第213話 ジェミニ ★
私達は宙に現れた画面から演習場の様子を見ている。
ただ、最初の戦いは一瞬で終わったようだった。
「一撃か……」
「さすがトウコ」
「ホント、火力だけはあるわよね」
「とんでもないな……」
一瞬であれだけの高レベルの魔法を放てるのはまさしく天才だ。
おかげで対戦相手だけなく、審判までもが呆然と画面を見ていた。
ただ、2人だけが床を見ている。
瞬殺され、戻ってきた対戦相手だ。
「審判、終わったようだぞ」
そう言うと、審判が振り向き、戻ってきた2人を見る。
「そ、そこまで! 第一試合はアイン魔法学校の勝利とする!」
『お兄ちゃん、いえーい!』
『いえーい』
画面内では双子が仲良くハイタッチをしている。
「じょ、冗談じゃないぞ! あんなバケモノとどうやって戦うんだよ!」
一人の男がうろたえている。
「落ち着け、アルバート」
「そうよ。落ち着きなさい。あれだけの魔法は2度も使えないわ。おそらく、最大魔法を初手でぶつけてきただけよ」
まあ、そこは合ってるだろうな。
「それにしても……くっ、よし、速攻であの女を潰すぞ」
「ええ。アルバート、私が何としてでも魔法を止めるからその隙にやってちょうだい」
「おう!」
次の対戦相手であろう男女のペアが歩いていき、ゲートをくぐった。
「トウコしか見てないね」
ユイカがつぶやく。
「まあ、あれだけの魔法を使われたらな」
仕方がないだろう。
私でもそうすると思う。
「あの女がツカサに殺される未来しか見えない」
「どうだろ? 長瀬の坊ちゃんは女子を殴らんだろうしな」
殴らないだけだと思う。
あれは完全な強者なのだ。
「それでは第二回戦を始める……始め!」
審判がそう告げると、今度はトウコの方が後ろに下がった。
しかも、わざとらしく、背を向けて駆けだしたのだ。
すると、アルバートとやらが剣を抜き、トウコを追う。
『逃がすか!』
『フレイムアロー!』
アルバートが追い、杖を持っている女子が魔法を使う。
すると、トウコが端に追いやられてしまった。
「トウコがピーンチ」
「あー、トウコがー」
ユイカとイルメラは棒読みだ。
「接近戦を得意とするラ・フォルジュの嬢ちゃんに挑むか……アルバートとやらは勇気があるな」
「「え?」」
ロナルドの言葉に残っている男子2人が驚く。
すると、トウコが動いた。
『死ねぃ!』
トウコは杖を消すと、アルバートに突っ込む。
『くっ! 速いっ!?』
アルバートは剣を振ったが、空を切り、あっという間にトウコを懐に入れてしまった。
すると、トウコが飛び上がり、飛び膝蹴りをアルバートの顎にぶち込んだ。
『ぐっ!』
「アルバート! ロレナ、援護はどうした!?」
「え?」
「は?」
リーダーの男が驚いて振り向くと、そこにはロレナとやらがいた。
「あれ? なんで私……」
「君はツカサ君に首をひねられて死んだよ。ちゃんと対戦相手を見よう」
「え? いつの間に……というか、いた?」
ツカサ君は気配を完全に消していたんだろうな。
普通に歩いて後ろに回ってたよ。
『ばいびー』
トウコの声が聞こえると、全員が画面を見る。
そこには飛び上がったトウコの姿が映っており、蹴りがアルバートの顔面を撃ち抜いていた。
「アルバート!」
リーダーの男の叫びは虚しく、アルバートはそのまま倒れると、姿が消え、こっちの方に戻ってきた。
「2勝。15分か。美容院は間に合いそう」
「そうだな。審判、決まったぞ」
そう言うと、審判がハッとした。
「そこまで! 第二戦はアイン魔法学校の勝利とする!」
『お兄ちゃん、超いえーい!』
『超いえーい』
画面内ではさっきと同じように双子が仲良くハイタッチをしている。
「くっ! あれがラ・フォルジュの至宝か。本物のバケモノじゃないか。モーリス、どうする!?」
「どうもこうもない! やるしかないだろう! 行くぞ、ショーン!」
残っている2人の男子はゲートの方に向かう。
「あの双子と戦うなんて可哀想に」
「単品でも強いけど、組めば最強だものねー……」
「魔法大会では絶対に組まないから俺達はラッキーだな」
ツカサ君は絶対にジュリエットと組むし、トウコは因縁の2人に勝つためにユイカと組む。
でも、本来なら双子で組めばいいのは明白だ。
暴れ馬のトウコを抑えることができるツカサ君は遠距離魔法ができない。
でも、その暴れ馬がとんでもない遠距離魔法を使えるのだ。
そして、遠距離魔法を嫌がって、あの双子に接近戦を挑むのは自殺行為。
私もどんなにシミュレーションをしてもあの双子に勝つことはできない。
それだけあの双子は戦闘能力が突出しているのだ。
それこそ転移魔法に飛行魔法、そして、強力な上級魔法が使えるあのジュリエットが霞むくらいに……
「審判、来年からは勝ち抜き戦ではなく、星取り戦にするべきだぞ。そっちの方が盛り上がる」
「考慮しよう」
この言葉でもわかる。
いや、誰もがわかっているだろう。
次の戦いでモーリスとショーンが勝てる可能性がゼロだということは……
◆◇◆
目の前には最後の2人が立っている。
1人は槍を持った男でもう1人はユキと握手をしていたリーダーらしき男であり、帯剣していた。
「さすがはチーム戦でダントツの1位を取った学校だな。だが、我らは負けん」
「キースの町の意地を見せてやる」
2人は自分達の弱気を消すように啖呵を切った。
「降参せずに私達の前に立った勇気は褒めよう。しかし、無駄なこと。戦いには常に勝利の女神が付いて回る。そう、勝利の女神とは私のことなのだ!」
だからお前、シャルに負けたじゃん。
「女神はねーよ」
「お兄ちゃんはお義姉ちゃんが良いんだもんね」
「お前よりかはな」
トウコとシャルではなー……
『私語は慎むように……それではこれより対戦を始める……では、始め!』
最後の戦いが始まった。
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