コード“塔”12
塔の解体生中継の影響により実態の表側を理解してもらう事が出来て当面は内部の攻略に集中する事になる。
神楽の世界、魔法学院を尋ねる神威はその相談をアキトにしていた。
アキトは底の見えない塔の魔窟攻略について否定的な態度を取る。
「無理だな。そっちの機械でバッテリーが切れるって相当だぞ?人間が挑んだところで食料が尽きて餓死がいいとこだろうな」
「うーむ、大量に持ち込めないのか?」
「持ち込む物資が増えれば行軍が遅れる。しかし物資が無ければ長くは行軍出来ない…つまるところ兵站のジレンマだな…物事には限界がある」
機械のバッテリーと違い重量の変化が大きい人間の不便さを神威は嘆く。
夢物語をアキトは呟く。
「魔窟内で使えるテレポーターなんかがあればそんな事忘れて進めるんだがな」
「魔素が濃いから何とか出来なくも…」
魔素が濃いと言われてアキトは微妙な表情になる。
「初耳だぞ?言及する程酷いのか?」
実際に数値化するのに苦心して神威は例えて言う。
「あー、そうだな…地球が1ここが10とするなら少なくとも内部は100以上はある」
濃さが段違いと説明されてアキトは怪訝な顔をする。
「…人体がどうなるか…か?」
「体調不良で済むか…変異しかねんな」
「お前なぁ…そんなとこ攻略させようとさせんな!」
無責任過ぎるとアキトは流石に怒る。神威はそこも踏まえての攻略の指南を求めていると頭を下げる。
「知恵を貸してほしいのだ…あのバベルの塔の解体だけでは現状不安が残る…」
地球内での魔素循環を可能としても塔が残る以上問題を起こすだろうと神威は確信を持って語る。
アキトは頭を掻いて何と答えるべきか悩む。
「俺もドローンで一度探索したいが構わないか?」
「まぁ構わないが…バッテリーいっぱい、100階程降りても何も無かったぞ?」
何も無かったと聞いてアキトは耳を疑い聞き返す。神威は激しく頷いて魔窟について壁はすぐ直るし見た目以上に広くなるし魔物が見当たらないと異常性を説明する。
「魔物も居ない…か。妙だな…」
「やはり気になるよな?」
二人の会話を珍しそうにトウコが掃除途中に寄ってくる。
「珍しいですね、神威さん」
接点があまりない相手に神威は難しい顔をしてしまう。その表情に深刻な問題を抱えているのかとトウコは身構える。
「何か…あったんですか?」
二人の険しい表情にアキトは苦笑いしてフォローする。
「いや、神威は多分人付き合いが苦手でトウコを警戒しているだけだ…」
警戒されたと言われてショックを受けているがトウコを中途半端に知ってる人は誰でも警戒するとアキトは内心ツッコむ。
「まぁ、任務は順調、ちょっと魔窟攻略の相談を受けていただけだよ」
ホッとしながらトウコは外出するならちゃんと神楽に連絡して下さいと見透かされた物言いを受けて愛想笑いをするしか無くなる。トウコの働きに神威が震えながら呟く。
「やはり地獄耳か…」
「そうだな、取り敢えず今回は忘れずに外泊の報告しとくとするか…」
「夜通しやるのか?!…いや確かに根気いる作業だが…」
アキトの前向きな姿勢に神威は目を丸くするが腰据えて探索しようとなるのであった。
生中継の投げ銭に黒鴉はビジネスのニオイを強く嗅ぎ付けて一枚噛む事が出来ず社長室で悔しそうに歯ぎしりしていた。
「なんであんなに受けてんのよー!」
ただの工事現場の絵面なんて面白くもなんともないと自分の考えを目の前の疲れた神華に訴える。
「知りませんよ…世間が何に受けるかを予測出来るなら金儲けなんて楽ですよ」
大きな溜め息をお互いに吐いて黒鴉は不満そうに質問する。
「で、どうなの?ちゃんと各国の溜飲を下げれたの?」
「警戒はされてます。現状様子見、必要なら自分達も儲け話に乗らせろという姿勢ですね」
「ッチ、都合のイイオツムだわね…」
悪態つく黒鴉に神華は呆れるが聞こえてないからと黒鴉はブツブツと自分の言いたいことを呟く。
落ち着くまで黙って聞き流す神華はダレた顔をしてしまい黒鴉はムッとする。
「兎に角!他国の干渉は受けないように!」
「言われても神威ですからねぇ…」
沈黙が流れて「言う事聞く奴じゃないわね」と黒鴉はふんぞり返るのであった。




