コード“竜”2
作戦の実行を研究所の司令室で各地の情報を収集していた神威の元にパソコンにて急な報せが入る。
「…なんと!?…あ、いや申し訳ない」
余りの内容に驚きの声をあげてしまい周囲の作業員から冷たい視線を受けて気まずそうに謝罪する。
(竜?!どういう事だ?)
神威はメッセージの内容を何度も読み返し冷や汗を流す。
そこには竜司の訃報を報せる旨の記述があり何度読んでもそれに間違いは無かった。
(海外の作戦の最中にか?…奥方と娘達になんと説明すれば良いのだ!?…胃が痛いぞ)
キリキリと痛む胃と込み上げる胃酸に頭を押さえてクラクラする。
それでも今は目先の作戦だと時計を見ようとするが色々な感情でうまく焦点が合わない。
「ええい、落ち着け我…」
目頭を押さえて深呼吸する。そして画面を一度閉じて携帯を取り出し席を立つ。
「珈琲飲んでこよう…」
翔に通話をしながら移動する。
『作戦前なのに何かあったんですか!?』
「作戦とは無関係なのだがな…そのだな…」
翔は無言で神威の言葉を待つ。
「なんと言えばいいか…竜についてなんだが…」
『竜司さん?…何事です?』
「連絡があった…訃報の」
一瞬の沈黙の後、翔が怒鳴る。
『あのタヌキ親父まーたふざけた事言いやがって!』
「か、翔君!?」
『今は作戦に集中しましょう、戻ってから内容見せてください』
ラウンジで翔の怒りっぷりに驚きを隠せないまま一服済ませると大分落ち着いてきて思考のリセットを済ませて作戦室に戻ることができた。
13時、一斉に各地で爆撃による攻撃により箱の破壊を行った。
翔はじっと攻撃の終わりを見届け霧の様子を窺い神威からの連絡の雑念を振り払う。
「散々引っ掻き回してくれて…何考えてんだ」
翔の独り言を聞いてカスパーが心配するが鬼気迫る様子に声を掛けれずに見送る。
数分して少しずつ霧が晴れていき予想通り霧の中に留まっていた変異体が動き出す。
奥多摩での情報を元に増員された殲滅部隊が雑魚の対処に当たり翔はじっと守護者が現れるのを待っていた。
激しい機銃等の銃撃にカスパーが自分の死の光景と合わせてトラウマになりかける。
「ひー、蜂の巣で人の原型無くなってるよ…俺は残ってただけマシだったなぁ…」
耳を塞ぎ震えながらゾンビ達が文字通りバラバラにされていく様から目を逸らして各地の監視モニタを見て守護者の位置を特定しようとする。
「強そうなヤツ…速すぎてモニタに映らないとかないよな?」
無線による通話で翔に質問する。
『何か怪しいのが居たら言ってくれればいい、デカいのとかゾンビじゃないのとか』
「そ、そうか…」
モニタに映った一際大きい獣を見つけて報告する。
「あ、いた!三番、えっと集会ホールの近く、獣型だ」
『獣型?!…元ペットか』
翔は走りながら報告を聞いて小声で呟き自衛隊と交戦前にボスと対面する。
「おい!あ…思ってたよりデカいな」
象のような大きさの毛むくじゃらの犬型の変異体に威勢良く呼び掛けて少し後悔する。
唸りながら翔を見る。餌と判断し涎を溢しながら吠える変異体に翔は刀を呼び出して構える。
「さっさと脚を封じるか、雷怨!」
精霊を呼び出し二手に別れて左右に散るとどちらを狙うべきかとキョロキョロした後、肉の量が多そうな雷怨を狙うように走り出す。
雷怨の喰われてたまるかという全力の雷撃を受けて硬直し前のめりに倒れた変異体の後ろ足を翔が素早くバッサリと切断する。
すぐに焰鬼を呼び出し痺れる敵を追撃して殴り飛ばし炎上させる。
物悲しい悲鳴が響き翔は苦い顔をするが心の中で謝りながら首に一太刀入れてトドメを刺す。
「ふぅ…デカいと切断しきれないな、燃えカスになるまで待つか」
刀の返り血を振り払って一息つくとカスパーから無線が届く。
『K終わったか?お疲れ』
「他のとこは?とりあえず燃え尽きるまで待っているんだが…」
『今そっちに軍人向かってるから合流したら終わりにして帰ろう…戦場は嫌いだ』
カスパーの愚痴を聞いて翔は笑い現れた自衛隊に後を任せて帰還することにするのだった。




