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神の下僕は自由になりたい  作者: D沖信
世界の理と外の世界
723/783

コード“窟”3

廃墟敷地内、屋外だというのに既に空気感が異質な物となり空模様も鉛色に染まり一気に暗くなる。

翔と黒鴉の二人は初めての魔窟に多少の驚きと戸惑いを感じつつ一層の警戒を行う。

「浜松、アンタは後ろの警戒よ。私が前を行くわ」

「それは助かる。こんなとこ先頭に立ちたくもない」

異様な雰囲気に一人なら絶対無理だと翔は苦笑いしつつ武器を呼び出し携える。黒鴉もノヅチを手にする。

「バハムートじゃないのか?」

「屋内は狭いし…破壊した所でどうなるか未知数だし…てか私の所有物件じゃないし訴訟問題にしたくないわよ」

一発で建物ごと消し飛ばすものだと思っていたが冷静な黒鴉の言葉に納得する翔。

「なまはげの怪物か…それがボスだと思うか?」

翔は疑問を口にしつつゆっくり建物に近付きながら中の様子を窺う。

黒鴉は割れたガラス戸の入り口に近付きパキパキと音を鳴らして息を飲む。思ったより大きい音に背筋がピンとした二人はそのまま耳を済ませる。

草木の揺れ擦れる音におっかなびっくりしつつも内部が静かな様子に二人して同じ疑問を抱く。

「生き物…いえ、魔物の生活音もしないわね…」

「そうだな、コンクリート建築だから音は響くと思うんだが…」

するとガサガサと音を立てて建物外の草木をかき分けて子鬼の様な子供サイズの鬼がぞろぞろと現れる。金棒を振り回し翔達を威嚇し建物内へ追い込もうとしてきて二人はコソコソと小声でやり取りする。

「報告者を逃がしたから追い込み漁ってところかしら?」

「どうする?相手するか?」

「小物なんて幾ら相手しても同じよ…ボスを探すわよ」

ゆっくり後退(あとずさ)りしながら細かいガラス片をパキパキと踏みながら屋内へ入っていく。

「離れずに付いて来なさい」

「ああ、一人で中に残りたくなんか無いからな」

二人が建物内に入っていったのを見て鬼達は喜ぶように飛び跳ね建物を囲んで逃げ道を無くそうと動くも中へは入って来る様子を見せなかった。

ボスへの信頼か凶暴な何かがいるのか分からなかったが不気味だと二人は感じつつも奥へ進む事を選ぶのであった。


地図を作りながら埃とカビ臭い屋内に顔を(しか)める二人、翔は見取り図を見つけて黒鴉を呼び止める。

「黒鴉!営業当時の地図があったぞ!」

「馬鹿ね、ダンジョンに変容した建物の見取り図なんて価値は…」

呆れつつも指差されて見取り図が異質な物になっているのに気付いて黒鴉は自分の持つ測定機の地図と比較する。

「あら…変化した空間に合わせてくれてるのかしら」

翔は一応メモしようと軽くメモして先にある宴会場を指差す。

「一応広間はここだな…目と鼻の先」

「短いダンジョンだこと。階段も使わずに済むわね」

二人が地図通りの通路に目をやると瓦礫で塞がっていて渋い顔をする。

「このわざとらしい通行止めめェ!」

黒鴉はイライラした様子でふっ飛ばしてやると剣を抜く。

「さ、最初の冷静さはどこいった!?」

「…どうせ解体するなら私が慈善でやってやったほうが良くない?」

「良くない!」

迂回できるんだからしようと翔は説得するが床抜けたら困るしと返されて翔はボロボロの天井を見つめる。

(まぁ確かに崩落されても…魔物そのものが破壊したって話だし…)

本当に迂回するのかと黒鴉に睨まれて翔も瓦礫をどかせるなら試す価値はあると建物を壊さない程度にと伝える。

「よし、行くわよノヅチ!」

黒鴉は勢い良く精霊を呼び出すと瓦礫に突進させる。

軽い衝撃が床を伝って感じられると同時に瓦礫とは違う方向から壁を破壊しながら(くだん)のなまはげが現れる。

「まじか!焰鬼!」

ノヅチじゃ守りが間に合わないと翔は精霊を呼び出して素早くなまはげに組み付かせる。

瓦礫がどかされると同時にノヅチに向かってもう一匹色の違うなまはげが現れて翔と黒鴉は互いの背を預ける。

「マズいな…まだ居るかも」

「弱音は無しよ。作戦に支障無し殲滅するわ!浜松、アンタは二刀流よ!」

「仕方ないな…やってやるか!」

雷怨も呼び出し迎撃に当たる。二人の不安通りまだまだ現れる敵に黒鴉はイライラした様子だったが一匹一匹はそこまで強くないと理解する。

「どっちか多く討伐出来るか勝負よ!」

「絶対に虚偽報告する気だろー?!」

黒鴉はニヤリとしながら一刀両断して大きな声で数を数え始めて翔も仕方なく下らない勝負に付き合うことになるのだった。

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