エピローグ3
方方の変化…
夜、一人浜松家の屋根に立って天を仰ぐ神鳴は自分はどうするべきなのかと悩む。
自分は永遠を生きるが友は違う。理解しているが納得出来ないと他の神達とは別解を求めていた。
(向こうの私も同じ苦悩を抱いていた…だからアキトに固執していた…私もそうあるべきなのかな)
それとも神威の様に一時期関係を断つ事で悟りを開くかと、翔達の子孫に依存するような事が願いなのかと思考を巡らせる。
(長い孤独の果ての暖かい今を失うのが怖い…前に進むのが怖い)
たった数日関係を断って環境に慣れようという提案も吹き飛ばしそうな孤独感、一人で悩んでもしょうがないと神鳴は自身の管理する大樹の中の空間に入り瞑想を始める。
この世界での自分の生い立ちから歴史を辿る。
未来の研究機関での実験生物としての扱い、そんな中で現れた世界再編の為に奮闘して自分を理解してくれる二人。
始めて自分から助けたいと願って力を使って助けた人、必ずまた会えると言われて悠久の刻、待ち望んだ再会。
本人は全くそんな事を知らずそれでも幾度の敗北を越えてやっと時が進んだあの日。
新たな友と切り開き創り出した今の世界。自分が正しいと信じ友が作る新たな輪、取り巻く環境が明るく楽しくなるにつれて自分の中でいずれ必ず来る変化と別れを見ないフリをしていた。
神鳴はもう一度天を仰いで満天の星空に願わくば皆が幸せになればいいと妥協するような思いを口にする。そして気付く。
「違う、私が…いえ、私は!ハッピーエンドが見たいの!」
神鳴の心の底の声に答えるようにピカッと星が光った気がした。
一念発起した神鳴の招集で翔達は神楽達の世界に呼び出される。
「という訳で!私はハッピーエンド至上主義で行くわよ!」
「いや、もう十分ハッピーエンドだろ」
翔がツッコミを入れると神鳴は指振りしてチッチッチと甘いと喝を入れる。
「私は翔達のその先を見据えているのよ!」
黒姫は神鳴が今後守護神になるのかとポンと手を打つ。
末代まで面倒を見て導くのかと黒鴉は呆気に取られるが神鳴は手を開いて高らかに宣言する。
「全部!夢はでっかく!明るい未来!」
言い出したら止まらないと翔は頑張れとその壮大過ぎる願いを応援する。
「何か皆ノリが悪いわねー、新たな船出よ!?」
翔達は神鳴の選んだ道ならとそれでいいと肯定して頷くが何分背後でテンションの低い神楽が気になって仕方ないと苦笑いする。
「だってアキトが行っちゃったんですものー!私もー?ついて行きたかったけどー?世界の管理があるしぃ?」
まだ引き摺ってると黒姫は同情的な目を向ける。黒鴉は神鳴の肩を叩いて神楽を指差す。
「いきなりアンハッピーよ?なんとかしなさい」
「あれは私にはちょっと…」
早速折れるかけている神鳴、するとシュメイラが現れて神楽を一言で元に戻すと言う。
「カグラ先生、アキト君は問題無いですよ。それよりもご自愛くださいね?身重になるんですから」
神二人はボケーっとするが翔達は顔を見合わせる。
「マジ?」
翔は半信半疑で確認する。シュメイラは事前にアキトに頼まれていたからと居る内にと説明して三人は祝福し神楽は拳を掲げて真っ白にやり遂げたと燃え尽きる。話を聞き終えて神鳴が翔をジッと見つめる。
「なるほどそういうのもあるのかー」
「おい!認知外で勝手に子孫やクローン作られても困るぞ!」
黒姫が必死に翔の手を掴み渡さないとアピールするが黒鴉は意味深にそういう手もあるのかとシュメイラを見る。
「カケル君の遺伝子培養すれば可能。かもね…ふひ!」
冗談じゃないと平和な世界で世継ぎ問題を起こして溜まるかと翔と黒姫は逃げ出し黒鴉と神鳴は二人を追い掛けていく。
「冗談だけど入り用なら呼んでくれよー?」
呑気に手を振るシュメイラだったが余計な火種が出来たなと苦笑いするのだった。
未来はまだ見えず。必ず戻ると誓い旅立った者は数知れず。
それでも時は平和な世を進み続ける。神の気まぐれの中で、彼等が対峙すべき新たな脅威が現れるその日まで…彼等の自由はまだ遠い…




