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神の下僕は自由になりたい  作者: D沖信
世界の理と外の世界
737/783

コード“塔”2

編成された調査団は一同港へ集まっていた。

企業として調査を行うのは神藤や未来テック、その他重工業に携わる一般企業と色とりどり。

国が派遣したのは冶金(やきん)学者から考古学関係までコチラも様々であり本腰具合が(うかが)えた。

猪尾は聞いたことのある企業名に口が開きっぱなしであったが加藤は各方面の第一人者ばかりだと国の用意した要人達の方に注目していた。

神威はそんな護衛達に不安というよりも不満を抱いて水戸に愚痴る。

「他のグループを気にするようではまだまだ甘いな。落ち着き役割を果たして貰いたいものだ」

「あ、私にも言ってます?」

海で自由に泳いで良いと言われていることに少し浮足立っていた水戸は頬を掻いて謝る。

神威は頭を抑えて馬鹿しか居ないと悲壮感を(あら)わにするがヨロズからプレッシャーは無い方が良いと頭を小突かれる。

「流石にこれから向かうのは人知を超えた存在だ。恐怖に震えるより多少のバカの方が使いやすい」

口では冷静であるがヨロズは遠くに見える黒い塔に緊張しているようだった。

事前に配られた写真を手にツムギが報告書を読み上げる。

「『怪物など敵意や危害を加える存在は確認出来ず』…まぁコレに触れてないならそうなのかもねぇ。にしても…」

ツムギは写真の塔の表面の彫刻の様式などが遠くで議論されているのを見て小馬鹿にするように笑う。

神威もヨロズも険しい顔でソレを確認して水戸はどういう意味なのかと尋ねる。

「確信はない…がワタシ達には多少(ゆかり)のある物に似ていてな」

「未来テックも内心穏やかではないであろうな」

二人はお手製の箱を手にチラッと水戸に見せ騒ぎにはするなよとすぐに仕舞うのであった。


幾つかの船が港に到着して調査団を複数に分けて乗り込ませ目標へ出発する。

近付くにつれて外で風景を眺めていた猪尾は船酔いか気分が悪くなり顔を青褪(あおざ)めさせる。

「あんま経験ないけど船ダメだったかぁ…」

ハンディカムで撮影していたツムギはゲラゲラ笑い猪尾の背中を叩く。

「吐いて楽になったら?胃の中空にしたら楽になるんじゃないー?」

「そ、そんな護衛役なのに体が余計ダメになるだろー?」

波に揺られ視界も体も上下されて最悪な気分を味わってしまい気も滅入っていた。


先頭の船が塔に横付け始めて自分達も準備しないとと慌ただしく動く中で船内から出てきた加藤も調子悪そうにしていた。

仲間を見つけたと猪尾は気が楽になるが相変わらず吐き気はあってフラフラである。

「うーむ、筋肉の調子が…船はダメだったか?…おや船酔いか?」

「加藤パイセンは違うんッスか?」

「ちょっと身体が鈍ったような…?まぁ酔いは大丈夫だ…酔い止め薬があるからな!」

仲間じゃなかったと肩を落とす猪尾だったが薬と聞いて一つもらい何とか飲み込む。そこに冬なのに薄着の水戸が現れてストレッチを始め船頭に立つ神威達と打ち合わせを始める。

「海中の撮影は任せて下さい。あ、水中用カメラですね?はい」

カメラを受け取りドボンと海に飛び込み人魚と知らない面々は大慌てするが神威が問題無いと説明して戻りの縄梯子だけ用意させる。

ゴム手袋を着用してツムギに機材を準備させる。

「さて、我々は…まずは表面の調査だな」

三人は真剣に自分達の作った箱との類似点を指摘し合い間違いなく塔は類似した何かであると推論して作業を開始する。

「大気、温度、湿度、電波…うーむ特に空間異常は起きていないな…」

神威の言葉にヨロズは異議を唱える。

「少し息苦しくはあると思うが…」

「そうかね?圧迫感のある巨大建造物と船の上というのもあるのではないか?」

ツムギもデータを証拠にその通りと天を見上げる。

「いやー、それにしてもデカいねぇ…宇宙まで行ってるんじゃない?軌道エレベータみたい」

軌道エレベータと聞いて神威の眉間に皺が寄る。

「宇宙は我の専売特許だぞ!」

「ははっ何に張り合ってるのさー」

ムキになっているのを茶化すツムギ、二人のやり取りにやれやれ顔のヨロズは這々(ほうほう)(てい)で寄ってくる猪尾に目をやる。

「酔い止め薬でもあったか?」

「ええ、貰いました…でも何か足元がふわふわしてて」

膝に手をやり猪尾はだらしない表情で不調を訴える。

「船の上は慣れていないようだしな…かく言うワタシも…まぁすぐに仕事を切り上げてデータを精査するからもう少しの我慢だ」

慣れない所で仕事はしたくないなと笑い合いそそくさと壁面を少し削り組成サンプルを回収する。

海中の撮影を終えて冬の海に少しチアノーゼの症状が出ている水戸を引き上げさせる。

「葵さん大丈夫ッスか…?」

「す、少し冷えただけです…あはは。ちょっと暖を取りたいですね」

メンバーは今出来る仕事を終わらせて帰港する事となるのであった。

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