コード“華”6
昼前、医務室に運ばれた黒鴉は目を覚まして体を起こす。
「姉さん!大丈夫ですか?」
黒姫が喜びの声を出して黒鴉の顔を覗き込む。
「すっごい頭痛い…むむむ」
頭を押さえながら文句を呟く黒鴉を見て運んだ翔も安堵して席を立つ。
「意識戻ったならもう大丈夫そうだな」
「ん…浜松、私何か言ってた?」
翔は「なにも」と伝えて医務室を出る。
その様子を見て黒鴉は小言を呟く。
「…キザったらしい」
「もう、倒れた姉さんを運んでくれたんですよ?」
黒鴉は自分の体を確認して嫌な顔をする。
「私…触られた!?」
冗談めいた言葉だったがそれを聞いた黒姫が笑顔で威圧する。
「わ、悪かったわね…ジョークよ」
「はぁ…倒れるなんて何かあったのですか?」
事情を知らない黒姫は首を傾げ尋ねるが黒鴉は首を横に振る。
「覚えてないのよね…皆の朝御飯買いにラウンジまで行ってそこで…ううん…」
黒鴉も思い出せず結局「わかんない」とポーズをする。
グーと恥ずかしい音を立てて黒鴉のお腹がなり苦笑いしながら擦る。
「結局ご飯食べ損ねたわね…もうすぐお昼?」
「忙しくて意識してませんでしたが…そういえば食欲無いです」
「あー、忙しいなら仕方ないわね、お腹は鳴るけど」
二人はお腹が鳴っても食欲が湧かない事を笑い黒鴉が叫ぶ。
「なんでよ!?」
「うーん…多分…」
黒姫は思い当たる神華の事を伝えるか悩んで取り敢えず神威に会わせようと立ち上がる。
「神威さんなら知ってるかな?」
「はぁー、病み上がりに歩かせるのね」
黒鴉もベッドから立ち上がりついていく。
研究室では脱力していた博士達が何とかやる気を戻して各地と連絡を取り合って慌ただしさが戻っていた。
「落ちてる武器触らないで壊しちゃってねー」
ツムギがふにゃっとした笑顔で指示を出してメモを取って神威に渡す。
神威は地図を埋めるように付箋をペタペタと貼っていく。
翔が研究室に入るとツムギから携帯とメモを手渡される。
「ちょっと休憩ー、Kあとお願ーい」
「あ…待っ…あー、行っちゃったよ」
翔が呼び止めるよりも前に背筋を伸ばしてツムギは珈琲ブレイクに行く。
翔は神威の示した日本地図を確認して本当に神華の力が非常に広範囲に発揮されたと実感する。
(そういえばそろそろお昼か…皆朝御飯抜いてるのに元気だな)
時計を確認してからツムギの仕事を引き継いで作業に当たると黒姫達が神威を探しにやってくる。
「神威、いるかしら?」
黒鴉が声を張って現れ神威がキョトンとした顔をする。
「おや?黒鴉嬢もう大丈夫なのか?」
「…白々しいわね、何が有ったか洗いざらい話してもらうわよ!」
「まるで我が悪者みたいな言い方だな」
黒姫が大声を出す黒鴉を注意するが黒鴉は悪びれずズカズカと神威に寄っていく。
「ふむ、仕方あるまい話をしよう、着いてきたまえ…あー、そこの君代わりに頼むよ」
適当に近くの研究員を指名して自分達は地下の秘密の研究室に向かう。
黒姫は翔に近寄り「私達も」と手を引く。
「え…あー作業が…」
神姫が翔の分のメモを取りニコッと笑う。
「あとはワタシがやります」
「すまん、頼むよ」
「いえいえ、ごゆっくり」
皮肉の籠った言い方に翔は苦笑いで返して黒姫の先導で神威達の場所に向かうのだった。




