第212話 必殺
朝食を食べ終え、準備をすると、寮を出る。
そして、男子寮と女子寮の分岐点でトウコと合流し、ジェニー先生の部屋に向かった。
部屋にはミシェルさんとジェニー先生、それに最後のペア戦に参加するメンバーとシャルが待っていた。
「これで揃ったわね。お嬢様、リーダーとして一言どうぞ」
ミシェルさんがシャルに勧める。
「前から思ってたけど、あなた、なんで私のことをお嬢様って呼ぶの?」
「クロエのが移ったのかな? まあ、気にしないで」
「あっそ。皆、ここまでよく頑張ったわ。一昨日とその前の完勝はすごかった。そして、ここにいる6人は完勝してきたメンバー……間違いなく、あなた達が当校で最強よ」
「私のところは会長だと思いまーす」
イルメラが手を上げた。
「ここまで来た以上、勝ちを目指してほしい。さあ、行ってちょうだい! そして、勝利を校長先生に報告しましょう!」
シャルは一切、イルメラを見ない。
「都合の悪いことは無視だよ……」
「いいから行って。もう時間よ。ツカサ、頑張ってね」
「頑張るわー」
俺達6人はゲートをくぐり、3回目となるホールにやってくる。
そして、3回目もすでに相手高は来ており、審判さんの前で並んで待っていた。
「アイン魔法学校の生徒達も並びなさい」
審判さんに促されたのでユキ、俺、トウコ、ユイカ、イルメラ、ロナルドの順番で並ぶ。
「これからペアによる勝ち抜き戦を行う。先に3勝した方が勝ちとなる。ルールは事前に配布した資料のように各校で行われている魔法大会のルールと同じだ。いいね?」
審判さんが俺達と相手校を見渡すと、全員が頷いた。
すると、ユキが一歩前に出る。
「このチームのリーダーを務める白川ユキだ。お互い、全力を出し、正々堂々と戦おう」
ユキがそう言って、相手のリーダーっぽい男に手を差し伸べた。
「あ、ああ。俺はジャスパーだ。遺恨なく、お互いの今を出し合おう」
ユキとジャスパーがスポーツマンみたいに握手をする。
なお、審判さんはものすごい怪訝な顔でユキを見ていた。
「ユキ、まともにできるじゃん」
握手を終えたユキが下がったので褒める。
「この試合はウチの弟や妹達も見ているんだ。私は家では真面目で頼りになるお姉ちゃんで通っているんだよ。だから今日は一切、ボケないし、殺意も消す」
いや、目を開けろ。
まずはそこからだ。
「できるの?」
「できない。だから私に回すな。双子で確実に仕留めてくれ。あと、私は午後から人と会う約束がある。1時間以内に片付けてくれ」
約束するなよ。
「あ、私も美容院に……」
ユイカもそーっと手を上げた。
「私語は慎みなさい。すでに中継されている」
「え……おい、審判、先に言え」
ユキが目を開き、殺気を前面に出す。
「ユキ、ユキ。弟ちゃんや妹ちゃんが見てるぞ」
「………………」
ユキが黙った。
「では、始める。審判は私が務め、ここからアナウンスする。降参は認めるし、降参したものを過剰に攻撃した場合は失格もあり得る。わかったかな、白川家の当主殿?」
「トウコ、ちゃんとするんだぞ」
審判に見られたユキはスルーして、トウコを注意する。
「する、する。審判さん、勝った場合はフィールドに残っていればいいの?」
「ああ、そうだ。そのまま待機してくれ。負けたチームはすぐに次の対戦する2人を送り出すこと。また、対戦しない者はここで待機となる」
なるほどね。
「よっしゃ! このスーパーエリートウコ様の実力を世界に知らしめてやろう!」
そのダサいあだ名が世界に知らしめられるだけだ。
「……では、最初の2組はゲートからフィールドに向かうように」
審判さんがそう言ったので俺とトウコはゲートに歩いていく。
対戦相手は男子のペアだ。
「2人共、頑張ってくれ」
「頑張れー」
「双子の力を見せるのよー」
「気負うなよー」
俺達は温かい声援を背にゲートをくぐった。
フィールドは学校演習場とまったく同じ形をしている。
ただし、当然、観客はいないのでちょっと寂しい。
俺とトウコと対戦相手は演習場の端から出てきたので中央に向かう。
「お兄ちゃん、あんましゃべんないね?」
「知的な感じでいこうかと……」
寡黙キャラ。
一貫して他人のフリをしているロナルドを参考にした。
「無理じゃん。顔に知性がない」
「同じ顔で何を言ってんだよ」
「あ? 私はあるから」
「ねーよ」
俺とトウコの足が止まった。
『兄妹喧嘩してないでさっさと中央まで来なさい』
審判さんの声が聞こえたので再び歩きだし、中央までやってくると、対戦相手と相対する。
『これより対戦を始める……では、始め!』
審判さんが開始の合図を告げると、対戦相手の男子2人が一気に距離を取った。
「様子見かな? スーパーエリートウコ様から距離を取ったぞ。トウコ、やれ」
そう指示を出すと、トウコが杖を取り出した。
「わははー! 世界最強の魔法使いであるこのスーパーエリートウコ様の魔法を食らうがいい! ニブルヘイム!!」
トウコが杖を向けると、対戦相手も杖をこちらに向けてきた。
しかし、対戦相手の姿は一瞬で見えなくなる。
トウコが魔法を放つと、前方は真っ白な氷で覆われた世界に変わってしまったのだ。
「ふはは! これがスーパーエリートウコ様だ! 私に敵う者なし!」
シャルに負けただろ。
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