コード“革”13
急遽始まった黒鴉対外の小夜の一戦、一度は翔との連携で倒した事がある黒鴉は挑発してきた事に一言申してやろうと口を開く。
「ねえ」
しかし小夜は黒鴉と会話するつもりは無いようで一気に距離を詰めて拳を素早く放つ。
咄嗟に剣で防御する。後方にぶっ飛ばされ結界に背中をぶつける。何とか踏ん張ったとホッとするもピシッと剣にヒビの入る音がして黒鴉は青ざめる。
(ちょっと!冗談じゃないわよ!バハムートが!)
大切な相棒がオシャカにされてたまるかと武器をチェンジする。
(ルール上召喚するまでは確定じゃないわよね。なら…ノヅチ!行くわよ!)
二本目を呼び出したのを見て小夜は黒鴉を指差して文句を言う。
「ズルいよ!武器は一つでしょ!?」
「あら、ルールでは精霊は一体よ?武器は身に付けて持ち込めるなら装備出来る数に制限は無いわ!」
ざわざわとスタッフが外で「そうなの?」とか審議を始める。
声は聞こえないが黒鴉は察して追撃しようと身構える小夜を止める。
「ちょっと待ちなさい!審議中ね。アンタ不戦勝かもよ?」
「関係ない!ブッ飛ばす!」
「じゃあやりましょう。続行よ!審議は不要!」
ルールに後ろから刺されても困ると黒鴉は小夜の同意を得て試合が再開する。
既に地中に潜らせて待機させた黒鴉は小夜に動かれる前に自分から攻めて小夜のカウンターを誘う。
狙い通り小夜はグッと腰を落としてその場で迎え撃つ姿勢を取る。
「剣撃なんて見え見えだよ!」
わざわざ口に出す辺りまだまだ可愛いものねと黒鴉はニヤリとしてペンダントを服の下から出して叫ぶ。
「光魔法!目潰し!」
魔力を流し込み召喚していない精霊ウィスプの力を借りてピカッとペンダントが燦々と輝き集中していた小夜の視界を襲う。
全員が「汚い」と黒鴉の戦術の卑怯っぷりに呆れ、召喚してなくても能力使っていいのかと翔がまたルールブックを確認し始める。
小夜は目を瞑り踏ん張りながら直前の黒鴉の動きから剣の攻撃の角度とタイミングを予測して前にダッキングして黒鴉を捕まえようとする。不意に足元の感覚が無くなり視界も使えず何が起きたのかと混乱に陥り転ばされる。
大ミミズの精霊ノヅチの足元掘削の効果で落とし穴の様な穴が開き小夜の動きを封じたのだ。
「悪いわね、私そういうところストイックだから」
「卑怯者!」
ルール無用で同意したのはお前だと黒鴉が叫び小夜の視界が復活する前にトドメを入れるのだった。
この試合は成立しているのかとスタッフ達は困惑する。
黒鴉はバハムートのダメージを確認して修繕の有無を確認して直っているのを見てホッと胸を撫でおろす。
小夜は仕切りに黒鴉を卑怯者と罵るが黒鴉は小夜に冷たく指摘する。
「私の精霊を一度相手したバハムートに確定しないで未知にするからそうなるのよ。相手の攻め手を確認しない無鉄砲さは治しなさい」
「っぐ…ぬぬぬ!」
光魔法に関しては知っている人から見たらルール違反だろとアキトは控室で呆れるが本を確認していた翔は微妙な顔をする。
「出してないから証明出来ないし魔法の範囲ってなるかもしれません」
「へー、じゃあお前、次焰鬼使いながら電気使ってみろよ?」
「俺選手じゃないんで公式ルールは…って、え?次?」
アキトは画面を指差して次お前行けと真顔で言われる。
「なんだ?氷雨貸そうか?」
そういう話しじゃないと翔は首を横に振る。
「最強のアキトさんが行くべきでは!?」
「この世界の命運握っていいのか?俺外の人間だぞ?」
正論で殴られて翔は返答に困る。アキトは続ける。
「世界の有用性の証明するには全部勝つ、その意気で行かないとな?ゴールポスト動かされてるし」
「いや…でも…」
アキトのニヤニヤ顔を見て単純に出たくないと察した翔はそれを指摘しようとするがアキトは先手を打つ。
「やっぱり最後は全戦全勝のKが行くべきだよなぁ?!運良ければ負けるとこ見れるぞ!」
「変な事をダシに逃げないでくださいよ!」
「でも俺戦績微妙だしな!」
ゲラゲラ笑いアキトは翔の背中を叩いて氷雨のキーホルダーを手渡す。
「不安なら使え、氷雨もちゃんとルールは理解してるから勝手に動く事はない」
「…本気ですか?」
チラッと画面の向こうを見て既に待機しているマントを見て憂いた表情を見せる。
「ああ、俺は…アイツに顔を見せる資格はネェ」
一体誰が待っているのかと翔は不安になりながら控室を出ることとなるのであった。




