! めっちゃ美味しい!」

「確かにキャラメルマキアートだな……甘っ」


 やっぱり甘すぎるわ。


「おー……しかも、回復している気がする」


 トウコが言うように一口飲んだだけなのに今日1日歩いた疲れが取れていく気がした。


「母さん、あとあげる。俺には甘いわ。あとシャルが味を気にしていたから感想をちょうだい」


 そう言って、母さんの前に飲みかけのカップを置く。


「どれ……」


 母さんがカップに口をつけた。


「うーん……美味しいとは思います。ですけど、よく考えなくてもお母さんはキャラメルマキアートなるものを飲んだことがないのでわかりませんね」


 この人、全然、飲んでないな。

 逆に何ならわかるんだよ。


「お茶しか飲んだことがないんか?」

「母さんは紅茶が好きだぞー」


 父さんからいらん情報が飛んでくる。


「お父さんも飲むー? 甘くて美味しいよ」

「甘いのはパス」


 父さんがパソコンを操作しながら手を振った。


「そっかー。お母さんのために会長に紅茶味でも作ってもらいなよ」


 トウコが勧めてくる。


「なるほど。これがフランクとセドリックが言ってた親孝行か」

「絶対に違うねー。やるのは会長じゃん」


 まあね。


「シャルリーヌさんはすごいですね。これを売ればそれだけで一財産を築けるでしょうに」


 母さんが飲み終えたカップをテーブルに置きながらしみじみと言う。


「興味ないっぽいね。あくまでも趣味」

「趣味ですか……明らかに趣味を超えている気もしますが、本人がそれでいいならいいでしょう。ハァ……複雑」


 まーだ気にしてるっぽい。


「イヴェールがそんなに嫌いなん?」

「そういうことではありません。いや、イヴェールは嫌いですけどね。ただ、シャルリーヌさんが有能で良い子すぎて、心苦しいだけです。そして、勘当されろって思ってしまう自分の醜い心が嫌になるだけですね」


 醜いなー……


「シャルが可哀想だろ」

「それよりも自分の子がかわいいんです。ハァ……」


 母さんがため息をついて、項垂れた。


「どういうこと?」

「え? お兄ちゃん、わからないの?」


 トウコはわかるらしい。


「何、何?」

「知らなーい。会長に美味しかったって言っておいて。今週は会長の家に行くんでしょ」

「まあ……」


 うーん、わからん。


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― 新着の感想 ―
立場が無くなれば ジュリエットが嫁いで来ても大丈夫だから ハッピーエンドになって欲しいって言ってるわけよな このおバカはちゃんとわかってないけどw
[一言] 今は障壁を与えずに、離れ難い所まで関係を進めたいのは 本当は両家とも同じではないでしょうか? ロミオはともかくジュリエットの方が情熱に浮かされるタイプでないので、違う結末に至りそう。
[良い点] 今日の青空みたいに 清々しい朴念仁だね! (爽やか〜♪) (*´ω`*)
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