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神の下僕は自由になりたい  作者: D沖信
世界の理と外の世界
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コード“界”8

翌朝、翔の弁当と朝食を作る黒姫はまばらに起きてくる居候組に挨拶しながらトーストとスクランブルエッグを笑顔で配膳する。

玉藻前は大きな欠伸して朝食を頬張る。

「ふぁー。ご機嫌やねぇ、昨日のパニックが嘘のようやな」

「あ、その事何ですが姉さんと相談したんですが周知は無しでいこうと思います」

「そうなん?…まぁ皆口軽そうやもんなぁ」

リョウが玉藻前をジッと見つめる。

「な!ウチが口軽い思っとるなー!?」

玉藻前は残ったトーストにおかずを全部乗せて頬張り口にチャックするようジェスチャーする。

「義理堅いは口固い?」

玉藻前はウンウンと頷いて口の固さをアピールする。

アミラはお茶を飲みながら一言だけ呟く。

「余計なお喋りしなきゃよいのですわ」

「それはそうと…黒鴉は?」

リョウは弁当を作り終えて腰を軽く叩く黒姫に尋ねる。

「姉さんは朝早くから色んな会社の重役と打ち合わせがあるようで…先に出社してます」

「早朝からお仕事なんて難儀ですわねぇ」

「あれでも姉さん仕事人ですから…ワーカホリック気味なんですよね」

手広くやる行動力の化身と黒姫が説明するとそういえばそうだったと三人は口を揃えて「ご馳走様でした」と挨拶して着替えに向かう。

「おはよー」

三人が居なくなったのを見計らって翔が起きてきて黒姫に挨拶して洗面所へ向かう。

「もう、時間ギリギリになっちゃいますよー」

平和な空気感で何気ない一日が始まるのであった。


神鳴の不在は極秘にしていてアキトも決して口外しなかったが別でその事実を感じ取った者が一人居た。

ボロアパートの一室で朝のニュースを見ていた亜紀人である。

(細かい時間操作が起きない…悪戯(いたずら)しないように改心…する奴じゃないもんな。何かあったか?)

実は普段からちょっと時間を操作して浜松家の隠されたオヤツの位置を探索していたりつまみ食いで怒られた事を無かった事にしたりで短時間の時間跳躍をしていてそれらを一日以上感知出来なかった亜紀人は怪訝な顔をする。

「どうかなさいましたか?亜紀人さん」

神姫が和食の朝食を運んできて卓につく。

「いや、平和は何時(いつ)まで続くのかなーってな」

「まあ!物騒な事言いますねー!予感…ですか?」

納豆を混ぜながら亜紀人は自分の予感が間違っている事を祈りながら涼しい顔をして何でもないと笑い話しを変える。

「あー、確か今日モールのメンテだろ?居候組に神鳴が元気かどうか聞いておいてくれ」

「…?はい。分かりました」

意味深な言葉に小首を傾げながら了承する神姫であった。


亜紀人は未来テックへ神姫は異世界モールへ出社する。

神姫は事務室で壁に手を当ててモール全体の情報を読み取り自身の作り出した空間の異常を調査する。

「壁面天井良し、配線配管良し…電力空調異常無し。空間接続も問題無し」

神姫の言葉を元に隣でリョウが結果をメモしていく。

「ん…、今週もオッケー…」

リョウは指で丸を作って定期調査の報告書にサインを書き込む。神姫は一呼吸置いて壁から手を話リョウに神鳴について質問する。

「旦那から神鳴が息災かどうか聞くよう言われてまして」

事務処理していたアミラがドキッとしてピクッと反応する。反面リョウは冷静に「元気」と一言だけ答える。

普段から口数の少ないリョウの言葉を信用しホッとする神姫は仕事を終えて帰ってしまう。

アミラは冷や汗を垂らして神姫が帰ったのを確認してからリョウの冷静さを(うらや)む。

「よく顔や態度に出さずに返答出来ましたわね」

「普段から一言で返す癖があるから…」

続けて「でも」とリョウは難しい表情をする。

「質問されたという事はもう一人の翔さんは勘付いてる…かも」

「…会っても居ないのに?凄い勘してますわ」

二人は嫌な予感を覚えるがどうする事も出来ないと気持ちを切り替えて仕事に集中しようとするのであった。


亜紀人は神姫から『神鳴は健在』とメッセージを受け取り会議前に鼻で笑う。

(わざわざそんな言い方…まぁ今は額面通りに受け取るか)

亜紀人は詮索しないつもりになっていたが『戰』のイベント日程の打ち合わせに来ていた黒鴉と偶々遭遇して軽く手を上げて言葉少なく挨拶する。

「珍しいわね…選手としてトレーニングしてるんじゃないの?」

「結界の復活も無効化しちまうから俺は出禁だよ。だから普通に勤務」

黒鴉は申し訳無さそうに「あっ」と声を漏らして亜紀人から睨まれる。亜紀人は挑発するように神鳴の事を尋ねる。

「神鳴はどうした?」

「え?あー、そのー」

露骨に挙動不審な反応になる黒鴉に対して亜紀人は口に指を当てる。

「聞いて悪かったな。やっぱりか…ここは敵地だ冷静になれよ?」

「い、言われなくても!」

ちょっと声が大きくなり黒鴉は肩を落としてまだまだ化かし合いは出来ないと落胆するのであった。

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