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第8話 突然の訪問は迷惑ですがなにか?

 愛しい麗しのお兄様と共に充実した推し活ライフ……もとい、領地経営に励む日々。


 って、こういう時に得てして厄介ごとは舞い込んでくるもの。

「ミレーネ、急だが、これからお客様がお見えになる。準備を頼む」


 不機嫌さを隠さず、お兄様がそう伝えてきたのは、領地に戻って3ヶ月ほどの春のはじめ。


 お父様お母様は外交中で、これ幸いとお兄様と二人きりの蜜月を満喫していたのにっ!


「あら。それは大変ですわね。遠方からのお客様でしょうか?」


 お兄様が慌てている様子や、私に対応を依頼してきたことから、きっと相手は貴族でそれも格上なのだと察した。


 親しい友人や身内、仕事仲間ならともかく、本来の貴族宅への訪問は手紙なりなんなりで、事前の約束が必要。


 よほどの緊急事態ならともかく、同格かそれ以下の相手なら断ってしかるべき。


 でもそれが出来ない相手、となると。


 そして、領内に我が家より格上の貴族は、当然だけど存在しない。


 つまり、遠方からやって来る伯爵家以上の家門か国外の貴族王族、か。


「お泊まりですわよね。晩餐の準備も必要ですわね」


「ああ、頼む」


 格上の貴族王族なら、町の宿屋で宿泊というわけにはいかない。


 一応、そこそこ格式の高い宿屋はあるけど、さすがに侯爵家以上の貴族は平民では対応させられない。


 いや、彼らのサービス技術が劣っているわけじゃないけど。


 むしろ、夜会などで人手が必要な時は賃金を払ってうちの屋敷にきてもらうこともある。


 まあ、いわゆる人材派遣システム。

 

 普段の生活では、料理人とか給仕とか、そこまで人数要らないし。


 定期的に我が家で研修も受けているから、そんじょそこらのお屋敷の使用人に引けを取らないくらい訓練されてる。


 おかげさまで町の宿屋で貴族並みの接遇が受けられると訪問した豪商にも好評だ。


 でも、どれほどサービスが充実していても、貴族は体面を重んじる。


 内容以上に『どこ』で接待を受けたかにこだわる人種は多い。


 だから、この場合は、多少内容が劣っても、うちの屋敷で宿泊まで対応するのが正解。


 まあ、そんな状況でも、きっちりお迎えして接待しますけどねっ!

  

 うちの使用人()達は有能ですからっ!


「そうですわ。おいでになるお客様の数は……」


「お1人だ。従者の数ははっきり分からないが、おそらくそれほど多くない」


「それでしたら賓客用の寝室だけでひとまずよろしいですわね。側仕えの宿直室が余分に必要でしたら隣の客間もお使いいただければ。お料理は念のため料理人を1人借りられるか訊いてみますわ。食材は春祭りに向けて一昨日多めに仕入れたばかりですから」


「ああ、頼む。ああ、食べられないものは特にないとお聴きしているから」


「男性ですわよね? お酒の準備は、ワインとブランデーに……質の良い蜂蜜酒(ミード)も仕入れたばかりですから、それも」


「それはありがたい」


 いえいえ!


 お兄様に恥をかかせるわけには参りませんからっ!


 客室は定期的にメンテナンスして整えているし、食材も豪奢ではないけれど常に品質の確かなものを揃えておくようにしている。


 何たって突然訪問してくるセレブな身内も多いし。


 お母様が不在な今、この屋敷の女主人は私。


 何としても、見事に采配ふるってみせますっ!

 

 

 


 




 

 

 

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