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バカと呪いと魔法学園 ~魔法を知らない最優の劣等生~   作者: 出雲大吉
第2章

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第046話 欲しい!


 リビングに降りると、4人分のカルボナーラがテーブルに置いてあった。


「あれ? 父さんは?」


 フォークを置いている母さんに聞く。


「ゴルフ」


 そういや朝から見てないわ。


「ふーん、せっかくシャルが来たのに」

「いきなり連れてくるのが悪いんです」


 事前に言ったら拒否るくせに。


「会長、カルボナーラで大丈夫?」


 トウコがシャルに聞く。


「ええ。好きですね」


 シャルが敬語だ。

 多分、母親の前だからだろう。


「前もファミレスで食べてたなー」

「自分は知ってるアピールうざい」


 トウコが早口で俺を切り捨てた。


「ケンカしない。さあさあ、座ってください。温かいうちに食べましょう」


 母さんが笑顔でそう言うので席につき、皆でパスタを食べだす。


「美味しいです」


 一口食べたシャルが微笑んだ。


「それは良かったです」

「私が麺を茹でたんだー」


 へー。

 珍しくトウコも手伝ったのか。


「急にお邪魔したのにありがとうございます」


 シャルは完全に余所行きだ。

 とはいえ、当然、学校の時のようにしかめっ面ではない。


「いえいえ。ちょっとびっくりしましたが、ウチの子の勉強を見てくださってるようで感謝の言葉しかありません。ツカサは魔法も勉強もあまり得意ではないですから……それなのに空間魔法を……土日なのに勉強まで……」


 すぐ泣くな、この母親……


「泣くんじゃねーよ。俺がとんでもないバカに聞こえるぞ」

「とんでもないバカ、コショウ取って。お母さん、味付けが薄いよー」


 俺も薄いと思ったので自分の分にコショウをかけた後にトウコに渡した。


「……無神経な兄妹でごめんなさいね」


 そう言って一口食べた母さんは首を傾げ、トウコからコショウを受け取る。

 そして、自分の分にコショウをかけると、シャルの前に置いた。


「とても美味しいですよ」


 そう言いつつ、シャルもちょっとだけコショウを振った。

 そして、4人で昼食を食べると、午後からも勉強をする。

 途中、母さんがコーヒーとケーキを持ってきてくれたので休憩を挟みつつ、集中して勉強できたと思う。

 とはいえ、相変わらず、呪学の方はさっぱりだ。


「うーん、むずいな。これ、試験に受かると思う?」

「無理だと思う。というか、私も無理ね。さすがに3年の授業で、しかも、呪学は特に難しい授業だから」


 じゃあ、俺は絶対に無理だわ。


「呪学のテストは受けなくてもいいかなー?」

「いいと思う。今は別の基礎学なんかに集中した方がいいわね」

「そうしよ」

「うん。じゃあ、今日はもういい時間だし、そろそろ帰るわ」


 時計を見ると、夕方の5時前だ。


「ありがとうね」

「いえいえ。いきなりすぎてついていけないこともたくさんあったし、あなたに色々と言いたいこともあるけど、トウコさんと話ができて良かったわ」


 不満たっぷりだな。


「急すぎたし、多少、無理やりだったなとは思うけど、そうしないといつまで経ってもトウコと話さなかっただろ」


 シャルとトウコが学園で話している光景が浮かばない。

 というか、シャルは立場上、人前でラ・フォルジュの人間であるトウコに謝罪するのは難しいだろう。


「ええ、そうね。それは認める。だから文句を言わないのよ。でも、できたら事情を説明してトウコさんを公園にでも呼んできてほしかったわね」


 それ、文句では?


「母さんが嫌だった?」

「色んな意味でね。ものすごい葛藤が見えたし、泣かれた時はどうすればいいのか、ものすごく悩んだわ」


 友人の家に来て、その親が泣きだしたらパニックだわな。


「すぐ泣くんだよ。気にするな」

「お母様の苦労が見えるわね……」


 シャルがそう言って立ち上がったので俺も立ち上がり、玄関まで見送る。


「ここでいいわ。また明日というか、金曜ね」


 金曜以外は学校で会うことはほぼないしな。


「今日はありがとう。またな」

「ええ。こちらこそ」


 シャルはにっこりと笑い、帰っていった。

 部屋に戻ろうと思い、振り返ると、リビングから顔を出した母さんと目が合う。


「ツカサ、こっちに来なさい」


 母さんが手招きしてきたのでリビングに入った。


「何?」


 そう聞くと、母さんが眉をひそめる。


「ツカサ……あの子がイヴェールの次期当主と言われていることは知っていますね?」

「知ってる」

「イヴェールとラ・フォルジュの仲が良くないのも知っていますね?」

「めっちゃ犬猿の仲って聞いた」


 皆、言ってる。


「……それなのになんで仲良くなったんです?」

「最初に学園を案内してくれたのがシャルなんだよ。それに呪学の授業も付き合ってくれてるし、勉強も見てくれている。めっちゃ優しい」


 しかも、美人。


「呪学もですか……そうですね。とても良い子だとは思います」

「というかさ、誰かと仲良くするのに理由がいるか? 小学生の時、クラスメイトとケンカしたらめっちゃ怒ってたくせに何言ってんだ?」


 隣人とは仲良くしなさいって言ってた。


「あなたはバカですが、とても素直で良い子に育ちましたね。お母さんとお父さんの誇りです」

「バカは余計だな」


 事実だけども。


「ツカサ……絶対にお婆ちゃんにシャルリーヌさんと仲良くなったことは言ってはいけません」

「言わないよ。小遣いがもらえなくなるかもしれないじゃん」


 由々しき事態だ。


「そうですね……」


 母さんがじーっと俺を見てくる。


「何だよ?」

「いえ……頑張りなさい」

「言われんでも頑張るわい」


 左腕がかかってんだぞ。


「何か欲しいものはありますか? 特別に買ってあげます」

「トライデント」


 めっちゃ欲しい。


「何か欲しいものはありますか? 特別に買ってあげます」


 買ってよー……


お読み頂き、ありがとうございます。

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