コード“塔”9
会議室を出てアキトは神威に懸念事項を質問する。
「あんな一方的で良かったのか?ちゃんと議論すべきだったんじゃないか?」
「結論は出ているのにわざわざ議論に時間を割く必要あるか?」
「向こうの意見を聞くと聞かないじゃ大きな差だぞ?受け入れるどうこう以前に…反発食らってからじゃ…」
アキトが神威を注意すると笑って「その時の為の護衛だ」と告げてきてアキトは思わず大きな溜め息が漏れる。
廊下を進む二人の前に角待ちの清掃員に扮した暗殺者が現れて素早く手のひらに隠せるサイズの銃を向けてくる。
アキトはその引き金が引かれるよりも早く反応して思わず時を操作し敵の手を捻り敵自身に向けさせる。
指に入った力は止まらず自身を撃ち抜き当りどころが悪く絶命させてしまう。
「おっと失礼、思わず力使っちまった…」
「どこの手のものか聞きそびれたな」
神威はアキトを軽く褒めつつ遺体には目もくれず歩き出す。
アキトはチラッと顔を見て人種なんて雇われに意味無しだなとさっさと去ろうとする。
「やれやれ…外はもっとヤバいんじゃないか?」
「そうだな、ポータル開くか?」
「出来んのか?」
先程響いた銃声に周囲が慌ただしくなり神威はトイレを指差す。
「連れションかよ、トイレの扉は上下空いてて…」
運良く用具入れが密閉型のドアで神威はちちんぷいぷいと力の一旦でコロニーへのポータルを開く。
「便利だねぇ」
「権能の一つ、さぁ巻き込まれる前に行くぞ」
「神華外で待ってるだろ?お前は先に作戦実行しな」
帰ると同時に神威はポータルは閉じて外で待たされる車の神華を忘れて脱出する。
アキトはわざとらしく手を洗い手を拭きながらトイレを出て何事かと警備員に尋ねて慌てる演技をして外へ向かう。
外では中で何かあったと聞かされた神華が怪訝な顔をしてどこかへ連絡を入れていてアキトが何食わぬ顔して出てきたのを見て呆れたように溜め息をつく。
「何してるんですか!」
「正当防衛、神威は先に帰ったよ」
「帰ったぁ?!アタシの立場が…」
神華は立ち眩みするように頭を押さえてアキトは先に帰るように車を指差し促す。
「はぁ…アタシが後処理するから」
「じゃ、帰るわ」
警戒したまま車に乗り込もうとする。忘れてたようにアキトは神華に気を付けるように注意する。呆れ顔で神華は腰に手を当てる。
「アタシの能力知ってるでしょ?」
「そういう余裕ある時が一番足掬われるんだよ」
アキトの言葉にやり辛そうな顔をして神華は仕事に向かうのであった。
浜松家に戻ったアキトは暗殺騒ぎに沸き立つ世間に眉間に皺が寄る。
「神威のやつ…強硬姿勢だから反発買いやがって…」
黒姫がアキトの様子を見て苦い顔をする。
「何言ってるんですか…外から帰宅したようなので…どこ行ってたんですか?」
「ん?ここ」
アキトが画面を指差すのを見て黒姫は事件に関係してたのかと更に険しい顔をする。
「いやいやいや、正当防衛だから俺は手を出してないから」
「アキトさん?!正当防衛って?!何言ってるんです!?」
「し、仕事を全うしただけだ!」
両手を上げて無実とアピールする。
「神威が狙われてな…まぁ塔に対しての破壊を宣言したが…いや、地球に接近する事が許せんのだろうな」
「しかし狙われて怯まないんですね」
「魔物に比べたら…いや、よそう…」
暗殺者との対峙の緊張感について言及してアキトは少しズレてると気付いて首を横に振る。
「まぁ神威は動き始めているだろうから…」
「懸念は最悪の事態…ですか?」
宇宙戦争はゴメンと黒姫は嘆きながら残ったという神華を心配するのだった。
コロニーに戻り次第に神威は工作ドロイド部隊の出動を指示して月の裏側から地球へ向かわせる。
モニタリングしていた博士二人は実況して神威は調子良く頷いていた。
「神威って暗殺されかけてたのに元気だよねぇー」
「任務に集中しろ。内部調査は未知なんだぞ」
「あー、うん。ヨロズ博士は気にならないんだ?」
アキトも居てそんな事になるかと信頼を見せる。
無事に塔のてっぺんに到達したのを確認して成層圏の魔素の濃さの検知にツムギが興奮するり
「数値化する事ができるようになってこの値…ヤバいねぇ本場の神楽の世界の数十倍」
「人類が振れたらどうなるか…極薄に体調不良よりひどい事になるかもな」
宇宙へ排出していると確信するデータに神威は意気揚々と解体を宣言するのであった。
「よし!ドロイド部隊!解体開始!ドローン隊は内部へ侵入し探索!」
「「イエッサー」」




