コード“楽”8
技研内のとある研究室、黒鴉の意見を聞き竜司が難しい顔をする。
「武器の普及が敵の目的か…」
「今すぐ排除すべきよ」
自身の新しい剣を折った事を伝えるが竜司はその難しさを説く。
「黒鴉、誰しもが君のように賢明ではない、怪しくても便利なら使ってしまうのが人間の性だ、そしてその怪しさを我々はまだ指摘できない」
「私の判断は早計だったって事…?」
「実証のデータや被害…それが無ければ人は動かないということだ」
竜司は悲しい顔をする黒鴉を抱き締めて励ます。
「黒鴉、後悔してはいけない。わたしは必ず敵の悪意を暴く!前を向くんだ」
黒鴉は小さく頷き話を続ける為にメッセージを見せる。
「待て黒鴉、この画像…」
竜司が見つけた画像には関東以外の名所と共に写っているのがあった。
「お父様どうしたのですか?」
「敵は魔物を使役出来るようになってから我々のいる関東…東京周辺を中心に攻撃していたのだ」
竜司はパソコンを操作して一つの資料を見せる。
「一応報告の上がった地点を地図にしている、そしてデータでは関東の都市部を狙っているのが分かるか?」
関東の地図その中で赤い点が駅や日中に人の集まる広場に集中していた。
「じゃあ急に無差別になったのは…やはり?」
自分の考えが正しい可能性に黒鴉は手柄を得たように明るい表情になる。
「多分そうだ、武器の普及…これは覚醒者の集い以上に情報を集めないとダメになりそうだ…日本…いや、もしかしたら…」
竜司が真面目な顔をして携帯を操作し呼ばれた翔や黒姫、博士達重要な人物がやってくる。
「暫くここ…日本を任せる、わたしは他国での動きを確認する」
海外まで波及するという竜司の言葉に緊張が走る。
「我々の供は必要か?」
神威が尋ねるも竜司は首を横に振る。
「不要だ、最小限の装備と護衛で行く」
ツムギが手を挙げて質問する。
「誰が研究所引き継ぐのー?」
「…そうだな、神威と黒鴉に任せよう…それでも何かあればわたしに連絡してくれれば決断をわたしがしよう」
ツムギは不思議そうに神威と黒鴉を交互に見る。
神威も指名されて驚く。
「我と娘に?」
「不服か?多数決でもいいんだが…」
黒鴉が一歩前に出て手を挙げて声を張る。
「お父様の後継者は私!責任感はあるわ!」
黒鴉の凛々しい様子に質問していたツムギも「ま、いっか」的な態度で頷く。
「神威、補佐してやってくれ」
「畏まった、黒鴉嬢はまだまだ危ういからな」
他の皆も神威の反応に同意する。神威の台詞に見返してやると黒鴉は鼻を鳴らして格好をつける。
「ふん!賢人の私を崇めさせてあげるわ!」
竜司は最後に妻の優香を見て「心配するな」とアイコンタクトをしていそいそと研究室を出ていく。
ツムギが早速黒鴉に尋ねる。
「ホントに行っちゃったよ…どーする?」
「いつも通りよ、お父様が海外で調査するなら私達は私達に出来る範囲で情報収集して上位世界とやらをぶっ飛ばしてやるわ!」
「わーお、過激派…竜は融和路線だったよ?」
黒鴉は怒りを露にして宣言する。
「攻撃され続けてなめられて、それでも『仲良くしましょ』何て私は言えないわ!一発拳を打ち込んでやらないとね!」
シャドウボクシングのように拳を振った後に拳を掲げる。
「概ね同意だな、迷惑かけた事を謝って貰わないとな」
翔の言葉に神藤姉妹は合わせて頷く。
「ではボスを引きずり出すか出向かないとだな」
ヨロズは難しい問題を提示し挑発する。
「その為にも調査続けてちょうだい、私も浜松も妹も仕事あるから」
黒鴉はにっこにこな笑顔で受け流して翔達を見る。
「華麗に避けられたねー」
へらへらするツムギをヨロズはひっぱたき自身の研究室に戻っていく。
「じゃ、K達も頑張ってねー」
欠伸をしながらツムギも去り神威はため息をつき小言を呟きながら出ていく。
「竜め…色々と引き継ぎしてから行って欲しいものだ…仕方ない後で聞くか」
時計を見た優香が翔達を急かす。
「あら大変!もうこんな時間よ!お仕事行かないと」
遅刻確定な時間に翔と二人の姫は飛び上がりながら仕事に向かう。
最後に残った黒鴉は拳を握り締めてこの先に待ち受ける何かに対して徹底抗戦を誓うのだった。




