コード“界”15
アキトの言葉を真に受けた黒鴉は手掛かりを未来テックに頼る事とする。
『魔物召喚の仕組み?あーちゃん俺様の事疑ってる!?』
「次その呼び方したら首撥ね飛ばすわよ?」
話がそれそうだとクラウスは笑って謝り返答して良いのか唸りながら悩んでいた。
「いい?今現れてる魔物は魔石にもならずに消えちゃうの、そっちの技術にヒントがあるかもしれないのよ」
『って言われてもなー、システム的には精霊に似てるんじゃないかなぁ?こっちのはイメージを具現化させてるだけだから』
「はぁ?イメージぃ?」
イメージという言葉は遅れて帰ってきた翔に大きなヒントを与えた。
「アキトさんの仮説を後押しする…ちょっといいか?」
黒鴉は翔に肩を叩かれて通話を変わる。
翔から伝えられたアキトの話した世界の人々の意思理論を聞いて黒鴉は小馬鹿に笑うがクラウスは真剣な声色になる。
『成る程、神の管理が緩まると人の意思が…生命というものはネガティブな思考するものだからね…黒鴉嬢、すぐに情報操作しよう』
「操作って…どうするのよ?!」
『無秩序にルールを与えてコントロールする。魔物は魔窟と紐付ける』
頭が痛くなる話に黒鴉は立ち眩みするがコントロールと聞いて仕方ないと溜め息をつく。
「で、どう情報操作するのマスメディア?」
『おいおい、SNSとかの方が早いぞ?』
「禁止されてるのよねー」
翔を睨む黒鴉、クラウスは笑って咳込む。しかし今は社会実験をする必要があると説得されて翔は渋々許可する。
「でもコイツ余計な事言うからなぁ」
『復活挨拶と魔物の出現のルールを呟けばいい。我々が拡散して世間に周知し社会実験といこう』
丁度黒姫達も帰宅してその話を聞いて玉藻前が軽い調子でやってみようと促す。黒鴉はウキウキしながら根本的な事を尋ねる。
「どこをその魔窟とやらに仕立てる?写真とかあると良いわよね?」
『適当に洞窟の写真でもどっかの怪しい建物でも…』
クラウスの言葉によっしゃとガッツポーズして通話を切って早速情報拡散を始めるのであった。
各所の協力を得て黒鴉のメッセージは一気に日本全体から世界へ羽ばたく。
『怪物の出どころは魔窟、色んな所にあるから見つけたら最寄りの機関に報告を』
富士樹海の写真、小さな洞穴の写真、廃墟ビルの写真などを載せたそれは周知されていき若者を中心に議論を呼び意識をソレに集中させる事が出来た。
「凄いわ、リプライとイイネの数が!あ!今私満たされてる!」
自己顕示欲が満たされていく悲しき承認欲求モンスターが興奮の絶頂を味わっていた。
それをスルーして黒姫は神華に状況を尋ねる。
「マスメディアには?」
『ええ、伝えています。ネットニュースにもします。すぐに中高年層にも周知されるでしょう』
「魔物の出現はどうですか?」
当初のコントロールの話題になると神華は困ったように唸る。
『うーん、まだ通達して時間も浅いので…明日には変化が出るとは思いますが…』
流石にすぐに大きな変化は出ていないと伝える。しかし一つ変化があったと報告する。
『実際に魔窟の出現は確認されています…』
「えぇ?!」
仮説が完全に裏付けられて半信半疑だった黒姫は思わず叫んでしまう。
『黒鴉様の載せた写真の影響か都内廃ビルがダンジョンに変化したと覚醒者から報告が来ています。政府からも富士樹海に地盤の変化があったと…』
黒姫は結構な規模で変化が起きていると青ざめて震える。
近くで情報の拡散協力していた翔に思っていたよりもヤバい事になったと黒姫は伝えて二人で頭を抱える。
二人してどうしようと慌てふためくと天狗になっている黒鴉がゲラゲラ笑う。
「何悩んでるのよ!?魔窟を閉じる方法を作ればいいのよ!」
「えぇ…」
「作れたんだから消せる。ルールを設ければ世界は納得する!あ、ついでだからお宝とか用意する?」
調子に乗って完全に面白がっている黒鴉、魔物の出現のコントロールと魔窟のコントロールを出来ると確信している黒鴉は任せときなさいと素早い操作でSNSを更新する。
『出現した魔窟は内部のボスを討伐すると消滅するらしいわ。お宝もあるって報告あったけど事件解決が優先よね!』
速攻で拡散されていき黒鴉は変な笑い声を上げて腹を抱える。流石に宝はやり過ぎだと翔は怒る。
「宝なんて書いたら無用心な人や変な輩が近付くだろうが!」
「魔石で稼げないならそっちで稼がないと!」
「お前…やっぱりSNS禁止だ!」
こんな調子で神鳴が帰ってくるまでに世界を元に戻せるのかと翔達は不安になってしまうのであった。




