コード“螺”7
アキトに浅はかさを指摘された翔は悔しそうに歯を食い縛る。
黒姫が心配そうに俯く翔の顔を覗き込むように見つめてきてこのままではいけないと頬を叩いて気合いを入れる。すると後ろの方から博士達の話し声が聞こえてくる。
「それにしても文明壊してどうする気だろうねぇ…触れがたい環境にしたら向こうが困るんじゃないの?」
「神の排除の為に手段を選ばない…そういう意思の現れじゃない?」
ツムギとヨロズの二人の疑問に神華が答える。
「向こうの世界より低級な文明など綺麗にして塗り替えるつもりかと、こちらの様子を探っていたようですし」
神華はカスパーをチラッと見て説明をお願いする。
「俺の見立てなら内通者がいると考えている」
突然の発言にツムギとヨロズが一歩引いてから身構える。
「嘘でしょう?僕違うからね!?」
「ワタシだって…!」
カスパーは二人の様子を笑って、安心させるように答える。
「あくまで推測だ、堂々と重用されてて目立って内通できるとは思ってないさ」
忙しそうにする黒鴉を一度見てから翔と黒姫は博士達の話に首を突っ込む。
「じゃあこっちで回収したつなぎ服の誰かか?」
翔の言葉にツムギが首を横に振る。
「ボランティアの連中には連絡手段がないと思うよ?それに状況を知り得るなら…この研究所に…おっと」
キョロキョロと辺りを見渡してから口を塞ぐ。
「いやー、わざとじゃないからね?」
取り繕うように言葉を付け加えるが冷たい視線に居たたまれなくなりヨロズの背後に隠れる。
「堂々としろ!ワタシもそう考えていた、まぁ本当に居るならの話だけど」
神華は不安そうに博士達を見て呟く。
「なら作戦も筒抜けですね」
「そうとも限らない、今この場に居ないかもしれないぞ」
カスパーは意味深に答えて翔達を見る。
「神すら束ねるイレギュラーも居る事だ、なんとかなる物さ」
ふとツムギが残る博士について疑問を出す。
「おハゲのマークはいつ現れるんだろうねぇ?神螺担当だったよね?」
「…意外と向こう側に重用されてたりして」
翔が半分冗談で言うがカスパーの前例もあり向こうに協力している可能性を見出だす。
「あながち間違ってないかも、忠誠心高そうだったし」
ヨロズも半ば偏見を出して語り全員苦笑いになる。
そこでようやっと話が纏まった黒鴉が大きく手を叩いて全員の注目を集める。
「作戦の決行許可が降りたわ、諸々の対霧の準備は自衛隊がやるから私達は戦闘部隊と発生源への対処を行うわ」
「銃器でパパッとやれないのか?」
「手柄を全部向こうに取らせる訳にはいかないわ、まずは一ヶ所、人の少ない東京の奥多摩で試験運用よ」
地図を指差して黒鴉が説明する。
「奥多摩…ですか」
黒姫が不思議そうに首を傾げ翔も質問する。
「人が少ないのは仕事の無い都心部じゃないのか?」
「都市部はビルが多くて処理に時間かかるのよ…テストケースとして田舎のが見やすくていいわ」
黒鴉はパソコンを操作して対象の霧の写真を見せる。
高い建物も無く確かに確認はしやすそうだった。
「地上での戦闘は私や浜松、アキトも連れて覚醒者で華麗に処理するわ」
黒姫が不満そうに「自分も」と手を上げるが却下される。
「黒姫、アンタはモニタリングを頼むわ、あとバックアップ要員として待機」
「そんなぁ…」
しょぼくれる黒姫を置いて時間割をプロジェクターに映す。
「神華はここで神威達が起きるまで指揮をお願い、ツムギ!アンタは黒姫と一緒にドローンでモニタリング」
「えぇ!僕ぅ!?司令室に引きこもりたいよぉ」
「確か銃の腕いいんでしょ?データ見たわよ、いざという時によろしく…作戦は正午過ぎ、いい?移動するわよ?」
黒鴉は携帯である程度の連絡網を用いて連絡を行い翔達を連れてラウンジへ移動するのだった。




