コード“威”15
上位世界のとある研究室、準備した機械兵を出し尽くしこの数十分で大きな損害を出した事に担当した博士が詰問される。
「貴様、機械兵の貴重な物資を全て使っただと?」
「ほ…それが増援要請を自動受理して全て発進した模様でして…」
やつれた顔の機神開発者は乱暴に胸ぐらを掴まれ必死に弁解する。
「し、しかしです!あれだけ送り込んだなら成果も…」
「ほう?で、送った機神から連絡はあったのか?」
「いえ…その…ほひ、まだです」
上級研究員に突き飛ばされ博士はよろよろと尻餅をつく。
「責任は取ってもらう、覚悟してもらおう」
「ひぃ、お、お許しを!」
指を鳴らし待機していた武装した男達に博士は拘束され連れられていく。
「ふん、せいぜい役に立てよ?」
―――
休憩していた翔達は機械の掃除をどうするのか下らない話をしていた。
「全部まとめてデカいガラクタでも作ろうかね?」
アキトの言葉を皮切りに理想の巨大ロボットの話に沸き立つ男性陣に黒鴉が呆れる。
「なーにがロボットよ、全部溶かして資源にした方がマシだわ」
『聞き捨てなら無いな黒鴉嬢、我にかかればだな…』
「あんたも話に乗らなくていいのよ!」
神威がロボットと聞いてウキウキで語りかけてくるのを黒鴉がピシャリと遮る。
「というかあんたの能力使って全部纏めちゃってよ邪魔くさい」
『う、うーむ、持ち帰って精査したかったが…そうだなしばし待たれよ』
がさごそとスピーカーの向こうで音がして神威が持ち場を離れる。
慌ただしく残骸を溶かすように纏めながら神威が現れる。
「むむ、映像で見てたが思っていたよりも多いな…」
翔達は神威の邪魔にならないように壁の方に移動して処理の風景を見守る。
「溶かして固めて…便利なもんだな」
アキトが神威の手腕に感心していると八坂が風情がないとぼやく。
「でもただのインゴットにするなんてなぁ…」
「いいのよ今は片付けられれば」
黒鴉が口を尖らせる。
やり取りの横で翔はスイッチをくるくる回して呟く。
「もうこれも必要無くなるのか」
「油断しちゃダメですよ?」
手遊びしていた翔を横から黒姫が顔を覗かせて注意する。
そんな会話をしていると神威が手際よく一仕事終えてごちゃ混ぜのスクラップを搬出しすっきりさせる。
「では諸君引き続き計画を…」
神威が部屋から出ようとした時だった、部屋の中央の空間が歪み全身機械化した人型物体が現れる。
「うわ!…すまない諸君、後は任せる!」
神威は封じられては戦う術がなく足手まといにならないように逃げ出し翔達も急ぎ戦闘態勢に移る。
「ホ、貴様達のせいデ…!」
黒姫が聞き覚えのある声にムッとする。
「機神の操縦者…!そう、捨てられたのね」
「ヒヒ!皆道連レだ!」
黒鴉が意気揚々とバハムートを呼び出して水流をぶち当てる。
「ちょっと!?硬いんですけど?!」
予想外の敵の硬さに驚きの声をあげ八坂が困り顔をする。
「あー、さては俺の出番無いな?」
周囲が濡れた事を確認してアキトと翔が飛び出す。
「氷雨!凍らせてやれ!」
雪女の一息で敵の攻撃より先に凍り付けにする。
「小癪ナ!動け!!」
ギシギシと凍りの割れる音と機械の関節の軋む音が響く。
「じゃあ溶かしてやるよ!焰鬼!」
赤鬼の炎の拳が機械のボディを打ち一部がひしゃげ床に倒される。
翔は無言で雷怨に切り替えてトドメと言わんばかりに全力の電撃を浴びせる。
機械音か悲鳴か判断出来ない金切り声を上げて文字通り壊れた機械のように手足をバタつかせる。
「呆気ないな…いやこっちが大人げないだけか」
アキトが残心して敵に刃を向ける。
「私が破壊します」
黒姫の声がして特大の光球が翔とアキトの間を抜ける。
驚き二人は飛び退き大爆発の爆風で更に飛ばされる。
「こいつには神姫の技を馬鹿にされた怨みあるので…」
「おっかねぇな…危うく巻き込まれる所だった」
アキトが冷や汗を流して黒姫を見る。
敵の撃破をモニタ越しで確認したツムギの声が聞こえてくる。
『お疲れー、機械はバラバラだねぇ…クロヒメ、やることなかなかにエグいよ?』
殆ど何もさせずに完封した翔達を影から見守っていた神威も称えてくる。
「今は敵じゃなくて良かったと改めて思うね…」
機械の進攻はこれで終わりと胸を撫で下ろす面々、しかしボランティア達は未だに何人残り悪事を働いているかは不明であり予断を許さない状況に変わりはないのだった。




