コード“竜”7
研究所に戻るまで結局考えが纏まらず翔は深いため息と共に入口を潜る。
自室に着く前に黒鴉の様子を探ろうと作戦室に向かうと人だかりがあり口論が聞こえてくる。
「あんたが!あんたのせいで!」
黒鴉の叫び声と神姫に掴みかかる姿が見えて翔が急いで割って入る。
「何してるんだ黒鴉!」
「裏切り者の始末をつけようとしてるのよ、邪魔しないで」
「何を根拠に!」
ギロリと黒鴉は翔を睨み付ける。
「疑わしきは罰せよ…妹の真似する嘘吐きめ!」
「ワタシは…」
翔の後ろにいる神姫は何かを言いたげにするが黒鴉の剣幕にビビり縮こまっていた。
「…何があったんだ?」
翔は諭すように黒鴉に聞く。
「ソイツは人の呼び方が黒姫と違うのよ、あんたも覚えあるでしょ?」
「…ある、あるが裏切り者は言い過ぎだ」
研究員や博士からも睨まれ翔は説得は無理だと悟る。
(上位世界からの攻撃が無くなればここもお役御免、去るなら今か)
「何か言うことある?」
黒鴉は翔に詰め寄り顎を使いフンと鼻を鳴らす。
「そうだな、もうすぐ戦い終わるしお暇もらおうかな」
「…は?」
呆気に取られる黒鴉を置いて翔は神姫の手を引いて作戦室を出る。
「あ、あの…どういう意味でしょうか?」
部屋を出てから困った様子で神姫は聞いてくるから翔はやけくそ気味に答える。
「竜司さんが死んで向こうさんは目標達成、違うか?」
「え?…死んだのですか?お父様」
翔は神姫の言葉に吹き出し注意する。
「黒姫のふりするなら呼び方間違えるなよ、親父さんの呼び方は父さんだ、あと友達の周防の呼び方はミナさん、えーっと後なんだっけ…俺の飲みかけの紅茶盗んで飲んでたっけ?」
「うう…勉強不足ですみません」
ストレスの捌け口のようにくどくどと指摘した事を翔は後悔する。
「悪ぃ、ちょっと言い過ぎた…しかし何故嘘をついたんだ?」
「それは…その…」
言い淀む神姫に翔は思い出したかのように足を止め、ドンと神姫がぶつかり「あう」とぶつけた額を押さえる。
「出ていくにしても黒姫とも話さないとな…」
「ワタシの為に出ていくなんて…」
翔は苦笑いして黒姫の部屋に移動する。
先程と同じように黒姫は部屋にいて不思議そうに翔と神姫を見て尋ねる。
「翔君?今度はなんでしょう?」
「いやー、研究所出てく事にしたからさ」
「…はい?」
急な話に黒姫は戸惑いながら首を傾げる。
神姫は黒姫に自分の正体を説明して深々と頭を下げる。
「…じゃあ本物の神姫でクローンは嘘?」
「そうした方がいいと言われて…あ」
二人は呆れた顔をして「誰に?」と神姫を問い質す。
「えっと…もう一人の翔君です…」
「まさか向こうのボスってもう一人の俺?!」
「いえ、それは違います!…話すと長くなりそうなのでここでは言えません…」
翔は頭を抱え竜司と神姫の話を脳内で纏めようとするが混乱して口に出してしまう。
「となると見えてくる真実はなんだ…」
「翔君…大丈夫ですか?」
黒姫に言われて翔はハッとしてなんでもないと誤魔化す。
「なんでもない、大丈夫だ。それより黒姫はどうする?一緒に出てくか?」
「どうしましょう…姉さんを置いていけないし…父さんもまだ…」
「あ、思い出した、黒姫!お前が持ってる箱出せ」
父と聞いて翔が懸念点を思い出して黒姫に流れをぶったぎって要求する。
「えぇ?なんで…」
「竜司さんの遺言的な?次疑われるのお前だぞ」
「…え?はい?えええ!?」
遺言と疑われるという全く結び付かない言葉に黒姫は戸惑い驚くしかなかった。
訳も分からないまま箱を机から取り出して翔に見せると翔はサッと奪って破壊する。
「うぅ…ワタシの力…」
「内通者と竜司さん関連で黒鴉達ピリピリしてるからな、それにもう必要ない」
ガックリと肩を落とす黒姫を励ましつつ再びどうするか質問する。
「行きますぅ」
少し不服そうに黒姫は翔に付いていくと決める。
「神姫から聞きたいことあるし落ち着いた所に行こうか」
「私は父さんの事も聞きたいんですけど?」
黒姫の最もな意見に翔は頷く。
「あー、そうだな。俺も話すよ」
三人は軽く荷物をまとめて逃げるように研究所を後にするのだった。




