コード“螺”14
自我を持った人形の敵と本部近くでぶつかり合うアキトだったが敵の発する言葉に中々斬り込めずに舌打ちする。
「お父さん…?」
「段々知能が上がって…何で俺なんだよ!お前を作ったのはシュメイラだっての」
激しく手刀での攻撃に合わせて氷で守るが隙があってもバッサリと切り伏せられずにいた。
「アキトさん!」
「げっ、もう来たか…」
翔達が加勢に来るがアキトの反応に黒鴉が呆れる。
「もう、って何よ?苦戦してるじゃない」
普段なら決着してると評価を受けてアキトは文句を言う。
「やりづらいんだよコイツ!」
不愉快な援軍に人形は距離を取り首を傾げて一人一人指差して口を開く。
「誰?お父さん?」
生気の無い瞳と不気味雰囲気に翔達全員が震え上がる。
「アキトさん?何なんですか!?」
「人形がこんなんに変異しやがったみたいだ」
黒鴉の時との差に翔も黒鴉も「嘘!?」と声に出る。
ツムギがひょっこり現れて手を叩いて大笑いして何かに気付いて一人で納得する。
「あー、そういう事かー!」
呆気に取られる翔達に対してアキトが人形を牽制しているのを確認して説明する。
「あのデカい鳥と同じだよ、あの箱の守護者…鳥倒したから新しいのが作られたんだねぇ、あ、僕の持論だけどさ」
突飛な発送だったがアキトが背中越しに質問する。
「じゃあコイツ倒してもまた次のボスが作られる訳か!?」
「だろうねー、ミサイルぶち込むからもうちょっと引き付けてー」
ツムギの説明を受けてアキトがまた大きく舌打ちする。
「みさいる?何それ?」
「気にすんな!かかってこい!」
アキトが挑発して再びぶつかり合いが始まり翔と黒鴉はどうするべきかと互いに顔を見合せ黒姫が提案する。
「放っておきます?アキトさんなら大丈夫でしょう?」
「薄情だな…」
その話が聞こえたのかアキトが叫ぶ。
「ああ、さっさと帰れ邪魔だ!」
「お父さん、こっち見て」
「あーもう!俺はお父さんじゃない!」
アキトと敵のやりとりを聞いて大丈夫そうだと翔達は戻っていく。
「じゃあ頑張りなさい、おとーさん」
黒鴉の去り際の言葉に青筋立てながらアキトは人形の攻撃を受け流し続ける。
「お父さん強いね、当たらない」
「当たり前だ、生まれたばかりの娘に負けるもんか…いや、娘じゃねえ!」
ノリツッコミしながら必要最低限の氷で防ぐ。
何を思ったのか人形はピタリと手を止めアキトを見つめる。
「…どうした?終わりか?」
「ボクの名前」
名前を欲する敵にアキトは口をあんぐりと開ける。
「…名前だぁ?!…俺に勝ったら考えてやるよ」
引き付ける為の嘘をつく。
「わかった」
人形は素直にそういって素早く拳を構え放つ。意表を突かれたアキトはそれを咄嗟に腕で防ぎ吹っ飛び。
(生身で受けたのはマズったな…右腕逝ったわ)
折れた右腕を押さえながら立ち上がると回復薬を片手で開けて飲み干して薬瓶を投げ捨てる。
「勝った…」
「っぺ、まだ終わってねーぞ」
「むー勝った!」
わがままを言う敵にアキトは苦笑いする。
(早く箱壊してくれ…終わった後もこれじゃあ斬りにくい)
本部では黒鴉が司令官と作戦の詰めを話していた。
「航空自衛隊が来るまであと数十分、ここは爆撃範囲外だが設備を移動する」
「爆撃後は残った雑魚の掃討っと…この作戦レポートで他を比較的安全に潰せるといいんだけど」
黒鴉の言葉にツムギがボスの存在を危惧する。
「霧が敵のテリトリーで箱を守るボスの存在…正直いきなり箱をミサイルでぶっ壊したらどうなるか…」
「それはそれ、これはこれ…霧を晴らして面倒事になることは理解したでしょ?箱さえなきゃなんとかなるなる」
「ほんとかなぁー」
ツムギの心配に同意しつつ翔はその先を心配する。
「解決出来たとして、日常ほ戻ってくるかな…?」
「どうかしらね、でも私は諦めてないわよ」
黒鴉の強い意思に黒姫もウンウンと頷いて翔を元気づける。
「そういやストップウォッチ付けっぱだったな…うげ、まだ一時間も経ってねぇのか」
「体感もっと経ってるわよね…あっち行ってこっち行って疲れたわ」
黒鴉はチラッとまだ頑張ってるアキトを覗いて様子を確認する。
「あー、まだまだ大丈夫そうね」
「心配してるのやら楽しんでいるのやら…」
ニヤつく黒鴉に翔は呆れるが小声でもそれが聞こえたのか矛先を向けられる。
「子供出来たら浜松もあんな感じに鍛えるのかしら?」
「よせやい、次の世代には普通に生活させてやりたいよ…」
翔はさっさと平和に過ごせる日々を願うのだった。




