第211話 恥ずかしい家
作戦かどうかはわからないが土曜の方針が決まったので家に帰る。
そして、ベッドでごろごろしながらゆっくり過ごしていると、ノックの音が部屋に響いた。
「何だー?」
さっきから隣がうるさいし、イルメラかなーと思いながら声をかけると、扉がガチャッと開く。
そこにはウェーブがかかった長い金髪の可愛らしいお人形さんが立っていた。
「ツカサ君、こんにちは」
「リディじゃん。どうした?」
本物のお嬢様と評判の従妹のリディ・ラ・フォルジュだ。
なお、偽物はトウコ・ラ・フォルジュ。
「遊びに来た」
遊びにって……
「外出は控えろよ」
「大丈夫。ミシェルさんに連れてきてもらったんだよ」
「へー……そのミシェルさんは?」
「下に行った。叔母さんと話があるんだって」
ふーん……
「隣から来たのか? あ、座れよ」
そう勧めると、何故かテーブルの前じゃなくて、ベッドに腰かけた。
「うん。トウコちゃんのお友達がいて、若干、気まずかった。あ、でも、知ってる人はいた。ユイカさんだっけ?」
リディはデート中に遭遇したユイカとユキは知っている。
「茶髪の巨乳はいたか?」
「きょ……!? い、いたかもー」
いたか……
「そいつはイヴェール派だな」
ノエルさん。
「え、そうなの? まあ、いるか……」
あれ?
「そんなもんか? 敵じゃない?」
「敵か味方で言えば敵だけど、ただの派閥でしょ? 別に気にしないよ。そこにイヴェールの人間がいたらびっくりだけど」
シャルがいるのはダメなわけね。
「リディもイヴェール派の友達はいるのか?」
「あまり大きな声では言えないけど、いるね。家がどっちの味方をしているかってだけだし、正直、形だけの家も多いよ」
ユイカやユキがそれっぽいな。
「そうじゃない家もあるわけだ」
「うん。要は派閥も敵対しませんし、相手方と仲良くしませんよっていうだけの家とすごく協力するよっていう家とに分かれているんだよ。ヨハンさんが問題になったのはランドローの家が後者だから」
なるほどね。
「ちなみに、イヴェール派のアントワーヌはさっき言った巨乳の家だ」
「きょ!? それ、やめようよ……ごめん。アントワーヌは知らない。逆に言えば、知らないってことは前者の派閥じゃない?」
ノエルはそこまでがっつりのイヴェール派ではないのか。
「なるほど。ちょっと勉強になったな。ちなみに、ミュレルは?」
クロエね。
「イヴェール派もイヴェール派。ナンバー2だよ。ウチで言うところのミシェルさんのアンヴィルくらいに深い家だね」
え? ミシェルさんの家ってナンバー2なの?
「そんなにか」
信用できるっていうのもわかるな。
「まあ、親戚だしね。前に聞いたけど、ツカサ君とトウコちゃんを抱っこしたことあるって言ってたよ」
「そうなん?」
まったく記憶にない。
俺達とミシェルさんは6歳違いだからそんなに離れてないんだが。
「うん。どっちかを抱っこすると、どっちかがよじ登ってくるって笑ってた」
「あー、その話、伯父さんや伯母さんからも聞いたことあるな」
というか、親戚からよく聞くし、両親からも聞いたことがある。
「ツカサ君とトウコちゃんらしいよね。あ、それでさ、対抗戦ってどんな感じなの?」
それを聞きたかったわけだな。
「敵が弱すぎてつまらん」
「そ、そうなんだ。ぶっちぎりで1位とは聞いていたけど」
「質も悪いし、やる気もないみたいだな。他所の町ってあんなにしょぼいんだろうか?」
「さあ? 私も他所の町は知らないからなー。明後日がペアで戦うやつでしょ? なんか中継されるらしいから家族で見るね」
見るの?
「婆ちゃんは寝とけって言っておいて。頭を抱えるかもしれん」
「……なんで?」
「俺ら、今のところ悪役路線で行っている」
「……なんで?」
なんででしょう?
ユキさんのせいじゃないですかね?
「うーん、よくわからん」
「よくわかんないのはツカサ君とトウコちゃんだよ」
従妹にこう言われる俺らよ……
「まあ、ハードルを下げて見てくれ」
「これ以上?」
すでに下がっているわけね。
「よし、リディ、遊ぼうか」
「簡単なのにして。実はものすごく眠いんだ」
あ、時差があったな。
「あっちは今、何時だ?」
ちなみに、こっちは昼過ぎ。
「朝の4時半だね」
そりゃ眠いわ。
「もうちょっと遅く来いよ」
「ツカサ君に会いたかったんだもーん」
あー、可愛い。
「トウコと交換できないかなー?」
俺、こっちの可愛いのがいいわ。
「仲良しなくせにー。ねえねえ、今日、泊まっていい? ツカサ君と寝るー」
「それは伯父さんと伯母さんとウチの両親に聞け。あと、寝るのはトウコとな。リディももう中学生なんだから」
「ちぇー。叔母さんに聞いてくる」
リディが立ち上がった。
「ついでにアイス持ってきて」
「わかったー。あ、そうだ。またデートしようよ。この前は不完全燃焼」
眠くてすぐに帰ったからな。
しかも、トウコが誘拐されるおまけ付き。
「対抗戦が終わって落ち着いたらな」
「やったー。じゃあ、ちょっと待っててねー」
リディはご機嫌で下に降りていく。
その後、ウチの親と伯父さん伯母さんから泊まる許可を得たリディは本当に泊まることになったので夜はリディとトウコと3人で遅くまで遊び、翌日も一緒に遊んだ。
とはいえ、さすがに時差のこともあるし、ずっとはいられないので翌日の早いうちに帰っていった。
そして、金曜も終わり、土曜になると、トウコと一緒に朝食を食べる。
「今日、最後の戦いがあるけど、お父さんとお母さんも見るの?」
トウコが父さんと母さんに聞く。
今日は休みなため、父さんもいる。
「見ませんよ。私はそういうのが好きじゃないんです」
「俺も見ないな」
両親は見ないらしい。
やったぜ。
「そっかー。優勝旗を持って帰るからね」
「いらんわ。というか、そんなものはないだろ。それよりも変なことをして目立とうとするなよ。お前達ときたらすぐに調子に乗るんだから」
「そうですよ。運動会の時なんかものすごく恥ずかしかったです」
俺達も日傘を差しているあんたが恥ずかしかった。
「大丈夫だよー」
「うん、大丈夫」
「「でも、年末までラ・フォルジュの家には帰らない」」
「「ハァ……」」
こら、俺達の芸をパクるな!
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