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バカと呪いと魔法学園 ~魔法を知らない最優の劣等生~   作者: 出雲大吉
第1章

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第012話 実技


 俺達が演習場に着くと、そこは砂地面の広い空間だった。

 しかも、ドーム状になっており、観客席もある。


「何ここ? マジでコロシアムだな」

「決闘や戦闘演習をする場所でもあるからね」


 セドリックが教えてくれる。


「決闘? 戦うん?」

「プライドの高い人達も多いからケンカになることもあるんだけど、魔法使いのケンカって危ないだろ? だからここでやるんだ。ここは特殊な魔法がかけられてる場所で、この中で怪我したり死んだりしてもそこの観客席に飛ばされるから無傷なんだ」


 何だそれ?


「え? じゃあ、ここで俺がお前を殺しても観客席に飛ばされるだけ?」

「そうだね。だからケンカするならここ。逆に言うと、ここ以外で魔法を使ったケンカをすると厳罰だよ。だから同じく危ない戦闘演習なんかもここでやるんだ」


 へー……ゲームみたいだな。


「セドリック、やってみていいか?」

「嫌だよ。僕、戦闘苦手だもん」

「イギリスの名門シーガー家の誇りはどこいった?」

「イングランドね。戦うことだけが誇りじゃないよ。大人こそ、無意味な戦闘は避けるんだ」


 まあ、セドリックって線も細いし、弱そうだもんな。

 逆にフランクは強そうだ。


「フランク」


 フランクに向かってシャドーボクシングをする。


「お前は蛮族か」

「私が相手をしてあげようか?」


 イルメラがちょっと嬉しそうに立候補する。


「無理。女は殴れん」

「今時、男女平等が主流よ?」


 男女平等って女を殴っていいって意味じゃないんだと思うけど……


「俺の拳は鉄もへこますぞ?」

「パス。女には優しくしなさい」


 そう言ってんじゃん。


 俺達が話をしていると、ジェニー先生がやってくる。


「皆さん、お揃いですね? では、基礎学の実技の授業に入ります。今日が初めての長瀬君のために説明しますと、この授業では実際に魔法を使います」


 先生、優しい。


「……基礎学の実技は何の魔法を使ってもいいから地味に人気があるのよ」


 イルメラが小声で教えてくれる。


「では……」


 先生がつぶやくと、どこからともなく札みたいな紙を取り出し、地面に投げた。

 すると、札が人型のマネキンみたいなロボットに変わった。


「何っすか、それ?」

「これに向かって魔法を使ってください。では、セドリック君、最初に見本を見せてあげてください」

「はい」


 先生に指名されたセドリックが前に出て、ロボットと対峙する。

 そして、ロボットに向かって手を掲げた。


「ファイヤー!」


 セドリックが叫ぶと、セドリックの手のひらから炎が出て、ロボットを襲った。

 ロボットは激しく燃えていたが、次第に炎が収まっていく。

 そして、完全に火が消えたのだが、ロボットは無傷で立ったままだった。


「はい、よろしい。こんな感じで魔法を放っていきます。わかりましたか?」

「はーい」


 これはわかりやすいな。


「戦闘が苦手じゃないん? かなりの火力に見えたけど……」


 戻ってきたセドリックに聞く。


「あのくらいは誰でもできるよ。基礎魔法だもん」


 そうなんだ……

 俺、トウコのライターくらいの火しか見たことないしな。


「では、次に長瀬君。やってみてください」


 先生が俺を指名してきた。


「俺、魔法が使えないんですけど……」

「ん? 強化魔法が使えると聞いていますが?」


 どうやら先生は俺の能力を知っているらしい。


「それでいいんですか?」

「強化魔法は立派な魔法ですので大丈夫です」


 良かったー……


「じゃあ、やってみます」


 そう言って、ロボットの前までやってくる。


「頑張れよー」

「無理するなー」


 セドリックとフランクが応援してくれた。


「任せとけ。粉々にしてやるぜ」


 こんなマネキンは粉砕してやる。


「それも強化魔法がかかっていますよ」

「ぶっ飛ばす!」

「聞いてませんね……どうぞ」


 先生が許可したので腰を少し下ろし、拳を握る。

 そして、踏み込んでロボットの胴体を殴った。

 すると、ロボットが吹き飛んでいき、そのまま壁にぶつかる。

 ロボットはそのまま地面に倒れると、ひびが入り、バラバラになって紙に戻った。


「え? えー……」


 先生が呆然と散らばっている紙を見つめる。


「どうです?」

「わ、私のオートマタが……フレアも防ぐ強化魔法が……高いのに……」


 先生が愕然としたまま無視する。

 なんか悪いことした気になってきた。


「こ、こんなもんだな……」


 高いという言葉が引っかかり、ショックを受けている先生と目を合わさないように戻る。


「わかった。お前、脳筋だな」

「バケモンじゃん。君、本当になんで学園に来たの?」

「す、すごいですね……」

「あんたと戦闘演習をしなくて良かったわ……」


 4人はちょっと引きながらも褒めてくれる。


「これしか使えんのだ。でも、熊を一撃で倒せるんだぞー」


 この前、爺ちゃんの山で仕留めた。

 すごかろう?


「熊って……」

「しかも、一撃って……」

「ユイカさんも双剣でバラバラにしてましたよね?」

「日本人の魔法使いってバーサーカーしかいないのかしら?」


 まだ見ぬユイカも同類か……


「高かったのに……い、いえ……では、次にフランク君」


 落ち込んでいた先生だったが、すぐに立ち直ると、新しい札を取り出し、ロボットを出した。


「うーっす」


 その後、フランク、イルメラ、ノエルと続き、他の生徒達も魔法を使い、新しいロボットに向かって魔法を使っていった。

 だが、俺以外は誰もロボットを壊せずに傷一つ付けられていなかった。


「うんうん……では、最後にラ・フォルジュさん」


 満足そうな表情の先生が最後にトウコを指名すると、トウコが前に出た。

 そして、俺をチラッと見ると、ロボットに向かって手を掲げる。


「あ、あの、ラ・フォルジュさん?」


 先生は嫌な予感がしたらしく、トウコに声をかけたのだが、トウコはそれを無視して無言で魔法を発動させた。

 すると、ロボットがあっという間に凍っていく。


「えー……」


 先生が引いていると、トウコが指をぱちんと鳴らした。

 すると、凍っていたロボットが粉々に砕け、紙に戻る。


「2枚目ー!? 私のオートマタが……」

「こんなものでしょうかね?」


 対抗するなー……

 さすがは負けず嫌いのトウコちゃん。


「はい……ちょっと早いですが、本日の基礎学の授業は以上になります……復習を忘れないように……」


 先生が落ち込みながらそう言うと、トウコは表情を崩さずにすぐに演習場を出ていった。


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