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バカと呪いと魔法学園 ~魔法を知らない最優の劣等生~   作者: 出雲大吉
第3章

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130/199

第130話 魔法大会終了 そして…… ★


 魔法大会1年の部の最後の試合が終わった。

 事実上の1年の頂上決戦となったこの試合は大方の予想を裏切り、ツカサ君とシャルリーヌさんが勝利した。


「どうだった?」


 私は隣に座っている戦った兄妹の従兄に聞く。


「正直、嫌なものを見たよ。可愛い従弟妹たちが戦うのを見るのは厳しいね」

「最後、兄が妹にチョークスリーパーをキメたね」


 まあ、妹の方もしてたけど。


「あの2人は加減しないからね……叔母さんが見たら卒倒するんじゃない?」


 しそうだ……


「魔法大会のラストっぽくはなかったけど、かなり良い勝負だったわ。ユイカさんもシャルリーヌさんも強かった」

「そうだね。特にシャルリーヌさんがすごかった。よくもまあ、自爆なんてしたもんだ。あの選択は普通できない」

「まあ、しないね。とはいえ、演習場の特性があるし、それを生かしたんでしょう」


 演習場内では死ぬことがない。

 だからできたことであり、実戦では絶対に使えない戦法だろう。


「いや、そういう意味じゃないよ。シャルリーヌさんはツカサを信じたんだ。1年で最高の魔法使いであるトウコ相手にツカサなら勝てると踏んだ。あの戦法はそれが大前提なんだよ」


 確かにそうだ。

 ユイカさんという強敵を倒すことができる戦法だが、残ったツカサ君がトウコさんに勝てないなら意味がない。


「ツカサ君は強いからね」

「そうだね。急造のコンビとは思えない」


 ぎくっ!


「決闘のことは?」

「聞いたよ。理由はよくわからないけどね」

「ちなみに、お婆様は?」

「アホって言ってたね。まあ、子供の喧嘩さ。君だってクロエとしょっちゅう決闘してただろ」


 してたね……

 ムカつくのは決闘では五分五分なのに魔法大会になると一度も勝てなかったこと。


「その決闘でツカサ君の強さを知ったんでしょう。あとは例の件」

「ウォーレス先生ね……」


 ツカサ君が強化したウォーレス先生を倒した。

 その場にはシャルリーヌさんもいたからツカサ君の強さを知っていてもおかしくない。


「トウコさんも強いけど、あの子はちょっと内面が幼い気がする」


 すぐに逆上するし、そうなると動きが明らかに単調になる。

 ものすごい子供だった。


「双子だけど、あの子はツカサにべったりだったからね。何もかも頼ってきた。あとまあ、叔父さんと叔母さんも甘々だからね」


 平和な国で何の苦労もなく育ってきたんだろうな。


「そんな兄妹の面倒を見るわけ?」

「面倒なんて見ないよ。あの子達は自分で考えて動ける。まあ、フォローと尻ぬぐいかな」


 面倒を見るんじゃん……

 この人も従弟妹に甘いな……


「様子を見てきたら? ツカサ君はともかく、トウコさんは医務室に行ったみたいよ?」

「いや、友達と話しているだろう。どうせ家に帰るし、家で話すよ」

「そう……じゃあ、悪いけど、先に帰ってくれる? 私は校長先生を呼んでこないといけないから」


 閉会式の挨拶も校長先生がやる。

 私達の時もだったが、校長先生は話が好きなのだ。

 ちょっと長いけども……


「勝手に年頃の女性の家を使って悪いね」

「仕方がないでしょう。あの兄妹が隠しているんだから」


 理由はいまいちわからなかった。


「いつまで隠せるやら……」


 エリクさんは苦笑いを浮かべながら立ち上がったので私も立ち上がる。


「ツカサ君におめでとうって言っておいて」

「自分で言いなよ」

「それもそうね」


 私はこの場でエリクさんと別れ、校長室に向かった。

 そして、校長室の前に来ると、扉をノックする。


「失礼します」


 扉を開け、中に入ると、デスクにつく校長先生がいた。


「終わりましたか?」


 校長先生が聞いてくる。


「はい。すべての試合が終わりました。20分後に閉会式を行います」

「わかりました。最後の試合はどうなりましたか?」


 やはり校長先生も気になるようだ。


「ツカサ君とシャルリーヌさんのペアが勝利しました。シャルリーヌさんが自爆でユイカさんを倒して、ツカサ君がトウコさんを倒し、勝ちましたね」

「そうですか……私はトウコさんとユイカさんに賭けていたんですけどね」


 実は先生達の間でも賭けていたりする。

 私はもちろん、ツカサ君達に賭けたので万々歳。


「トウコさんはどうもここ一番で弱いですね。苦労知らずみたいなんで」

「まあ、そういうこともあるでしょうし、これから学んでいけばいいことです。トウコさんに限らずですがね」


 それもそうだ。

 あの子達はまだ1年生なのだから。


「先生、今回の魔法大会は成功と思いますか?」

「ひとまずは成功でしょう。皆、得る物があったと思います」


 確かにそれはそうだろう。

 負けた者は何故負けたか、勝った者でも課題はある。


「本当にラ・フォルジュからの圧力はなかったのですか? 確かに今回の魔法大会が得る物が多く、成功と言えるでしょう。ですが、あまりにも急です。しかも、何故、1年だけなのですか? まだ入学したばかりの1年がやるより、2、3年の方が良いと思います」


 2、3年生なら付き合いも長いから組む相手の見極めもしやすい。


「ラ・フォルジュからの圧力はありませんよ。エリク君もそう言っていたでしょう?」


 確かに言っていたが…………いや、待て。

 ラ・フォルジュからは?


「……どこからあったんです?」

「イヴェールです」


 イヴェール……

 ラ・フォルジュのライバルの家でシャルリーヌさんの家……


「イ、イヴェールが何故?」


 何のメリットがある?

 シャルリーヌさんのことを考えれば、むしろデメリットしかない。


「わかりません。今回の魔法大会は以前から検討されていたことです。ですが、それを早めてほしいと要望を出したのは確かにイヴェールの現当主です」


 イヴェールの当主ということはシャルリーヌさんの父親だ。


「イヴェールの当主は娘に箔でも付けたかったんですか? それなら娘のことをわかってなさすぎです」


 イヴェールが武家なのはわかるが、シャルリーヌさんは戦いで活躍する人間ではない。


「どうですかね? こればっかりはイヴェールのことなのでわかりません」


 イヴェールは何を考えている?

 娘に不満でもあるのだろうか?


「このことをラ・フォルジュに伝えても?」

「それはご自由に。ですが、やめておくことを勧めます。今は両家の波風を立てる時ではありません。わかりますね?」


 ツカサ君とシャルリーヌさんか……

 確かにやめた方が良さそうだ。


「わかりました」

「はい。では、演習場に行きましょうか。今回は表彰がないので盛り上がりに欠けますがね」


 優勝がないからなー……


「やっぱりトーナメントとかの方が良くないですか?」

「その辺りも課題でしょうね。これから詰めていきましょう」


 それもそうか……


 私と校長先生は校長室を出て、演習場に向かった。

 しかし、演習場に残っている生徒は半分もいなかった。

 やはり表彰がないのはマズかったようだ……




 ◆◇◆




 ふと、ドタドタという音で目が覚める。

 何だろうと思って扉の方を見ると、いきなり扉が開き、トウコが入ってきた。


「お兄ちゃん、ひどいよー!」


 トウコがベッドの前でしゃがみ、身体を揺らしてくる。


「何が?」

「普通、可愛い妹の首絞める!? ひどすぎない!?」

「お前が先に絞めただろうが」


 一瞬、飛びかけたわ。


「全然違うでしょ! 私は猫さんだけど、お兄ちゃんはゴリラじゃん!」


 誰がゴリラだ。

 あと、お前は猫さんじゃない。

 ライオンだ。


「勝負事だから仕方がないだろ。それより、ユイカはどうした?」

「怒ってた。なんで止めたって」


 自爆の時か……

 足を止めたのは自分だろうに……

 魔法を使われる前に仕留めるか、逃げるかしろよ。


「お前ら、本当にひどいな。バーサーカー1号と2号が組んでもダメなことがよくわかったわ」

「誰がバーサーカーか!」


 お前とユイカとユキだよ。

 こいつらのせいで日本人が変って思われるんだ。


「お前、怒るとすぐに動きが単純になる癖を……ん?」


 枕元に置いておいたスマホが鳴り出した。


「電話だね」


 手に取ってみると、トウコも画面を覗く。


「シャルだな」


 さっき別れたばっかりなんだが……


「あいつら、全然弱かったわね、おほほって言う気だ!」

「そいつ、誰だよ」

「えい!」


 トウコが通話ボタンとスピーカーモードのボタンを押した。


『もしもし?』


 シャルの声だ。


「どうした? 何か言い忘れか?」

『あ、いや、そういうことじゃないけど、トウコさんが気になってね。医務室に行ってたけど、大丈夫? 首絞めたんでしょ?』


 シャルがそう言うと、トウコが気まずそうにそっと目を逸らした。


「人間性の違いがありありと……」

『ん? どうかしたの?』

「うんにゃ。トウコは大丈夫。キャンキャン騒いでる」

「いや、犬じゃないんだから……」


 ライオンだもんな。


『あ、トウコさん、そこにいるのね……大丈夫なら良かったわ。クロエが顔が真っ青だったって言ってたから心配だったのよ』


 目の良いメイドだな。


「あ、うん……ねえ、お兄ちゃん、この人、私と同い年なのかな? 鯖読んでない?」

「読んでそう」


 5歳くらい。

 それほどまでにトウコと大人力が違う。


『いや、なんでよ! 読んでるわけないでしょ!』


 シャルが怒った。

 そりゃ怒るか……


「用件はそれだけ? 私は大丈夫だから気にしないでー。明日、手袋を買いに行くだけだから」


 決闘用のやつか。


『投げてきても転移で避けるけどね……あ、それでツカサ、明日空いてる?』


 明日?

 日曜だし、休みだ。


「空いてるけど? どっか行く? 祝勝会する?」

『いや、2週間も勉強してなかったでしょ? 明日、しましょうか』


 嫌なことを思い出させるな……


「明日は休んだ方が良くない?」

『すぐにテストよ?』


 そうなんだけどさ……


「お兄ちゃん、頑張ってよ。ここで成績が落ちたら町の外に行くのを禁止される恐れがあるよ。ついでに巻き込まれる私の身にもなってよ」


 ありえる……


「じゃあ、やるかー……」

『魔法大会なんかよりテストの方が大事よ? じゃあ、明日はファミレスね』

「わかったー。また明日」

『ん』


 電話が切れてしまった。


「お兄ちゃん、頑張って!」

「だなー……魔法大会なんかよりテストだって」

「武家の名門であるイヴェールの人間とは思えないセリフだったね」


 ハァ……テストか……

 まあ、シャルリーヌ先生が教えてくれるから頑張るかね。


ここまでが第3章となります。


これまでのところで『おもしろかった!』、『続きが気になる!』と思ってくださった方はブックマーク登録や↓の『☆☆☆☆☆』を『★★★★★』に評価して下さると今後の執筆の励みになります。


第4章もよろしくお願いいたします。

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あー目をつけられてる 呼び出しあるかな
ミシェルさんエリク君と仲良しだった もっと距離置いてたのかと
ツカサもなんだかんだでトウコを可愛がってて微笑ましい
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