第208話 美味しいのに……
俺達は時間になったのでゲートをくぐる。
すると、前と同じ審判さんと共にすでに相手の学校の5人が並んでいた。
「ほう……」
ユキが5人を見て、声を出した。
それもそのはずであり、5人は全員男子だったが、皆、身体が大きく、強そうだったのだ。
しかも、目つきも鋭く、ぱっと見は荒くれ者って感じがする。
「アインの生徒も並びなさい」
審判さんに促されたのでユキ、トウコ、ユイカ、俺、ロナルドの順で並び、ノイズ魔法学校の男子達と相対する。
「ふっ、女子3人に細い男子2人か。お前ら、よく21ポイントも稼げたな。相手高に尻でも振ったか?」
ユキの前にいる男が挑発してきた。
「私語は慎みなさい」
当然、審判さんが注意する。
「審判、少し黙るといい。こういうのも試合を盛り上げるためには必要だ。君は漫画や映画を見たことがないのか?」
ユキが何故か、審判さんを注意した。
でも、わかる。
ちょっと盛り上がってきた。
「……トウコ、何か言え」
「見た目で実力を判断するのは2流よ。さすがはノイズの町ね。本当にノイズだわ」
ひゅー。
さすがは中学の体育祭でヤジを飛ばしまくって、放送委員に名差しで注意されたバカだ。
「このガキ……殺すぞ」
「私達は魔法で勝負するのよ? その無駄な筋肉を氷漬けにしてあげるわ」
「まあまあ、トウコ。この試合はお互いの力をぶつけ、切磋琢磨し合おうという趣旨のイベントだ。ケンカ腰になるんじゃない」
このユキのセリフにはさすがの審判も眉をひそめ、『お前が言うな』っていう顔になった。
「ふっ、まあいいでしょう。汗臭そうだし、一切、近づかせずに終わらせるわ」
スーパーエリートウコ様が髪を払った。
「もういいかね?」
審判が眉をひそめたまま聞いてくる。
「どうぞ」
「ハァ……両校共にもう3回目になるから特に説明は不要だろう。ただ、一つルール変更がある。相手が降参した場合は即座に攻撃をやめること。また、降参は倒された扱いになる」
コンテの町の何とかって女子が降参したからだな。
ルールになかったんだ。
「良かったな、お前ら。俺も泣き叫ぶ女子を攻撃する趣味はない」
と言いつつ、ニヤニヤするノイズの男子達。
ホント、荒くれ者にしか見えんな。
「結構、結構。その意気や良し。降参などない楽しい殺し合いをしよう。ふふっ」
ユキが笑い、目を開くと、荒くれ者共がビクッとする。
殺気がすごいのだ。
「……ノイズの町の生徒はすぐにゲートの方へ」
審判さんがそう言うと、ノイズの町の男子達は俺達を睨みながら歩いていき、ゲートをくぐった。
「ふふっ、トウコ、よくやったぞ。あれであいつらは私達が遠距離戦を得意とすると見たはずだ」
「策士トウコ」
ユキとユイカがトウコを褒める。
「ふはは! 私はバカじゃないのだ! 遠距離魔法なんかいらない! ぶっ潰してやる! 暴力こそが正義なことを教えてやる!」
「うむ、そうだな! では、我々も楽しい戦地に行こうじゃないか! 審判、行っていいか?」
ユキが審判に聞く。
「……ああ、行ってくれ」
「諸君、行くぞ! 誰が一番ウサギを狩れるか競争しようじゃないか!」
「私の勝ち確。狩りは得意」
「あんたは私に譲りなさい。私は森で何もしてないんだから」
女子3人がゲートに向かって悠々と歩いていったので俺とロナルドも続く。
「何だ、こいつら……?」
後ろの方で何かの声がしたが、スルーしてゲートをくぐった。
ゲートを抜けた先は確かに学校だった。
しかも、魔法学校のようなファンタジーっぽい校内ではなく、日本の学校っぽい。
「懐かしいね。魔法使いじゃなかったらこういうところに通ってたのかな?」
「ユイカ、ちょっと黙って」
トウコがユイカを黙らせる。
「え? なんで?」
「いいから! ごめんね、お兄ちゃん」
俺かい……
「高校受験に失敗したニートで悪かったな」
「ユイカも悪気はないんだよ」
お前はありそうだな。
「俺のことはどうでもいいわ。それよりも敵はもう動いてるだろうし、こっちも動くぞ。ユキ、どうする?」
リーダーであるユキに確認する。
「この校内はその名の通りフィールドは校内だけで外には出られない。敵には遠距離魔法が得意という印象を付けたし、速攻を狙ってくるだろう。返り討ちにしてやろう」
「じゃあ、当初の作戦通り、バラバラになって早い者勝ち?」
ユイカが首を傾げる。
「まあ、そうだな。魔力はたいしたことなかったし、体術中心の魔法使いだろう。確か、ノイズ魔法学校のポイントは5。森、市街地では相性が悪かったんだろうな」
じゃあ、ますますここでは攻めてくるな。
「じゃあ、始めようか」
ユキが双剣を取り出した。
すると、ロナルドも槍を取り出す。
「ちょーっと待った!」
皆がさあやろうという感じになっているのにトウコが止めてきた。
「トウコ、どしたの?」
「トイレか? お兄ちゃんに連れていってもらえ」
「電気は消すなよー。この歳ではきついぞ」
さっきの話ね。
「漏らしてないわ! ちょっとね、私に名誉挽回のチャンスをくれない?」
「挽回するほどの名誉がある? 返上すべき汚名の方が多いような……」
ユイカは素直だなー。
「ある! 私ね、これまでなーんもしてない」
「あ、俺もだわ」
使えない長瀬兄妹になってる。
「自分達でやりたいと?」
「1時間でいいからちょうだい。このままでは使えない長瀬兄妹になっちゃう。そして、会長にバカにされる。しかも、何故か私だけ」
シャルは別にバカにしないと思うけど。
「わかった、わかった。血の気の多い兄妹だ」
え? 俺も?
というか、1年で一番血の気の多いお前に呆れられたくない。
やれやれといった顔をするな。
「ユキ、ありがとー」
「ただし、1時間だけだからな。それまで私達はここで待機してる。それと向こうがこちらに来た場合は知らんぞ。あの程度の敵に背は向けられないんでな」
こいつ、絶対に漫画とか好きだろ。
「それでオッケー」
「じゃあ、行ってこい。もし、倒されるようなことがあったらマヨネーズ納豆な」
嫌だわー。
「問題ない! スーパーエリートウコ様に死角などないのだ」
お前ほど死角がある人間もいねーよ。
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