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神の下僕は自由になりたい  作者: D沖信
世界の理と外の世界
724/783

コード“窟”4

競い合うように魔物を狩る二人、手応えの薄い敵に翔は疑念を抱く。

(一体一体はそこまで驚異じゃない…ボスが居るって設定なら群れがボスと最初は考えたが…これは絶対別に居るよな…)

黒鴉が意気揚々と討伐数を口に出して「(はーち)」と伸ばしながら翔を挑発する。翔は警戒すべきタイミングなのに距離が離れていることに気付いてすぐに合流しようとする。

そうはさせまいと間に魔物が数匹割って入り鉈を振り回す。

「流石に鬱陶しいな!」

雷怨の雷撃の乗った一刀にて斬り伏せてどかされた瓦礫を越えて黒鴉を追う。

「前に出過ぎだ!」

「勝負に勝てないからって泣き付くつもり?」

黒鴉は余裕ぶっているが翔の目にボスと思わしき何かが見えて黒鴉にも注目させる。宴会場の舞台の中央に絡まり合った木のような異質な何かが生えていた。

時折脈動する様にブルっと震える気色悪いそれに黒鴉もブレーキが掛かりバックステップする。直後、黒鴉の進行ルートに床の腐りかけの畳を貫いて根のようなものが生える。

「うわ…何アレ」

敵のビジュアルにドン引きする二人に潜んでいた魔物が襲い掛かるも華麗な連携で返り討ちにする。

二人は一旦手を止めてボスへの対策を考える事にする。

「どうする、植物かしら…根を張ってるって事はダンジョンそのものがアレに?」

「建物壊すってのは実は正解だったかもなぁ…」

ここから攻撃しても建物の崩落に巻き込まれると外に出る算段を立てる。しかし外の雑魚を蹴散らす作業もあるのかと面倒くさそうに黒鴉はボヤいて翔を指差す。

「燃やしなさい」

「やっぱりそうなるか…」

翔も考えていたようで仕方無いと刀身に炎を宿してそりゃと一撃放ち火を放つ。

魔法の火はそれなりに通りが良く本体だけでなくその周囲にも広がる。身を(よじ)るようにギチギチと嫌な音を立てる敵に黒鴉は嫌な空気を感じ取る。

「なーんか…ヤバそう」

「ヤバいというか…火事だな」

冷静というかボケっとしていた二人は顔を見合わせて慌ててその場から逃げ出す。

「周囲に火をつけることなくない!?」

「仕方ねぇだろ!木製のもの多いんだもの!」

「ボヤ騒ぎなんて良くないわよ!絶対ダメなヤツ!」

火をつけろと言ったのはお前だろと翔は責任転嫁してしまうがやったのは自分と肩を落としながら何とか燃え広がる火から逃れようと走る。

魔物達はそれでも翔達に襲い掛かりヤケクソな二人に蹴散らされていく。

二人が外に飛び出すと魔窟の外へ出ようとしていた魔物達が出てきた二人に驚きどっちへ行くのかと二度見してくる。

黒鴉が外に出て気持ち良く吹っ飛ばすとバハムートを呼び出してすべて押し流す。

「浜松ぅ、建物の方は?」

建物が軽く鳴動して燃えながら木が建物を突き破り歪んだ顔のような木目を現す。

「出たぞ」

「燃えてるわねー、ほっといても死にそう」

ウネウネと悶えながら鎮火しようと瓦礫に必死に擦り付けていた。

「根っこが生きてたらダメなタイプ?」

後はボスだけだが中々死なないのをジト目で見つめる。

翔は追加で火を付けるかと刀を構え精霊を両脇に立たせる。消火させちゃう黒鴉は好きにしなさいと腰に手を当ててやっちゃえと余裕な表情をする。

二度も同じ攻撃は受けれないと大暴れして地面から根が伸びて二人を攻撃してくる。

ヒョイと素早く避けて翔はその根にも炎をぶつける。

敵の木目が苦痛に歪むように変化して枝葉を揺らして悲鳴を上げる。

「爽快ね!もっと燃えるが良いわ」

「馬鹿!山火事になるだろうが!」

廃墟からの不審火で山火事、貴重な山林が焼け野原の文言が脳裏に浮かんで黒鴉は剣を手にする。

「じゃあ眺めてないで倒しなさいよ!消火なら私がするから!」

翔は「はいはい」と雷怨に跨り瓦礫をぴょんぴょん飛び越えてもはや焦げついた枯れ木となった敵に刀を差し込み内側から電流を流し火を付けトドメを刺す。

周囲の雰囲気がゆっくりと元の廃墟前の空気感に戻っていきボスもシュワシュワと消えていく。

残ったのは半壊しちょっと焦げ臭い廃墟と黒鴉はやり過ぎたかと冷や汗を垂らしながら無線を使い久坂と連絡を取ろうとする。しかし応答は無く時計を確認する。

「浜松、時間は?」

「ん?まだ15時だ…」

何かあったなとすぐに戻るわよと黒鴉は身を翻し、翔もこんな所に長居したくないと帰路につく。


車のある場所まで戻ると戦闘のあった様子と破壊されたガードレールと崖下に落とされた車に二人は顔面蒼白になる。

「久坂っ!まさか!?」

崖下に向かい久坂の名前を呼ぶ黒鴉、翔も最悪の事態に深刻な顔をする。

しかしそんな二人の心配をヨソに久坂が一仕事終えて肩を解しながら返事をする。

「お嬢、俺なら無事ですよ。車と無線機やられちゃいましたが…」

「し、心配させないでよね!」

魔物の奇襲に咄嗟に対応して生き延びた久坂に安堵する二人であった。

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