第209話 校内戦
俺とトウコは3人を残し、教室を出る。
「さて、トウコ。啖呵を切ったからには成果を出さないといけないぞ」
「もちろんだよ、お兄ちゃん。1時間もあれば余裕、余裕」
トウコはこの自信が良くないのかもしれないな。
まあ、それが長所でもあるし、自信のないトウコはトウコじゃないんだが。
「「――あ」」
「「ん?」」
声がしたので横を見ると、がたいの良い男子2人が20メートルほど先にいた。
「てめーは生意気なクソガキ!」
「見つけたぞ!」
2人の男子がこちらに向かって走り出す。
「うるせー!」
トウコは叫ぶと、猛スピードで駆けだした。
「なっ!?」
「来るかっ!?」
トウコが突撃してくるとは思わなかった2人が驚いて足を止めた。
「バカだな」
足を止めたらトウコの魔法の良い的だ。
ずっと思っていたが、他校の生徒はあまり戦いに慣れていないように思える。
選抜を真面目にしなかったからかこれでもトップ層なのかはわからないが、俺達の相手ではないだろう。
「死ねぇぃ!」
トウコは魔法を使う気がないようで突っ込んでいく。
どうやらバカはトウコもだったらしい。
とはいえ、トウコのスピードはさすがであり、あっという間に距離を詰めると、男子が拳を握り、トウコを殴る。
しかし、トウコはスライディングで躱し、小柄な体を利用して、男子の股をくぐると、後ろに回った。
「くっ!」
男が慌てて、振り向いたが、すでにトウコは飛び上がり、身を翻していた。
「何っ!? ぐっ!」
トウコはそのまま回転しながら回し蹴りを放ち、男の顔を蹴り抜く。
男は首が曲がってはいけない方向に曲がり、膝をつくと、うつ伏せに倒れ、消えた。
『ノイズ魔法学校のクラレンス君が脱落しました。ノイズ魔法学校はマイナス1ポイント、アイン魔法学校はプラス3ポイントです』
どうやって見ているかは知らないが、アナウンスが聞こえてくる。
「クラレンス! クソッ! 体術使いか!」
残っているもう1人の男子がバックステップでトウコから距離を取った。
「バカめー! ブリザード!」
トウコは手を残っている男子に向かって手を掲げると、自身の代名詞である氷魔法を使った。
「ぐっ!」
男は庇うように両手をクロスさせてガードしたが、その両腕から凍っていく。
「誰がクソガキだ! マリーアントワネットの生まれ変わりと評判のスーパーエリートウコ様の魔法で沈め!」
まったく評判ではない。
「クソがっ!」
男はクロスアームブロックをしたままトウコに体当たりを仕掛ける。
「ふっ、正面から突っ込んでくるとはまるで猪ね」
どうしてこいつは自分のことを客観的に見ることができないんだろうか?
「吹っ飛べ!」
男は左足に力を込め、勢いを上げると、トウコに突っ込んできた。
「死ねぇい!」
トウコはタイミングを合わせて、飛び上がると、無駄にムーンサルトを決め、男の顎をかち上げる。
そして、着地すると、拳を握り、ガラ空きのボディーに正拳突きをお見舞いした。
「がはっ!」
男子の身体はくの字に折れ、膝をついて前のめりで倒れた。
『ノイズ魔法学校のハミルトン君が脱落しました。ノイズ魔法学校はマイナス1ポイント、アイン魔法学校はプラス3ポイントです』
ハミルトン君とやらが消えると、またもやアナウンスが聞こえてくる。
「見たかー! これぞスーパーエリートウコ様だ!」
はいはい。
俺達は廊下を走っていき、階段までやってきた。
「トウコ、お前は下に降りろ。俺は上に行く」
「りょーかい!」
トウコが下に降りていったので階段を上がっていく。
「おい、クラレンスとハミルトンがやられたぞ! どうする!?」
「どうするもこうするもやるしかないだろ! 下だ! あっ」
「あっ」
階段を上がり終えると、2人の男子が階段のそばで悠長に話をしていた。
うち1人は俺達を挑発していた男だ。
「てめーか!」
1人の男子が激高し、殴りかかってきたので一気に距離を詰めた。
「ッ!」
「どいつもこいつも殴る時に振りかぶんなって」
そう忠告しながらみぞおちに掌底を当てる。
「ぐっ……」
男の腰が落ちたので足を上げ、かかと落としで男を地面に叩きつけると、そのまま消えた。
『ノイズ魔法学校のニック君が脱落しました。ノイズ魔法学校はマイナス1ポイント、アイン魔法学校はプラス3ポイントです』
倒してようやく名前がわかるのも何だな……
「ニック! てめー! よくもニックを!」
「お前ら、なんで同タイプでチームを組んでるんだ?」
「うるせーよ! 男は拳で語り合ってこそだ!」
俺、そっちの学校に行きたかったな……
「ふーん、じゃあ、拳で語り合おうじゃないか」
「少しはやるようだが、調子に乗るなよ」
男が腰を下ろして、構える。
その構えは図体の割に低く、多分、レスリングのタックルに近いことをしてくるのがバレバレだった。
「それ、女子にもするのか? ぱっと見は暴漢にしか見えんぞ」
「うるせーよ!」
男が簡単に挑発に乗り、まっすぐ突っ込んできたので前に出ている顔面に膝蹴りをお見舞いする。
「ぐぁっ!」
男は腰を落としたまま鼻血が出ている顔を両手で押さえた。
「そういえば、ウチの可愛い妹に死ねって言ってたな。お前が死ねっ!」
拳に魔力を込め、一気に振り抜く。
顎を打ち抜かれた男はそのまま前のめりに倒れ、突っ伏すと動かなくなり、消えた。
『ノイズ魔法学校のオズワルド君、リッキー君が脱落しました。ノイズ魔法学校はマイナス2ポイント、アイン魔法学校はプラス6ポイントです。試合はそこまでです。アイン魔法学校の生徒は元の位置に戻り、ゲートから帰還してください』
もう1人はトウコかな?
一緒のタイミングで倒すなんて双子のシンパシーに違いない。
「帰るか」
しかし、この対戦にシャルを入れなくて良かったわ。
非常に良くない相手だった。
いつもお読み頂き、ありがとうございます。
新作を投稿しております。(↓にリンク)
ぜひともそちらの方も読んで頂けると幸いです。
よろしくお願いします!




