表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神の下僕は自由になりたい  作者: D沖信
世界の理と外の世界
726/783

コード“窟”6

こっ酷く叱られてしょんぼりしている黒鴉を尻目に翔は疲れを取るためにソファに横になりながら情報収集を行う。

(とりあえず魔窟のサイズと難易度はまばらみたいだな…)

楽勝と金貨を見せびらかすSNSの投稿と敵が強すぎて撤退したと悔しがる投稿と色々と目に付く。

暗い雰囲気の黒鴉が背もたれから顔を覗かせて羨ましがる。

「いいわよねー金貨…私達なんて車や機材を失ったのよ?」

損ばかりだと愚痴りながら投稿を自分の携帯で確認しながら鼻で笑う。

「本当にヤバいのは報告の無い所よ、都心部でそういうのあるか確認しなさい」

「ん?強敵出て勝てないってのは?」

「馬鹿ね、生還してる時点で難敵ではあっても超危険では無いわよ」

黒鴉の言葉に翔はなるほどと頷く。しかしどこに魔窟がどれだけ出現しているのかという情報は持っていなくて「分かるか!」とノリツッコミする。

「アンタを頼りにはしてないわよ。明日までにデータ出すからどこ行くか決めてもらうわよ」

黒鴉の言葉を聞いた妹がスッと現れてドンヨリとした空気を放つ。

「行くなってさっき言いましたよね?」

「今回は本気、どの道他の覚醒者が苦戦するようなら私達が出向かないと死者増えるだけよ?」

そんな危険な所行って欲しくないと訴える黒姫だったが被害が広まる方が良くないことだとちゃんとした対策もあると自信満々に黒鴉は語る。

「さっさと攻略出来るところは攻略、本当に押さえるべき危険地帯は国で管理。これが最善策よ」

出入り口を見張るという単純だが確実な方法を示されて黒姫は小さく頷いて夕食作りに戻る。

黒鴉は自分達が行った魔窟のお宝が無かったことを黒姫にバレない程度に落胆する。

「なんでそれっぽいもの一つも無かったのかしらね…」

「迷宮になる時に周囲の物、成分が変化してるとか?ほら、廃墟に貴金属なんてそんなにあるわけ無いだろうし…無から有が作られるとは思えない」

論理的な解答に黒鴉は翔を気持ち悪がる。

「なんでそんな夢の無いこと言うのかしら…はぁー、探索報酬がどこの財源から出てるのか分かってるのかしら?」

「会社が出してるんじゃないのかよ?」

「そんな余裕無いわよ。大もとは国よ?補助金という名目の…」

結局は税金と知って渋い顔になる翔に黒鴉は不都合な世の中であると大きく溜め息をつくのであった。


地球の様子を確認しに来ていたアキトは家族には内緒に異世界モール最寄りの地下鉄の再開発が放棄され放置された区画の魔窟の入り口を訪れていた。

神藤の説明会には参加しておらず危険性は伝わっていなかったがモール近くにあるのは困ると探索に乗り出す。

通路行き止まりの工事中の扉に近付くと空気が変わりさっきまで閉まっていたはずの扉が(ひしゃ)げて奥へ入れるようになっていた。

(これなら好奇心で一般人は近寄らないな…まぁ魔物が出てきたら意味ないが)

歪んだ扉を動かして中の様子を確認する。わざわざ視界が悪くならない様に配線され明かりもある工事中の入り組んだトンネル内が見えて感心しながら踏み入る。

のっけから戦闘の痕跡がありアキトは転がっている箱を拾う。探知モードのままで良くわからないが地図が生成、表示されていて便利だとほくそ笑む。

すぐに氷雨に警告されて臨戦態勢に入りスコップやツルハシを手にした背は小さいが鼻の大きな頭巾集団がアキトを囲み何かコソコソと作戦を立てている。

「ノーム…か?」

刀に手を当てて殺気を向けると工具を振り回しながら襲い掛かってくる。アキトは最小限の動きで回避してカウンターで一撃で次々と仕留めていく。

「数ばっかりで大した事ないな…」

見えている範囲の敵を全て斬り伏せたアキトは再度地図を確認しながら微妙な表情になる。

「こういうのって全部埋めたくなるよなぁ…」

氷雨に軽くツッコまれながらも好奇心や冒険心は大事だぞと一人芝居する。

「いいかー?こういう迷宮ってのは行き止まりを一個一個調べるのが醍醐味なんだろうが。ゴールへ進んでると思ったらちょっと引き返すぐらいがいいんだぞ?お宝やイベントの取り逃しがあったら嫌だろう?…いや、そんなものあるわけないんだが…」

早く終わらせないと怒られるぞと氷雨に説教をくらいつつアキトは魔窟を進む。

少し進むと人工的なトンネルから手掘りのような穴に変わりアキトは険しい表情になるが手前に蒲鉾(かまぼこ)状の蓋がされた木箱を見つけて口をあんぐりと開ける。

「おいおい…嘘だろ!?コレってアレか!?マジかよ、見ろ氷雨!宝箱だぞ!鍵穴っぽいのあるけど…鍵は掛かってないな」

軽く蓋が動くのを確認するアキトだったが氷雨に注意されて箱を再度確認する。

「あー、罠か。外す道具とかないし…でも中身気になるよなぁ」

氷雨はアキトにそれ以上はダメだと言いたげに宝箱を氷漬けにしてしまいアキトは残念と肩を落とすのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ