コード“竜”5
それから数日、各地の復興を手伝いながら懸命に竜司の足取りを追っていた翔達だったが一向に探し出すことが出来なかった。
情報を探る中で変異体との交戦のような情報もあり生存が危ぶまれたが一通のメッセージが翔の元に届く。
(…やっぱり生きてるじゃねぇか!)
『わたしを探しているようだが申し訳ないが死んでいる方が都合がよくてな。理由については伏せていたがそろそろ話すべきと思ってな…』
(最初からそうしろ!)
文面に心の中でツッコミを入れつつ読み進める。
『神華の力の件で敵に怪しい動きがあったようで内側に内通者かスパイでもいるんじゃないかと思ってな、わたしが死んだ情報が流れたら向こうも大きく動くはずだ』
(内通者炙り出すつもりなのか…)
『という訳で大きな動きがあるまで隠れているので探さないで下さい…探しても無駄だけどな、がはは』
翔はイラッとしてモニタを殴りそうになるが我慢する。
ふとメッセージには続きがあり何かの暗号文のようだった。
「…記号と文字列、暗号?」
翔が呟くと急に据わっていた椅子が半回転して背後に仁王立ちしていた黒鴉と目が合う。
「ぎゃ!脅かすなよ!」
黒鴉は青筋立てた笑顔でピクピクと眉を動かし不意に翔の胸ぐらを掴み上げる。
「なぁにこれは?」
「何とは…?」
翔はとぼけた返答をするが黒鴉は完全に怒り心頭で翔を揺する。
「このお父様からのふざけたメッセージ…!浜松!ぶち転がすわよ!」
「俺に当たるな!動きバレて逃げられただけだろ」
黒鴉は声にならない声を出しながら翔を放して大きく舌打ちをする。
「…何事もゲーム感覚で人を弄びやがって…見つけて必ず後悔させてやる」
主旨がズレていく黒鴉に翔が質問する。
「ブチキレてるとこ悪いんだが…この追伸の記号に見覚えないか?」
「あ゛?…さぁ?今はそれどころじゃないから」
ストレスを解き放つように足音鳴らして去っていく黒鴉を見送ってから翔は暗号を見つめる。
「意味のないただの文字…な訳無いな、しかしこれは遊ばれているよな…」
記号と漢字の組み合わせ、誰かに聞くべきかと悩む。
(カスパーに内通者の話をされた時は否定したけど…竜司さんも疑っているのか…漢字は何となく分かるし記号だけでも聞くか)
とりあえず記号をメモして黒姫に相談してみる事にする。
黒姫は姉と相部屋の自室にいた。
運良く黒鴉の方は先程のやり取りで躍起になって神華達の所に行っているらしかった。
「あー、黒姫?相談なんだが…」
「はい、何でしょう?」
翔は記号だけのメモを黒姫に見せる。
「どうしても思い出せない記号でうろ覚えなんだが…こんなん、なんだっけ?」
翔は頭を掻いて申し訳なさそうにすると黒姫はすぐに答える。
「一分は分かりますよ!星座ですね、ほら星座占いでよく見るやつですよ」
「なるほど、スッキリした!」
言われて翔も見た事があるのを思い出す。
「んー、でも他のは何でしょう…どこかの国の言語?」
ただ一部の記号は分からないようだった。
「パソコンで打ち込む方法分かる?」
「やったこと無いですけど…文字コードの操作とか?」
「それだ!…あー、すまんついでになんだけど」
翔はメモ用紙に漢字を五つ全てを思い出しながら書き出した所で黒姫が首を傾げる。
「順番滅茶苦茶ですけど干支?足りないですけど」
「あー、そっか、記号で頭ん中一杯だったわ、よし何となく読めてきたぞ…」
「あの…何かパズルでもしているのですか?」
翔は黒姫に伝えるべきか悩むが一旦誤魔化すことにする。
「そんな所だ、後は適当な記号の意味だな…うん、ありがとう」
「どういたしまして」
丁寧に黒姫はお辞儀をして翔を見送る。
自室に戻り急ぎ文面とにらめっこする。
♋卯Δ♒♑子♑辰♊丑♋卯♉寅♐卯。
(量が少なくて助かった…なんとかすぐに解読できそうだ)
しかしいきなりイレギュラーな書き出しに首を捻る。
(…多分星座が子音で干支が母音…なーんかいきなり変な記号入ってるし星座が続いてるし…まずは分かるところだけ解読するか)
翔がメモとネットの情報を元に解読する。
(えっと…わをしてくれ…あ、水瓶座は十一番目だから「ん」か!てんわ?じゃあこの三角記号は濁点か!電話!…つまりこの意味不明な記号が電話番号か!…って分かるかぁ!!)
ツッコミをいれつつ必死に解読しようとする。
(そもそもどうやって入力したんだよ!?…調べるか)
ため息をつきながら黒姫に言われた文字コードを調べてみる事にする。
数十分後、血走らせた目を瞬きして癒しながらなんとかそれっぽい番号にたどり着く。
「あー、やってやったぞ畜生!出掛けるか…」
パソコンを閉じて携帯を手に街に繰り出すのだった。




