コード“姫”2
会議室に残った翔と黒姫に竜司が睨みながら生活について聞いてくる。
「二人の生活は知っている、面倒をかけないように翔君の実家やわたしの屋敷から離れているようだが…」
翔も黒姫も何を言われるかと身構えていると竜司は表情を崩して二人を心配する。
「貧乏生活なんかしないでこれを機にわたしの屋敷に来ないか?心配なんだよぉ」
黒姫が不甲斐ない顔をする父を見て丁重にお断りする。
「私達は大丈夫です!強いですから」
黒姫が二の腕をぽんぽん叩くも竜司は納得していない様子で愚痴を溢す。
「母さんも心配してるんだぞー」
「もう、母さんも父さんも…多分姉さんも!すぐに会える距離でしょう?」
家族間の問題に翔は苦笑いするが神鳴が襲われた状況を思い出し実家を思い返す。
「うちの実家は大丈夫だろうか…ちゃんと確認してなかった」
頭の中が敵の事と神鳴の事で一杯だったので実家について失念していたと後悔する。
竜司はそんな翔を見て余裕のある様子で答える。
「安心したまえ、翔君の実家は無事だ。確認済みだよ」
その言葉に翔はホッとして迷惑をかけた事を謝る。
そこで会話が止まってしまい沈黙が流れると会議室にノックの音が転がり込む。
入ってきたのは残り最後の神である『神田紗也華』という偽名でこの世界で働いている神華だった。
伊達眼鏡をくいっとさせて他の神達と今の主の黒鴉が居ないことを確認して肩の力を抜いて深いため息をつく。
「皆勝手過ぎですね…もう居なくなってしまうなんて」
竜司が神華の持つ書類を目にして期待のこもった声で尋ねる。
「何か分かったか!?」
神華は翔達に一枚紙を手渡して竜司の横に進み竜司にも紙を渡す。
「コード“キ”、浜松が黒鴉様に伝えた情報の一つですね」
黒姫が恐る恐る確認する。
「神姫の事では?」
神華は頷き説明を始める。
「ほぼ確実に失われた神の一人、神姫の力を利用したと思うわ」
紙には神姫の能力について記述されていた。
「事前に黒姫様の話を聞いて私が纏めたものです、神姫の情報は殆ど無くて事情知ってるの黒姫様だけですし」
黒姫は内容に目を通して頷く。
「世界は箱庭レベルのものを生成できて戦闘能力は爆発を起こす光の球、それと精神力?魔力?の回復ですね」
竜司が箱について合点がいく様子で答える。
「人の身で世界を造り出す為の道具か、量産されているなら厄介だな」
「…っく、アタシには出来ないのに腹立つ」
自身では世界を創造出来なかった神華が小言を呟く。
「コードか…呪文かな?」
黒姫が翔を見て疑問をぶつけてくる。
「かもな…じゃあ他の神の力も?」
神華が翔の言葉を想定内という感じで答える。
「此方の世界を捉えたってことは神の情報を得たという事でしょうね、他の神を模倣する可能性は高いわ」
神華の言葉に竜司が驚き頭を抱える。
「そうなのか!まずいなー」
わざとらしい言葉に神華が呆れる。
「余裕そうですね社長」
「わたしの力は彼らには扱えないだろうからな!ははは」
「無敵になる神螺や神鳴が使えるなら厄介でしょうに…」
違う形だが不死を体現されたら困ると全員が青ざめる。
「まぁ警戒と対処法を調べるとしましょう」
神華は頭を下げて会議室を出ていく。
「翔君、私達も小言を言われる前に帰りましょう」
翔は黒姫に手を引かれてそそくさと会議室を抜け出す。
「いや、俺仕事…」
会議室を出た後に仕事があると黒姫に伝えると残念そうにする。
「分かりました、私先に帰りますね?今日は早く帰ってきてくださいね?」
翔は苦笑いにして約束をして仕事をしにビル内のオフィスに向かうのだった。