コード“螺”12
市街地とは名ばかりの古民家の建ち並ぶ地区、ボロボロになりながらも抵抗する部隊に司令部からやって来た黒姫達が合流する。
一人の隊員が司令官に敬礼して戦況を報告する。
「申し訳ありません伍島三佐、巨大な鳥に襲撃され死傷者多数、他の隊とも連絡がつかない状態であります!」
「想定外の事態だ、民間人の脱出を最優先に防衛線の維持を行う」
指示を受けた隊員達は戦闘中の隊員のハンドサインを見て報告をする。
「既に民間人は区域から脱出をさせてあります!」
「よろしい、無線が効かない今、順次撤退の用意をするのだ」
撤退の言葉を聞いて悔しそうな表情をする隊員達だったが前線から大きな声で敵襲の合図が響く。
「デカブツが来たぞ!物陰に隠れろ!」
甲高い鳴き声が響き戦闘音を聞き付けた鳥が現れる。
「うわ、コレも変異体!?」
ツムギが物陰から銃を構えるが近くの負傷した隊員に止められる。
「無駄だ、銃弾が全く通らず傷も与えられん」
「嘘ぉ…」
呆れたと言いたげな顔でツムギはバサバサと羽ばたき滞空する鳥を観察する。
「あ、待てよ…もしかしたら」
何かに気付いたのかもう一度隠れながら銃を構える。
「何をする気だ…?」
小声で質問されるがツムギは答えず鋭い目付きで睨みじっくり目測しながら銃を発砲する。
何してるのと仲間から唖然とされるが見事巨鳥の左目を撃ち抜き撃退する。
「目ン玉まではカチカチじゃないみたいだね」
「お、お見事な腕前で…」
「良い勘してるでしょー」
笑顔でサムズアップするツムギ、難敵にダメージを負わせたと部隊の士気が上がり物陰から全員が出てワイワイとする。しかし、音も無く巨鳥が戻り敵の影に気付いた時には隠れる間もなく刺状の羽を飛ばす攻撃を行ってきた。
「も、戻って来た!退避ぃ!」
一段目の攻撃は負傷した目のおかげで命中精度が悪く数人のかすり傷で済む。
「皆さん早く隠れてください!ここは私が!」
黒姫が隠し持っていた箱を使い神姫の力を使い相殺しようと光の球を放つ。
負傷に怒る敵は尚も激しく攻撃を続け相殺できる数を上回る勢いで逃げ惑う隊員を次々と撃ち抜き倒していく。
「あー!ヤバいって!クロヒメも隠れて!」
退避し終えたツムギが声をかけるが迎撃に手一杯で黒姫は動けなく冷や汗をかいていた。
「どーしよ、こっからじゃもう片方の目潰せないや…」
ツムギは何とか手助け出来ないかと周囲を観察するも手立てがなく応援するしか出来なかった。
どちらの攻撃が緩くなるのかと緊張が走るが拮抗した戦いに文字通り水が差される。
「妹に何してくれとるンじゃー!」
ジェット水流で邪魔された鳥がよろめき黒姫の攻撃が命中し爆発する。
もくもくと上がった煙が敵を包み込む。
雷怨に乗った翔と黒鴉が黒姫の前に現れ黒鴉がお決まりの言葉を言う。
「やったかしら?」
「あー、それフラグ…」
翔はツッコミをしながら二人は雷怨から降りて翔が指示を出して煙に向かって雷撃を放つ。
「焼き鳥になりやがれ!」
煙の中から長い鳴き声が響き敵は地面に落下し焰鬼で追撃し燃やす。
「デカいだけで美味しそうに見えないわね」
黒鴉が苦笑いで翔のジョークに乗りながら妹の無事に笑顔を見せる。
翔は周囲の状況を見て苦い顔をするが黒鴉と同じように黒姫の無事に安堵する。
「ヒドイな…もう少し早く来ていれば!」
「翔君達は悪くないですよ、それよりもどうしてここに…?」
黒姫は肩で息をしながら翔達が来たことを不思議そうに見る。
その言葉に黒鴉が目をカッと見開いて怒りだす。
「アンタらが無線に応答しないから心配して戻って来たんじゃない!…あ、違う違う、それだけじゃなかった」
ポカンとした表情をされて言い訳するように黒鴉は続ける。
「攻撃対象が破壊出来ないから仕切り直しよ」
「え!?壊せなかったんですか?!」
黒姫がその報告を聞いてまた驚く。
「私の本気も通用しないなんて…どうしたものかしら」
黒鴉が親指の爪を噛んで苛々した様子で真剣に考えているとアキトが現れて黒鴉にアドバイスをする。
「そいつは違うぞ、破壊は可能だ」
「アキト!どっから…じゃなくて、何よそれ?あんな硬いもんどうやって!?」
「結論から言おう、魔法が通用しないだけだ。砲撃かミサイルかで破壊できる」
魔法と言われて黒鴉が舌打ちする。
「物理か…試してなかったわ」
「試さなくて正解だ、剣だと折れてたぞ」
アキトが折れた木刀を見せてきて黒鴉はため息をつく。
「戦車か海か空に戦闘機借りるか…司令官それでいけるかしら?」
「無線さえ生きていれば…いや、承認されるかは分からないが」
今は動いていない無線と聞いて一行はまたガックリと肩を落とすのだった。




