コード“塔”7
冷静になったものの神威の独断専行を許す訳には行かないと黒鴉は神華に連絡を終えた後素早くポータルで神威達の元へ向かおうとする。
忙しない奴と翔は朝食を食べていたが突然パジャマの襟首を掴まれて引き摺られながらポータルを通される。
全員が唖然とする中、黒姫が慌てて翔と姉を追いかける。
鼻息荒く足音をわざと鳴らしながら神威のコロニーにエントリーする黒鴉。着替え前の翔は朝食のたまごサンドを片手に何で自分までと愚痴る。
黒姫が追いついて姉の暴走を止めようとする。
「姉さん!一旦落ち着きましょう!」
「取り敢えず調査結果を黙っていた件とか諸々の追求が必要よ!」
黒鴉の声が聞こえたのかツムギが顔を覗かせて「うわっ」と声を上げる。
神威も想定内と姿を見せて朝の挨拶をする。
「おはよう諸君」
「何がおはようよ?!アンタ私に嘘の調査結果話したでしょう!?何が不明よ!魔法が無くなるですって?!」
「ああ、翔から聞いたのか」
秘密にしていたが引き摺られいる翔を見て少し同情するような目をして悪気も無さそうに答える。
「正直に我もまだ確信がある訳ではない。本当に無くなるのかどうかは内部調査をしてみなければ…」
黒姫は翔を固まる姉から引き剥がし様子を窺う。
一旦状況の整理を済ませたのか黒鴉は腰に手を当てて神威を睨む。
「どうやって調査するつもり?」
「塔の上部、成層圏にある箇所に宇宙から侵入する。下手に外壁を破壊して内部に入るのは倒壊の危険性があるからな」
酸素等の問題は置いて調査する為のドローンやドロイドは幾らでもあると神威は大手を振る。
「アンタ今地球から睨まれてるのよ?接近したらどうなるか分かってんの?!」
「日本語で声明は送ったはずだが?」
日本語だったのが非常にマズいと黒鴉だけでなく翔達も注意し激しく批難する。
「仕方なかろう。盟友が日本在住なのだから…」
「盟友って…私はアンタの雇用主!」
「は?黒鴉嬢の話してないんだが?」
冷たい反応をされてショックを受ける黒鴉と盟友とはと首を傾げる黒姫。
神威は大笑いして盟友は神鳴であると銘打つ。
「下手に現地人よりも神である神鳴を指名した方が都合良かろう?それとも神藤が全て面倒事引き受けてくれるのか?」
「そ、それは…」
割と仲間の事は気に掛けて行動するというらしく黒鴉は引き下がる。放置されてた翔は気になった事を尋ねる。
「内部調査してどうする?」
「想定内の挙動をしているなら解体…だろうな。作業用のドロイドはあるから成層圏から一気に…まぁそれでも時間は掛かるが宇宙への魔素放流はすぐに無くなり地球内で循環するだろう」
塔の解体は任せろと胸を張る神威にツムギが追加でフォローを入れる。
「機能が違っても壊す事に文句はないでしょ?あんなのいつ折れるか分かんないし」
黒鴉はしばらく思考して悪天候時の事に気付いて頷く。
「有意義なものでも…そうね…台風でポッキリなんてされたら困るからね」
そこまで考えてなかったと翔と黒姫は顔を見合わせる。
神威は大きく頷いて早速とツムギに合図するが黒鴉がタンマを掛ける。
「だーかーらー!正式に政府から許可降りるまで動くなって言ってるでしょうがー!」
「面倒臭い!我は地球の人類のルールになど縛られん!」
「お黙り!迷惑は迷惑なのよ!今神田に動いてもらってるからまずは正午まで待ちなさい!昼食持ってくるから」
ツムギがご飯と聞いて喜び了解してしまい神威は軽い溜め息をついて警告だけはする。
「物事は有限、悠長な事になるなら強硬するからな?」
黒姫はふと気になって手痛い事を質問してしまう。
「どうしてそこまで親身になるのですか?人間嫌いなのに…」
「…それ言う?言っちゃう?」
神威の表情が複雑そうに歪む。ツムギはニヤニヤしながら皆に指を向けて面白がってツンツンする仕草をする。
「人間は嫌いだけど友人は大切だもんねー」
「小っ恥ずかしい言い回しするな!…取り敢えず神鳴の帰還が出来なくなるのは危険…とそういう事だ!」
神威は真っ赤になった顔で三人は追い払われるのであった。




