コード“威”14
翌日、神威の話通り研究所地下に用意された神姫の結界に似た広い空間で翔達は準備運動をしていた。そこに共に戦う八坂とアキトがやってくる。
「よ、張り切ってるな」
アキトが爽やかに挨拶し翔は頷き朝の挨拶を返す。
「あ、おはようございます、まだ時間あるのに二人とも早いなぁ」
既に素振りなどでイメトレもしているお前が言うかとアキトは苦笑いする。欠伸する八坂が口に手を当てて答える。
「正直言って眠れなかった…」
トレーニングしてる翔を見て八坂は腕のストレッチし始める。
首を左右に曲げて眠気に抗うアキトが余裕そうな翔に質問する。
「んで、その機械って強いのか?」
「いや、銃器積んでないからそこまで脅威じゃないと思う」
直接見た記憶を頼りに翔が答える。
「なるほど、それなら木刀でいいな」
緊張して損したとアキトが木刀を取り出して素振りする。
「おいおい鉄を木刀で壊せるかよ?どんだけ頑丈だよそれ」
八坂が笑うが「拳のお前が言うな」と二人からツッコミされて三人で余裕な雰囲気に笑う。
「緩ーい!気を引き締めなさい!」
黒鴉がやってきて男三人の様子に呆れる。
「怪我したら迷惑するのウチなんだからね!?」
特に表だった作戦ではなかったが待機している医療班泣かせないでよねと黒鴉が文句を言う裏で黒姫が駆けてくる。
「皆さん準備できました」
黒姫が箱を取り出して全員の顔を見て監視カメラに合図する。
放送が入り神威とツムギの声がする。
『諸君おはよう』
『おはよー』
間延びしたツムギの挨拶にガクッと全員の姿勢が崩れる。
『我に合わせるな、気が抜ける…黒姫君、敵を呼び出してみてくれ、出来ないようならツムギを向かわせる』
『ええ!?ぼ、僕ぅ?』
ツムギを無視して全員武器を構えて黒姫が神姫の力を解放しながら試しに叫んでみる。
「コード“威”!発動!」
一瞬の沈黙で黒姫の顔が恥ずかしくて赤くなる。失敗かと思われたが何機かの機械兵が空間を裂いて落ちてくる。
「あ!で、出ました!やりました!」
黒姫が良かったと喜んで飛び跳ねるがすぐに軽い耳鳴りがして魔法由来の力を使えなくなり全員が気を引き締める。
翔がスイッチを入れて刀を手に取り八坂がグローブをしっかり装着する。
「スイッチをオンに!さっさと破壊してやろう」
翔に続いてアキトも黒鴉もスイッチを入れて武器を取り出す。
黒姫も深呼吸して今一度神姫の力を引き出す。
「ドンドン呼び出します!壊しちゃってください!」
翔達は武器を振るって機械兵を破壊していく。
「やってやるわよ!バハムート!」
最初から全力で戦おうとする黒鴉をアキトが咎める。
「相手の余力が分からない!全力出すなって」
「むむむ…わかってるわよ」
文字通り暴力的に破壊していく八坂とアキトと違い黒鴉はバハムートで水をかけて合わせて翔は雷怨の電撃を最低限で放ち破壊していく。
黒姫も四人の手で届かない機械を光球の爆破で破壊する。
戦闘開始して数十分、機械の増援が停止する。
『黒姫君、もう増援は止まったか…?』
スピーカーから神威の声が聞こえてきて黒姫は頷く。
『ツムギ、何機ほど破壊したか確認できたか?』
『ああ、百五十六機、残骸だらけだね…掃除が大変だ』
『我が引き取る。大事な資源だ』
八坂が手をヒラヒラと振って熱を冷まさせる。
「はー、マジ?俺全然倒せなかったわ」
「翔と黒鴉の精霊の攻撃が的確で獲物は大体持っていかれたからな…」
アキトも苦笑いして二人の奮闘を称える。
「はぁ?まだ私やれるんだけど?浜松、あんたは?」
黒鴉に挑発されて翔も張り合ってくるなぁと思いながら元気だとアピールする。
「はは、なんならデカいの来ても勝てるね」
黒姫が戦果で張り合う面々を諌める。
「向こうが準備してるだけかもしれません、今は休憩して様子見しましょう」
『そうだねぇ、休める内に休みなー』
残骸で足元が散らかっていて休みづらいと文句を垂れながら五人は場所を確保して休むことにするのだった。




